岩月九州運輸局長 定例会見 一部リモート
ワクチン接種の広がり国内観光需要1年後にかなり戻る
GoTo 旅行会社はバス会社にキャンセル補填の分配を

2021年2月21日付・第511/216号

【九州】九州運輸局の岩月理浩局長は2月18日、福岡市博多区の福岡合同庁舎新館で、定例局長会見を開いた。一部希望報道機関にはリモートで行われた。岩月局長は日本経済新聞社からの観光需要の回復の見通しに関する質問に「ワクチン接種が進み、1年後に落ち着いていれば、かなりのレベルまで戻っているだろうと思うが、インバウンドは日本の感染状況だけでなく、外国の状況も関わってくる。また、変異株の問題もあり、1年後にどうなっているかは難しい」との見方を示した。

エッセンシャル優先接種困難

本紙の「医療従事者へのワクチン接種が始まったが、同様にエッセンシャルワーカーであるバス・タクシー・トラック・鉄道等の公共交通運転者とその従事者に対し、優先接種の声が高まり、大臣要望が行われた」とする質問に、岩月局長は「エッセンシャルワーカーにワクチンの優先接種を、という話があることは九州でも承知している。一般論としてエッセンシャルワーカーという分野はひじょうに広く、バス、タクシー、トラック運転者はまさにエッセンシャルワーカーでご苦労されていると思うが、それ以外にも、本当に多くのエッセンシャルワーカーがいる。そうした中、どこを優先するのかというと、線引きが技術的に難しいと聞いている。仮にワクチン接種となったときでも、人の職業によって順番を変えることがかなり難しく、他のワクチン接種が遅くなる可能性があるかに聞いている。たいへん気持ちは分かるが、医療は別として、その他のエッセンシャルワーカーを優先するというのは、現実にはなかなか難しいと聞いている」と答えた。

キャンセル相当分の分配を

また、「GoToトラベルキャンペーンの休止などで旅行客の予約がキャンセルになった場合には、ホテルや旅館、旅行客にはキャンセル補填があるが、旅行代理店を通して予約された観光バスにはないのが現状。今後、インバウンドが復活してクルーズ船などが来る状態に戻ったときには、バスがないという状況になりかねない。これについてどう対応するのか」という質問に、岩月局長は「旅行会社には、GoToトラベルキャンペーンが休止になった場合には、50%などの補填が入るが、そこから先に貸切バス会社等に入ってこないという質問だと思う。基本的にはその50%、35%なりを全部旅行会社がいただいてしまうのではなく、いろいろな契約があると思うので、一律に言うのは難しいと思うが、それぞれの契約に従ってキャンセル補填があったときには貸切バス事業者にも分けていただくのが望ましい。そのように国交省では組み立てているはずだし、そうした説明をしていると聞いている。

具体的に『当社は補填金をいただいていない』ということがあるから、そうした声が上がっているのだと思うが、例えば、旅行会社を通じてホテルを予約すれば、旅行会社が補填金をいただくが、ホテルには一切補填はないというのは望ましくない。これは貸切バスでも同じだ。50%、35%なりのキャンセル相当分を分けていただきたいというのが国の見解だ」と答えた。

管内7県交通担当者に面談

第三次補正でバス・タクシーに割り当てられている305億円の内訳と自治体への協調補助要請の運輸局としての動きに関する本紙の質問に、岩月局長は「空気清浄機など感染対策が305億円の補助金の一部に入っている。ただ、305億円の全体像を言うと、いろいろあり、赤字路線バスの補助金も、今年度の当初予算ではまったく足りないので、その補填をしっかりしなければならない。既存の路線を補助するための金額も入っているし、第二次補正でもあったが、三密を避けるなどで、利用者が減っているにもかかわらず、通常のダイヤで運行するなどの実証運行に関する経費も引き続き入っている。さらには、デジタル技術を用いたものやMaaSを含め、全部で305億円になっている。空気清浄機と高性能フィルターも大きな柱の一つだが、その他にもいろいろな事業が一緒になっている。これらの補助金は2分の1、3分の1が出るが、残りは事業者の負担となるが、これは重い。自治体にはできれば足並みを揃えて、できれば補助してほしいと要請している。

九州の場合には、管内運輸支局長が県の運輸関係や観光関係のしかるべき部署の責任者に会い、取組を説明したり、強調補助を九州7県でお願いしている。私自身も、緊急事態宣言下で直接出向くわけにはいかないが、Webなどを使い、各知事にお願いしている」と述べた。

廃業・休止 計30事業者

岩月局長はこの他、一般報道機関の質問に答えた。NHKが質問したコロナ禍1年間の交通・観光事業等者の廃業・休業状況について「九州管内7県では、乗合バス、トラック事業者の休止・廃業等は聞いていない。貸切バス休止8事業者、廃止11事業者、法人タクシー5事業者、廃止6事業者の計30事業者、個人タクシーでは41件の休廃業があった。また、ホテル・旅館14社(施設)が廃業・休業した。コロナ禍を受け利用者が減ったことによる判断なら、たいへん残念なことだ」と述べた。福岡県内の2月15日時点のまとめでは、貸切バスの休業2事業者、廃業6事業者、法人タクシーの休業3事業者、廃業5事業者で、合わせて16事業者にのぼる。

また、Gotoトラベルキャンペーン停止の影響と再開のあり方について「年末から全国でGotoトラベルキャンペーンが停止されている。その影響で、宿泊施設の稼働率が1、2年前に比べ、半分程度に落ち込んでいる。交通事業者の関係でも、昨年の10、11月には利用者が戻っていたが、12月、1月になって相当利用者が減っている。これはおそらく、Gotoトラベルキャンペーンの停止あるいは緊急事態宣言の発令による影響だと思っている。いずれの数字を見ても、観光、交通関係事業者の皆さんは、ひじょうに厳しい状況だと思う。そうした中、第三波が来ているが、いずれ収束していくのは間違いないが、その時期がどのくらいなのかは、専門家でもなかなか分からない部分がある。例えば、ワクチンは昨日から打たれるようになった。そのため、国もいろいろな支援策を用意している。

例えば、Gotoトラベルキャンペーンには2兆円を用意しているが、まだ一部しか使われていない。交通機関に対しても、第三次補正で305億円の補助制度を盛り込んでいる。交通機関の運行を支援するための制度もあるので、利用していただきたい。自治体の首長にも、交通事業者にいろいろな支援策を講じていただいている。政府が第三次交付金を決めたが、各自治体に配られているので、こうしたものを活用して、引き続き交通観光事業者を支援していただくことを期待している。

今、たいへん厳しい状況なのは分かるが、金融機関の融資についても活用していただき、何とか乗り越えていただきたいということに尽きる。Gotoトラベルキャンペーンの再開時期については全国レベルで考えるべきで、東京の専門家の意見を伺いながら、どういう時期にどのようなやり方で再開したらいいのか。地域を限定したらいいのか、曜日を限定したらいいのかなど、いろいろなことを想定していると聞いているが、具体的なことは言えないようだ。今までの知見を生かし、適切な時期に再開できればと思っている」と述べた。

新しい生活様式に適合を

新型コロナ感染症患者が九州で初めて出てから1年が経過したが、この影響に対してなすべきことについて「個人的な意見になるが、感染症がここまで社会に大きな影響を与えるということは、多くの人が想像していなかったのではないかと思う。私自身もここまで社会に大きな影響を与えるとは思っていなかった。交通、観光、飲食店に大きな影響を及ぼすものだと、しみじみ感じた。

感染拡大から1年が経過して、事業者の皆さんも何とかしのぎ、国民の皆さんも、新しい生活様式に努力している。いろいろな非接触型システムや混雑状況を知らせる先端技術を使った機器やソフトが開発されている。良い面も表われているので、コロナ禍で始まったものをいかに伸ばすか、新しい生活様式にどう適合させていけるかがポイントだと思う。そうしたことに適合した事業者が生き残っていくと思う。お金だけでなく、知恵を絞ることを含め、次の投資をきっちりと行っていく必要があると思う」と述べた。

写真:記者団の質問に答える岩月理浩・九州運輸局長