公明ハイタク振興議員懇話会が総会
ニューノーマルタクシーを見学
コロナ禍の影響をヒアリング
全タク連、経営助成等6項目を要望
2020年11月11日付・第503/208号
【東京】公明党ハイヤー・タクシー振興議員懇話会(富田茂之会長、千葉)の総会が11月11日、東京都千代田区の参議院議員会館で開かれた。議連幹事長には、伊藤渉・衆院議員(愛知)が財務副大臣に就任したことで、岡本三成・衆院議員(北関東)に代ったことが報告された。
9月の公明党定期大会で斉藤鉄夫・衆院議員から交代した幹事長の石井啓一・衆院議員(前国交大臣、東京)は議連を代表し、「ハイヤー・タクシー業界は、コロナ禍で最も影響を受けた業界の一つだと思っている。厳しい中でも、エッセンシャルワーカーとして運転者が働いており、いろいろなご苦労があると思う。しっかりとお話を承りたい。昨日、菅総理が第三次補正予算案の編成を指示した。コロナの影響を受けた業界を応援するため、全力を傾けたい。これから年末にかけて、来年度予算における税制改正など、重要な時期を迎えた」とあいさつ。
全タク連の川鍋一朗会長は「労働者を追い詰めるライドシェアの方向ではなく、日本らしいタクシーの方向に規制緩和し、利便性を高めていく。コロナで売上げは前年比7割だ。どうしても、夜の飲食が戻っていないが、一部で電車やバスよりはタクシーの方が安全というプラス要因も見える」「移動するなら、タクシーの空気が最もきれい。空気清浄機とモニターがついているニューノーマルタクシーを見ていただきたい。コロナ感染者輸送対応の専用車両も用意している。こうした設備投資に助成していただきたい。企業もたいへんだが、まずは雇用維持で、雇用調整助成金特例措置の延長を業界一丸となってお願いしている。また、12万円の税金を払わなければならないが、タクシーでフードデリバリーサービスができるようになった。空気清浄機でタクシーの価値を高め、雇調金で命をつなぎながら、タクシーの新しい時代を切り開いて行けるのではないか」などと述べた。
また、菅政権に対しては「経済諮問会議の下に成長戦略会議があるが、メンバーにはパソナ会長の竹中平蔵氏、フィーチャー会長兼社長の金丸恭文氏、小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏という反タクシー三本の矢のような人たちだ。それぞれ、皆さん独自の観点をお持ちで、米国で流行っているのに、何で日本でやらないのかと、一部の人も言われるが、先週カリフォルニア州でプロップ22という住民投票があり、ライドシェア労働者に120%の最低賃金を保障しなければならないことや需給調整、社会・雇用保険を手配しなければならないことが可決した。昨年、州法でウーバーのライドシェアは社員にしなければならないことになった。その州法を覆すためにウーバーが住民投票を仕掛けた。タクシーには10%が社会保険料、5%が安全対策になるが、これがライドシェアにはないので、米国ではどんどん規制が入っている。日本のタクシーは『忘れ物をしたら帰ってくる。日本のタクシーはすごい』と言われている。例えば、タクシーも雨の日の運賃は高く、晴れの日は安くなるというダイナミックプライシング、何人も乗り合わせれば安くなる相乗り運賃を導入するなど、さまざまな規制改革をやっていく。アプリでも呼べて、キャッシュレス化が進んでいる。タクシーを進化させて、世界で最も良い輸送サービスを提供する路線で、『運行管理、整備管理の主体を置かないライドシェアには、極めて慎重な検討を要する』という石井語録にあるように、極めて慎重な改革をやっていきたい」とした。その上で、「フードデリバリーサービスをする上で、12万円の税金を支払うことになっているが、できれば軽減しえほしい」と要望した。
今井一彦・北海道ハイヤー協会会長は「2月に運賃改定をしていただいたが、北海道ではその後、IRの誘致見送り、コロナ禍と続き、大臣の大英断で改定がなかったら全国47都道府県のほとんどで、7割どころでなく、もっと落ち込んでいた」と表明。また、「せっかく、ススキノに人が戻ってきたと思ったら、またコロナで人がいなくなった。タクシー運転者は社会保険に入っているが、高齢者の短期労働などには加入義務がないので、国民健康保険に加入している。国民健康保険には、もともと個人の収入が減れば免除される制度がある。一方、社会保険は、収入が半分になっても、算定が下がる制度はあるが、基本的に負担は減らない。税制は難しいと思うが、その辺をお願いしたい。社会保険の猶予は1年なので、来年3月に払えるかということがあり、大変だ。猶予期間をせめて2年などに延ばして経営ができるようにしてほしい。地震のときも、津波のときにも、タクシーは動いた。災害時の最後に命をつなぐライフラインだと思っている。公共交通維持のため生き延びられる政策をお願いしたい」と要望した。
出席議員からは「GoToトラベルキャンペーンについては延長することになったので、よろしくお願いしたい。正しく恐れるという点については、タクシーの空気清浄という点で力を入れているが、今の助成制度では不十分だということだと思う。絶えず換気されるということをアピールしていくことが、安心感につながり利用されることにつながる。助成の拡充について、もう少し具体的に説明してほしい」という質問があった。
これに対し、川鍋会長は「デンソー製の空気清浄機が5万円、フィルター1年分、センサーとモニター用のタブレットで3万円で、1両あたりのランニングコストは10万円ぐらいと見積もっている。1両10万円の装置は、気温等で効果が変わるが、国交省のスパコンによる風洞シュミレーションによると、3分ほどで空気が入れ替わることが分かっている」と説明した。
祓川直也・自動車局長は関連して「空気清浄機はタクシーには1両につき1台、バスには1両につき2台設置する。1台6万円かかる。タクシーは全国20万両ある。単純計算で120億円になるが、このくらいは要求させていただき、来年の東京オリンピックでタクシーの移動は安心といういうことにむすびつけたい」と説明した。現在、どのくらい設置されているのかとの質問に、川鍋会長は「今はテスト的に都内で2両動かしている。空気清浄機を付けているのは、都内に数十両あるが、モニターを付けているのは2両。現在、モニターはデンソーが調整中だ。来春に向け、テスト運行を完了させ、東京オリンピックに向けて装着していくというプランだ」と答えた。
また、出席議員から「これから海外の旅行者等が入ってくるときに公共交通を利用しないでほしいという公示が出ているが、これにタクシーが入ってしまっていては、外国人旅行者が困ることになる。タクシー事業者からも『ぜひ使ってほしい』という声を聞く」という質問に川鍋会長は「ジャパンタクシーをコロナ感染者を乗せる車両に改造するのに数十万円かかる。前席と後席の空気圧を変えるのに管を通すが、見かけは悪い。日本交通だけで9両このような車両を走らせている。かなり需要が増えているので、増やさなければならない状況になっている。日本財団からの補助を受けたり、メーカーが持ったりしている。全国的にこのような車両導入が増えている。入国外国人の輸送については、会社の方針を変えなければならないので、基本的にはお断りしている。最初の頃は、そうしたことにより退職した運転者もいた。今は、空気清浄機の設置などで改善されている」と答えた。
今井・北ハ協会長は「感染者輸送については風評被害があるので、ハッキリは言えないが、個人タクシーが協力してくれたり、貸切バスの需要がないので、貸切バスを改造して対応しているところもある。かなり協力しながらやっている。運転者は防護服を着て訓練を受けて対応している」と説明した。
坂本克己・全タク連最高顧問は「デービット・アトキンソン氏は聞くところによると、中小企業が多すぎるとしているという。生産性向上のため、日本の中小企業は減らさなければならないということを言っているか、言っていないか分からないが、そうしたニュースが伝わっている。もってのほかだ。タクシーは災害時でも、機敏に地域の要望を聞きながら対応をしている。規模が小さいからできる。地域活性化、元気にエッセンシャルワーカーとして対応している」と強調した。
富田・議連会長は「娘と孫がタクシーに乗ったところ、誕生日祝にいただいたプレゼントをなくした。探しても見つからず、諦めていたことろ、次に呼んだタクシーが、たまたまそのときのタクシーだった。運転者が『これ、落としたでしょう』と届けてくれた」と経験談を語った。
北側一雄・党副代表・議連顧問(衆院議員、大阪)は「コロナ禍の中、大変なご苦労をされているということは、十分に理解している。来年度の予選編成、税制改正、第三次補正があるので、皆さんの声を届けるよう頑張っていきたい」と述べた。その後、ニューノーマルタクシーを見学した。
全タク連は「新型コロナウィルス感染症により深刻な影響を受けているタクシー事業への支援要望について」と題する要望書を提出した。
それによると、「エッセンシャルサービス産業かつ産業インフラであるタクシー事業の維持、継続のため下記の支援等を是非とも講じて頂きたくお願いいたします」とした上で、①タクシー事業者への経営助成として「歩合給が中心のタクシードライバーの雇用継続のために、コロナウイルス問題が収束するまでの間、前年同月比ベースでみた給与減少分の賃金補填」「コロナウイルス問題が収束するまでの間の最低賃金法の規制の例外的・弾力的な適用・運用、特に最低賃金額割れとなる場合にその不足額の補填」「持続化給付金の複数回にわたる支給及び金額の拡充」「運転者の感染リスクに対する危険手当の支給」「マスク・消毒液等感染防止に係る備品に対する優先的供給及び助成」「防菌シート、感染防止仕切り板、空気清浄機等の配備助成の拡充」「コロナ感染症仕様車両購入助成」「タクシーデリバリーサービスの推進のための保温・保冷装置等購入助成の拡充」、②資金繰り支援=「公的・民間金融機関等による無利子・無担保の融資の拡充」「金融機関からの融資金の返済猶予」「金融機関による貸し剥がしの防止」、③雇用調整助成金の拡充=「教育訓練加算額(現行2,400円)のリーマンショック時(6,000円)以上への引き上げ」「申請手続きのより一層の簡素化及び支給のより一層の迅速化」「特例措置の延長」、④公租公課の特例措置=「法人税、消費税、固定資産税、事業所税、自動車関係諸税(石油ガス税を含む)等の減免」「社会保険料、労働保険料の減免」「水道・光熱費の免除」「タクシーデリバリーサービスの推進のための登録免許税の軽減」、⑤GoToTravel事業の推進によるタクシー需要の復活=「旅行商品を購入した消費者に対し、タクシー事業者を対象とした割引、ポイント、クーポン券の付与の拡充」――の6項目を要望している。
写真:上=総会の冒頭、富田会長があいさつ(左でマイクを持つ)
中=「見える化」タブレットを手に説明する川鍋会長
下=川鍋会長の話を聞く北側顧問(右)と富田・議連会長