大阪メトロの担当者がAIオンデマンド社会実験の概要を説明
生野区長、質疑応答で反対意見多数の中、市民に「前向きな対話」求める

2020年12月1日付・第505/210号


【大阪】大阪市生野区役所は11月27日、第3回生野区地域公共交通検討会を開き、来年3月から1年、区内一部地域でワゴン車6両を使ったAIオンデマンド交通社会実験を市から受託した大阪メトロ担当者を招き、区民や交通関係者など約50人に事業概要に関して説明。実施への理解を求めた。しかし、質疑応答では、ほとんどの質問者が反対発言に終始した。批判を甘んじて説明会を開いた生野区はまだいい方で、33両のワゴン車による同様の社会実験が予定される平野区では、説明会すら開かれなかった。

検討会を主催者した生野区の山口照美区長は約2時間にわたり社会実験の概要説明と質疑応答が行われた検討会のむすびで「今日出された意見や質問については、しっかりと受け止めたい。大阪市の区長会で私は『地域公共交通を諦めたくない』と言った。皆、コミュニティ交通や地域公共交通のことは、怖くて言えない。そういった中、例えば旭区さんは区内の事業者さんから多額の寄付を受けたり、自分たちのお金で走らせたり、天王寺区にもそういった関係のバスが運行されているが、他の区長からは『ようやるなあ』というようなことを言われながら、やろうとしている。

私たちには予算がない。しかし、一人暮らしの高齢者も多いし、一方、路線バスの本数の多さにはびっくりしている。私は、11年間自営業をしていたので、採算性の問題が良く分かり、大阪市の財政の状況も、さまざまに考えている。今、時代が過渡期に入っていると感じている。高齢化が進む中、生野区は自転車がとても多いが、自転車に乗るのがしんどくなっている。私はDiDiを使うが、いろいろなICTが入ってきている。タブレットが扱いにくい場合には、人に操作してもらうことを考えながら、検討会議を続けてきた。

交通不便地域があることを議論していただき、固定ルートでバスを運行させるには人件費的に厳しいと南タクシーさんからアドバイスを受けた。コロナ禍で外出自粛となり、悩んでいたところに、大阪メトロさんから提案をいただいた。私にはこの千載一遇のチャンスを生かしたいという思いがある。そのためには頭から否定しないで、いろいろな意見を出していただき、前向きな対話を重ねていただきたいと思う。ギリギリのところで、できる方法を考えようという思いでいる。

地域にお願いしたいことは、できるだけ前向きな意見と聞く耳を持ってほしいということ。先ほどは、(の質疑応答で)大阪メトロさんに『私の人間性の問題』と言わせてしまったが、前向きに話をしていただき、スマホの普及に力を貸してほしい。防災、見守り、移動に関しても便利になる。今までの検討会を無視するわけではないが、ギリギリで踏み出した一歩だが、そこに生野区が入っているので、社会実験を成功させたいと思っている」と訴えた。

写真:上=検討会の冒頭、あいさつをする大阪メトログループの担当者
下=むすびの言葉でAIデマンド交通への思い入れを語る山口照美・生野区長