近運局の末満章悟・自交部長、若林隆司 監査部長
年初の定例記者会見 緊急事態宣言下 リモート開催
委員出席の大阪市地交会議 社会実験への態度表明せず

2021年1月22日付・ 第508/213号


【近畿】近運局の末満章悟・自動車交通部長は1月21日、年初の定例記者会見をリモートで開いた。

末満部長は冒頭、「緊急事態宣言の中、近運局管内もテレワークや在宅勤務も調いつつあり、実験的に定例記者会見をウエブでやってみようということになった。コロナ対策で第3次補正予算や次年度当初予算が国会で決められる見込みだが、それらをしっかりと活用できるよう、情報提供に務めたい。地方創生臨時交付金を活用した支援策についても、業界団体と一緒になって、各自治体に働きかけを続けたい。公共交通機関が、感染防止対策をしっかりと講じていて、安心して使っていただけるということをPRしていきたい。中期的視点では、関西では2025年に万博がある。万博というと、海外のお客様をはじめ、多数の人が訪れるので、バリアフリー対応、キャッシュレス対応、接遇の向上がより一層、必要と考えており、これらの取組が進むよう後押ししていきたい」と語った。

その上で、「大阪タクシーセンターが作製した新型コロナウィルス感染防止対策ビデオや感染予防対策協力ステッカーを活用し、業界と一緒になってPRしていきたい。昨年4月、医療従事者とその家族の適切な輸送についてという通達を国交省旅客課長名で発出している。そうした人からの運送申し入れがあった場合には、感染予防対策を施した上で、対応していただきたい」と述べた。

また、若林隆司・自動車監査指導部長は「緊急事態宣言下、エッセンシャルワーカーの先頭に立っていただくとともに、事業継続計画PCPの観点からも取り組まれていることについて、タクシー業界の方々に敬意を表したい。我われも、制約を受けた。監査のやり方、頻度、該当監査等もそうだが、当然、バス・タクシーも従来に比べ、動いていないので、安全確保の確認に対しても、いろいろな工夫が必要だったという一面もあった。コロナ禍の状況を判断した中で、安全安心の確保を含めた事業者への啓発活動も含め、行っていきたい」と述べた。

末満部長は、第三次補正予算について「大きく3つの柱がある。1つは、地域公共交通の活性化に向けた新たな取組みの後押し。補助対象は、デジタル技術の導入に係る経費、地域におけるMaaSの構築、新たな取組みにおけるの実証運行に要する経費などが挙げられている。2つめは、地域公共交通確保維持活動。これまで、UDタクシー導入支援を行っているが、継続して補助を行っていく。3つめは、観光事業受け入れの整備。新技術を活用した感染症対策として、車内等での新型コロナウィルス感染症の感染拡大を防ぐため、利用者の安心安全に資する器機の導入に対して支援を行う。具体的には、高性能フィルターを要する空気清浄機や空気清浄度モニターの導入を想定している。いずれも、詳細な内容については調整中であり、補助要項もまだ出ていないので、現段階ではこのくらいのことしか言えない」とした。

地方創生臨時交付金の活用要請については「各協会には、昨年も各自治体を訪問していただき、良好な関係を保っていると思っており、さらに強化する取組が必要だ。大阪市域交通圏の準特定地域協議会で、協議会の会長から『地域計画に盛り込まれている活性化事業の取組が不満足である』という発言があった。大阪のタクシー業界を代表する大タ協にフォローアップをしっかりとお願いしたい」と苦言を呈した。

また、近畿2府4県の職場環境良好度認証制度の申請状況については「速報値だが、管内では79社から申請があったと聞いている。運転者の担い手不足は業界の大きな問題であり、この課題に対応する観点で職場環境良好度認証制度が導入された。今年度の申請は締め切られたが、制度の普及については、全タク連が定めたタクシー業界において今後、新たに取り組む事項の一つであり、円滑な浸透および幅広い普及を図る観点から、業界団体には本制度のさらなる周知およびさらなる参加の呼びかけを行っていただきたい」との考えを示した。

速報値で直近の営収を報告
 1月の状況は把握せず

―― コロナ禍第3波で緊急事態宣言下の近畿2府4県で、タクシーの売上げはどのくらい落ち込んでいるのか

末満 GoToトラベルキャンペーン等の効果もあり、10月ぐらいまでは、完全には戻っていないが、戻り基調にあった。感染拡大が見られたため、10月をピークに11月、12月と落ち幅が大きくなってきている。12月は3~4割の営収の減少(前年同月比)が見られる。これは、全国的に同じような傾向だ。おそらく、1月も同じような状況だと思っている。京都はGoToトラベルキャンペーンの関係で11月まで伸びていたが、12月に落ちてしまっている。

―― 特に12月後半から落込みが激しくなり、1月になると、5割以上落ち込んでいる地域もある

末満 直近の状況は、私はまだ見ていない。

―― コロナ禍が長引いている関係で、自動車事故は全般的に減少傾向にあり、自賠責保険の料率が4月から下がると聞いている。事業用自動車では、例えば、昨年1年で見ると、通常年に比べ、どうだったのか

若林 直接、事故の件数を監査指導部として把握するものではない。ただ、事故については、過去の例からも集計が遅れてきたり、件数については警察など他がまとめるデータもある。動いている数が少ないので、比率的には下がっているんだろうな、とは認識しているが、具体的な数字を持ち合わせていない。ただ、社会的に影響を及ぼすような重大事故を端緒とする監査は、精査はしていないが、減っているのだろうと思っている。

―― 地方創生臨時交付金の活用について、協会とともに各自治体を回って要請していると思う。協会単独で回ったというのは聞いているが、行政と一緒に回ったということは、あまり聞いていない。実際には、どのくらい回っているのか

野澤局長、近畿の各知事に要請活動

末満 一緒に回るということは、今やっている。知事のところへ、局長、支局長、各府県協会長と一緒に行っている。今週からはじめたところで、すでに滋賀と奈良の知事を訪問した。兵庫、大阪、京都、和歌山には、今週から来週にかけて、訪問する予定だが、緊急事態宣言が発令されている地域もあるので、実際にお会いして話せる人もいれば、そうでない人もいるので、全部が全部、一緒に行くということにはならないが、極力、業界団体の会長さんと一緒に訪問している。他の自治体(市町村)については、一緒には行っていないが、各自行けるタイミングで訪問している。こちらは支局中心、業界は協会単位で行っている。一回目は第1次補正と第2次補正で地方創生臨時交付金が付いたときから回っている。今回、第3次補正が付いたので、再訪したところもあれば、前回までに行けなかったところに行っている状況だ。

―― 訪問して、どのような話を中心にしているのか

末満 基本的には、公共交通機関の現状を説明し、臨時交付金の支援の検討をお願いすることと、『近隣の自治体ではこのような活用をしている』などと事例の紹介をしている。

―― 第3次補正では、新型コロナウィルス感染予防対策に必要な機材、ニューノーマルタクシーに必要な空気清浄機、モニター、感染防護板に対する補助がバス・タクシーに付いた305億円の内枠で行われるようだが、これら機材への半額補助で5万円が行われるとしている。そうなると、タクシー1両あたり5万円の負担が新たに増えることになるので、この分については地方創生臨時交付金から補助してほしいということが、国交省自動車局や全タク連から要請されているようだが

末満 いくつかのパターンがあり、国からの補助で、2分の1、3分の1などがあるので、残る会社負担に対する補助に臨時交付金を活用してほしい、という協調的補助というものもあれば、事業継続のための支援金、例えば、タクシー1両あたりいくら、会社1社あたりいくら、という支援のお願いもあれば、需要喚起策として、初乗り680円にいくらか補填してクーポンを作るとか、さまざまな支援のやり方があり、それらについて検討していただくように話している。

大阪市地域公共交通会議 近運局として態度表明せず

―― 大阪市地域公共交通会議についてだが、1月15日に予定されていた2回目の会議は延期になったが、末満部長のお考えとしては、予定通り3月に実施した上で、会議で出されたさまざまな課題については、タクシー事業者と市または大坂メトロの間で調整していくべきということなのか、どうか。近畿運輸局も議決権を持った委員の一人として会議に出席しているので、採決をとるときには、賛成するのか、反対するのかということも合わせてお聞きしたい

末満 公共交通を持続可能なものにしていくというのが、基本的なスタート。その際、関係者間、特に事業者間の調整が重要だと思っているので、その意味で、それぞれが調整していっていただきたい。今、そうした調整が、大阪メトロとタクシー業界との間でなされているものなのかな、と思っていて、現時点ではいつ次の会議が開かれるか分からないし、そのときにどのような調整状況になっているかも分からない。その会議にどの立場で行くかということをまだ決めていない。

―― 昨年12月22日の会議では、大阪運輸支局の担当官が委員の一人として座っていた。成り行きによっては、採決が行われた可能性もあったわけで、ある程度の答を用意して出席していたと思わざるをえない。欠席の場合は誰に委任するのかを確認した上で、賛成、保留、棄権、反対の決をとると内田会長は言われていたが、どの立場をとる予定だったのか

末満 少なくとも、延期されている以上、そのときにどうこうというのは、申し上げる話ではないと思っている。次、いつ開かれるか分からないが、次に開かれたときに、どのような状況かを見極めた上で、我われとしての立場を決めていきたいと考えている。行われてもいない会議をどうやって…。

―― すでに一回行われているわけで、ややもすると、その一回目の会議で決が採られていたかもしれない。その意味でお聞きしたい

末満 一回目は、決は採られなかったわけで…。

―― 内田会長は、成り行きによっては決を採る可能性もあった。その場合、どのような立場をとるつもりだったのか?

末満 しかし、決は採られなかったのだから…。

―― 近畿運輸局として、大阪運輸支局長が委員だが、代理で首席専門官を出席させたのだから、代理の人は、採決が謀られた場合にはどうするかを決めて出席していなかったら、組織として統一がとれないのではないか

末満 一回目については、我われとして(会議の結果が)どうなったかということは言う必要もないと思っている。2回目をどうするかについては、まだ日程も決まっていないので、現段階で決めたものはない。

パソコン画面から:左が末満章悟・近畿運輸局自動車交通部長、右が若林隆司・近畿運輸局自動車監査指導部長氏

写真:昨年末の京都駅烏丸口タクシー乗り場待機場