見えてきた大阪メトロの落しどころ
タクシー借り上げ方式等で協業 3月スタートを死守

2021年2月1日付・第509/214号


【大阪】緊急事態宣言延長の影響で再延期がなければ、2月12日に行われる予定の令和2年度第2回大阪市地域公共交通会議を睨み、3月からAIオンデマンド交通社会実験を行いたい大阪メトロの動きが活発化している。

大阪メトロは2月1日に行われた大阪タクシー協会との協議で、初めてタクシーとの協業を提案してきた。しかし、協会側はただちにこれを受け入れず、「この規模の社会実験ならジャパンタクシーで十分足りる」として、8人乗に改造した14人乗ハイエースコミューターの運転者を派遣してほしいとするメトロ側の提案を蹴った。

協会側の要望を一旦、持ち帰った格好になった大阪メトロはその一週間後、「地域公共交通会議直前の切り札」と思われるカードを切ってきた。

それは、地域住民からも批判のあったバリアフリーへの対応を先送りすることはく、タクシーと協業することで、スタート当初から実施するという形だ。メトロはハイエースを改造するが、完成は9月頃になるとして、3月スタートからしばらくの間、ジャパンタクシーでバリアフリー対応をしてほしいと言い出した。

さらに7月からは、ジャパンタクシーを一定車両を借り上げたいとしている。 それには、大阪メトロと借り上げ契約をしたタクシーには、メトロが指定をするラッピングを車体に施すことが条件としており、運転者は5月に一定期間、運賃箱の取扱いやアプリ配車への対応、タブレットの扱い等の研修を受けなければならない。

運賃は、バリアフリー対応に協力する事業者も、ジャパンタクシーの借り上げに応じる事業者も、大阪メトロが直営するハイエース同様、大人210円。タクシーによるバリアフリー対応の場合は、実際にかかった運賃との差額をメトロが支払うという形をとるとしている。また、借り上げ方式の場合は、運賃はハイエースの場合やバリアフリー対応と変わらず、大人210円を収受することになるが、大阪メトロと当該タクシー事業者との間で交わされる契約に基く運行することになる。

一方、当初案にあったハイエースへの運転者派遣要請は、まだ消えたわけではなく、タクシーの借り上げと同様、今後の検討材料になる。

写真:上=大阪市地域公共交通会議会長を務める内田敬・大阪市立大学工学研究科教授
下=マイクを持ち、主催者あいさつをする高橋徹・大阪市副市長(左)、井上徹・大阪市都市交通局長