竹中平蔵・パソナ化進む淡路島 タクシー絶滅の危機
代わりに介護タクシー 自家用有償 運転代行が台頭
地元事業者は対抗のため安い軽自動車タクシー運賃を要望

2020年11月1日付・第502/207号

【兵庫】池田昌宏・有限会社みなとタクシー社長(兵庫県タクシー協会淡路島支部長、理事)は10月29日、本紙の取材に答えた。淡路島のタクシー事業者が置かれている状況に絡み、「淡路のタクシーの明日のためには、国の政策を転換しなければならない」などと語った。

淡路島では2年前、観光客等のラストワンマイルの移動を確保するなどの理由で、兵庫県民局の斡旋で、ウーバーによるタクシー配車の実証実験を始めった。また、来年は、竹中平蔵氏が会長を務めるパソナグループ本社機能を淡路島に移転する計画を発表している。それに伴い、パソナグループ社員1200人が「移住」するなどとする新聞報道があった。本紙取材に対する池田氏の発言概要は、次の通り。

淡路島の3市(淡路市、洲本市、南あわじ市)の人口は、毎年1500~1700人減少している。こうした状況が続いており、淡路島には明日のタクシーがないと行っても過言ではない。淡路島だけでなく、日本の地方のタクシーは皆、同じ悩みを抱えているのではないか。こうした状況にあっても、利用者を守るため、借り入れ金があっても、事業を続けなければならない。

私は昔、市役所に勤務していたが、その後にタクシー経営者になった。最近では、会社を維持するため、夜の緊急配車要請に応えるため、夜勤は私一人でやっている。電話がかかってきたら、私がハンドルを握り、タクシーを走らせている。この事業を14年間、やっているが、休みの日はない。今はバス事業もやっており、コミュニティバスを運行しているので、タクシーよりもバスの方が収入がある。けれども、他社では3~5両程度の会社が多く、そうした会社はやってられない。

これは、最近のコロナ禍とは関係なく、以前からの傾向だ。こうした状況を打開するため、県に頼り、全タク連を通じてアクションを起こさなければならないと考えている。こうした状況になっているとは、国もよく分からないだろう。タクシー事業者は、いつ辞めてもおかしくない状況が続いている。しかし、事業を続ける経営者たちは、免許の重みを知っているから続いている。先ほども言ったが、当社はコミュニティバスを運行しているので、何とか経営が維持できている。

タクシー事業だけでは採算がとれないのでやっていけない。淡路のタクシーの明日のためには、国の政策を転換しなければならない。運転代行業者はどんどん増え、もはや野放しの状態だ。公安委員会に届出をしているのはいい方で、運転代行事業者の実態は、携帯電話で直接、利用者とやり取りをして、小遣い稼ぎのため、白タクをやっている。

淡路島では、一家で自家用車が2、3両保有しているところが多い。なので、自家用車で飲みに行き、帰りは運転代行で帰る。運転代行の随伴車両は、軽自動車なので経費が安くすむなど維持しやすいという利点がある。こうした運転代行の運転者は、昼働いている人がやっており、労働者の健康管理ができていないことから、安全の確保ができていないなどとして淡路島の労働基準監督署へ行き、さらに兵庫労働局へ行けと言われたので、兵庫労働局へ2、3回行った。最後には兵庫県警へ行けと言われたので、県警へ行たところ、県警の部長が3人状況を見に来たが、それっきり、その後、何の連絡もない。

タクシーにはまだ需給調整規制があり、増車できなかったときに運転代行が簡単に届出だけでできるようになった。飲酒を伴う飲食店も運転代行があれば客が来るので、夜の動きはいい。昼の方はと言うと、地域公共交通会議で、軽自動車の自家用有償などが議題に挙げられ、私一人が反対しても出席している他団体に皆、賛成されてしまう。青ナンバーの介護タクシーは軽自動車なので、タクシーも軽自動車で運行できるようにして、軽運賃を創設して対抗させてほしいと運輸局へお願いしに行ったが、その答えは1000CCの普通車なら経費が安くつくとの説明だった。しかし、運賃は普通車運賃を適用しなければならないとのことだった。

私は、安い運賃で対抗するため、比較的経費がかからない軽自動車のタクシー運賃がほしいと主張したが、聞いてもらえなかった。淡路島交通圏は準特定地域から自由化地域となり、今はタクシー事業を買収する人はいない。なので、廃業する事業者、自殺する事業者もいた。運転代行や自家用有償、介護タクシーなどが参入する前の営収の割合は、昼4割、夜6割で採算が合っていた。ところが今では、昼の需要は減り、夜の需要は他に取られるなどで無く、会社は赤字だ。タクシーは地域公共交通と言うが、損してまで継続はできない。

兵庫県民局は、淡路島にはタクシーは絶対に必要として、ウーバー配車でタクシーを応援してくれている。また、キャッシュレス化に対する補助金も拠出するなど、応援してくれているので、何とか経営はできている。

写真:池田昌宏・みなとタクシー社長