XTaxiの近藤洋祐代表理事、本紙のインタビューに答える
「対立の構図でなく、業界のため汗を流す姿勢を見てほしい」
沖縄で初の定時総会 8月には徳島で大型イベント「サマーカンファレンス」

2021年2月21日付・第511/216号


【沖縄】一般社団法人XTaxi(クロス・タクシー)の近藤洋祐・代表理事は2月15日、Zoomによる初の定時総会とイベント終了後、那覇市内で本紙のインタビューに答えた。

本紙 本日、イベントと定時総会があったが、その内容をお伺いしたい

連携協定締結向け意見交換

近藤 沖縄に来た目的は2つあり、一つは連携協定に向けた意見交換会を行うということと、もともとXTaxiの定時総会を開くにあたり、イベントも開く予定だった。今回はコロナ禍の影響で県の緊急事態宣言下にあり、どちらもオンラインで行うことになった。定時総会では、収支報告と次年度予算の承認の他、年間スケジュールが了承された。イベントでは、年に1度の大型のイベントとして8月に「サマーカンファレンス」を行う予定だ。一方通行のイベントではなく、業界に質するイベントを行いたいという思いから開催したいと思っている。集客と管理という観点から、もっといろいろな業界外の人の意見も集めていきたい。それらを企画する場を持とうということで、ビジネスプランニングのコンテストを行おうと思っている。優勝賞金額の予算として100万円をとっている。この額に設定しようという理由は、若手起業家で相当ガチな人が集まってくると思ったからだ。私もかつて電脳交通の創業期にビジネスプランニングコンテストに応募していたが、優勝賞金100万円というと、必ず応募していた。この賞金は、優勝者に満額を差し上げるが、条件にタクシー業界とどこかの地域で、実証実験を一緒にやってほしい、というものを付けた。優勝者とは、ある程度スケジュール等を聞き、コミットしたことをやりとげたら指定口座に全額を振り込む。タクシー業界を大事にして下さい、というのが大前提の趣旨となっている。相乗アプリのnearMe(ニア・ミー)など、そうした分野からもどんどん連れてきたいと思っている。本日のイベントでは、株式会社eMoBi COOの後藤詩門氏(慶応大学3年生)に出てもらったが、すごく良かった。現在、広島県福山市でアサヒタクシーさんが行っているグリーン・スロー・モビリティーのもう少し小型版で、中国のベンチャー・メーカーが製造しているEVの輸入販売を行っている人だった。4時間充電で航続距離88キロ、時速は50キロまで出せる。後ろ2人、前2人が乗車でき、ナンバープレートを付ければ走行できる仕様になっている。ゴルフカートを転用した現行のグリスロ車両よりは小さいので、かなり小さな路地にも入っていける。価格は50万円まで。ナンバープレートを付ければ路上走行できる。ただ、実用化までには、アサヒタクシーの山田康文社長と同じで、かなり戦わなければならないと思っている。これをタクシー会社が持っていたら、おもしろいと思い、本日、ご登壇いただいた。ビジネスプランニングコンテストに出場していただければと思っている。

本紙 その人の学生以外の職業は?

近藤 輸入業の他、実際に行政に「MaaS実証実験を一緒にやりましょう」と企画書を持ち込んでいる。どちらかというと、これまでは彼のような存在は、業界内に今までなかった。彼のような存在は、業界のシェアを取られるのではないかという懸念や、アサヒタクシーの山田社長のような方が出てきたり、ということで、やはり、もう少し彼らとやわらかく向かい合うべきではないか、と思うようになった。また、彼には、慶応大学で交通政策を学んでいて、タクシー業界の発展を考えた上で、自分の商売と向き合うという姿勢がある。「一緒にやっていきましょう」という感覚を備えている人だ。すでに自分で在庫を抱えながら、電動トゥクトゥクを販売した実績がある。彼は、タクシー業界のイベント等にも顔を出している。

本紙 沖縄県ハイヤー・タクシー協会とXTaxiは本日の意見交換を経て、地域連携協定を4月1日に締結するということだが、同じ業界団体同士が連携協定をむすぶというのは珍しい。どのような経緯でやろうと思ったのか

「敵」もうまく取り込めば

近藤 本当にシンプルなことで、いろいろな新しい風を吹かせたいという思いがあったからだ。ウーバージャパンにいた人が今、ライトマークスという会社を立ち上げている。これはコンサル会社だが、ラインでハイヤーを呼べるVIPハイヤーサービスをやっている。ここでは、「ラインで契約しているハイヤーが呼べて、料金はタクシーよりも安い」というセールストークをやっている。おそらく、ウーバーのハイヤー配車サービス「UberBlack」と同じ内容を富裕層向けにラインでやっているのではないかと思っている。ディスパッチャー(運行管理)をやっていて、それをプラットフォームと言っているのではないか。そうなら、タクシー会社のハイヤー部門が持っていた市場がそちらに移っていく可能性にあるのではないか。そうなると、例えば、そこでの顧客情報が、どこか他業種、他産業に売られて情報が移ってしまう危険性がある。彼らはおそらく、タクシー業界でよく行われている正規の契約に基づいて配車しているはずなのだが、元ウーバーというタグが付くだけで、タクシー業界は彼らを遠ざけてしまう。彼らは、地方の課題解決をアナウンスしているので、もっと距離を縮められたら、お互いにとっていいのではないかという思いがある。つまり、お互いのコミュニケーション量が不足しすぎている。業界に質する取組が見方を変えればあると思うので、できないことを積み上げるのではなく、例えば、全部を敵に回してしまうことになると、業界にとっては集客のチャンスになることがあったとしても、その機会をなくしてしまうかもしれない。なので、できることはどんどん取り込んでいかなければならないと思っている。タクシー業界に質する取組という前提を崩さずに取り組んでいく実行力の高い集団が、絶対に必要だと思っている。だが、これを言うと、「あなたは全タク連派?」「あなたはXTaxi派?」という対立構図で見られてしまうので、余計な摩擦係数を下げ、どちらも業界のためにやっている、業界団体のためにやっているというタグ(手札)を付ける必要があった。まず、それをやるということ。それから、会員拡大のためということもある。一部の人は、どちらかにしか入れないということを言っているので、「そのようなことはない」ということを、公式にアナウンスしたいと思っていたからだ。

本紙 まだ部分的に手を組めるのに、敵だということで情報を遮断してしまい、正確な情報も「出島」が必要だと

近藤 うまく取り込んでいくべきだと思う。鶏が先か卵が先かの論議のように、今この瞬間がどう見えるかはさておき、長期的に取り込んでいくやり方を設計しないと、タクシー業界の手札をもっと増やして生き残りをかけていかなければならない。XTaxiは完全にそちらの考えになっている。

本紙 お忙しい中、ありがとうございました

写真:上=沖タ協で協会幹部と意見交換するXTaxi(クロス・タクシー)の近藤洋祐・代表理事
  下=沖タ協幹部との意見交換後、記念撮影。左から沖縄県ハイヤータクシー協会の酒本慎也・教育指導委員長、金城宏孝・総務企画委員長、金城哲・経営労務委員長、稲益強副会長、東江一成会長、XTaxiの近藤洋祐・代表理事、塚本泰央、東江優成、漢晋一郎の各理事、吉川永一監事