全タク連 第151回理事会 祓川自動車局長ら出席
川鍋会長、ライドシェアの観点から菅政権を警戒
武居・労務委員長、雇調金継続の見通しに言及

2020年10月21日付・第501/206号


【東京】全タク連は10月15日、東京都千代田区の「自動車会館」で第151回理事会(写真右)を開いた。2021年11月9日、滋賀県大津市の「びわ湖大津プリンスホテル」で次期臨時総会、秋季理事会、全国事業者大会を開催することを承認。佐々木宏行・キングタクシー株式会社社長(秋田)を副会長、池田憲彦・有限会社前谷地タクシー社長(宮城)、川上秀人・日の丸自動車株式会社社長(岐阜)を常任理事に選任、佐々木昌二・前副会長(株式会社仙台タクシー社長)を顧問に委嘱した。

冒頭、川鍋一朗会長(東京・日本交通社長)は「コロナ禍の中、俊敏に輸送実績のサンプル調査をしており、政治・行政に話をするときのベースとなっている。どん底の4~6月から、7月は少し上昇してきたかなと思ったが、8月は腰を折り、戻ってしまった。たいへん危惧していたが、9月にまた少し戻りつつある。新たな時代、このまま前年比7~8割で終わってしまうのか、世の中の情勢、コロナワクチン、我われ事業者自身の努力にかかっている。皆さんとともに一生懸命やっていきたい。

7日の自民タクハイ議連総会は新政権になってから急に開催が決まったが、多数の先生方に出席していただいた。皆さんの日頃の取組の表れだと思っている。総会では感染対策の他、ライドシェアに対しては新政権でどのように出るかは分からない。タクシーの進化への自助努力があってこそ、行政・先生方が応援しようということになるのではないか。また、総会では、ウィズコロナ、アフターコロナという新しい状況の中で、タクシーはどう生きるべきか。個別輸送機関としての特徴を生かし、運転者と直前の乗客との感染対策ができれば、公共交通機関ではいちばん感染リスクが低い。これを目に見える形で対応したい。

今回、空気清浄機を取り付けた。目に見えた安心感を示すためにタブレットを開発中だが、そうした方向性を示すための試作車を用意して、参院議員会館前の駐車場で、直接見ていただいた。若年層の2割ぐらいがマスクをしないで助手席乗り込んでくるので、アクリル製の防犯板を助手席までカバーできるようL字型に加工したものも用意した。2~3万円かかるらしいが、各社で試作品が出ている。このようなことで、利用者や運転者の安心を担保していきたい。来春まで試行錯誤していく。来年は東京オリンピックが絶対にあると思うので、それまでに相当数のニューノーマルタクシーの装備をしているという状況にしていきたい」と述べた。

祓川直也・国交省自動車局長は「3月からコロナ禍となり、テレワークになったり、会議はほとんどリモートだ。今夏は、例年は来年入省する学生の面接を行うが、全部リモートで行い、全くお互いに会わないで採用するということで本日に至った。初めて参加する会議がこのような大きな会議で名刺交換もできるのでいいな、と思っている。今、コロナ禍でたいへんだし、コロナ禍がなかったとしてもたいへんな課題を抱えていると思う。

先日も自民タク議連総会に出席したが、5年前にトラック議連の先生方の応援団がいて、頼もしいと思ったが、タクシーもすごく応援団が多いというのが実感だった。その後のニューノーマルタクシーの見学も20人以上来て、熱心に見ていたと思う。報道では、第3次補正予算をやろうということもある。タクシーの中がいちばん安全だという空間を作ろうではないかと言っていただき、本当に頼もしいと思った。

我われは、予算編成のときに財務省と闘うが、後ろに先生方がいてくれると自信をもってやれる。こうした応援があると、ちゃんとやらないとヤバいというのがある。そうした一つひとつの裏付けが、皆さんの地元での日頃からの信服だと思う。菅政権が発足して1カ月、いい政権だなと思う。学術会議の話題が大きく出ているが、我われにとっては良かったかなと思っている。

規制改革推進会議でDXなどの聞き慣れない単語が出てきたり、ライドシェアに熱心な人がわりといたりというのもあるが、私の感じでは、安倍氏のときには、国のあり方や憲法などの大きな目標があり、そこに国を持って行こうということが根底にあったが、菅総理は普通の生活の中で、もう少しこうならないのか、という具体的な課題を取り上げて、一つひとつ実現したいという人だ。

私は以前、観光庁にいたが、今のGoToトラベルキャンペーンなどの細かい情報が総理のところに入ってきて、一つひとつやれと言われる。例えば、台風でどこかで新幹線が止まって停電している。そこに乗っていた外国人から菅総理のところにメールが来て、車内アナウンスには英語の説明がなく、何が起きているか分からないという情報が入る。

そのようなことは当然、観光庁には入らないが、菅総理はお前ら、そのような情報がないからダメなんだと怒られ、車内で英語のアナウンスが入るようにするなど、びっくりするくらい現場を大事にする総理で、そのような視点で仕事をするように言われている。自動車局はタクシーを含め、国民、利用者に近いところで皆さんにやっていただくところにいるが、多数の課題がある。

デジタル化にしても、このようにしたいのだができないという要望もあると思うので、そうした工夫が必要な、どの情報もどんどん教えていただくと、ひじょうに実現しやすい環境になると思っている。省内で議論すると、どうしても堅い感じになってしまうが、政権全体がそのような雰囲気になってきて、新しいことでもやってしまおうと話している。ニューノーマルタクシーもやってみようということで、川鍋会長と話しながらやっている」と自己紹介を交えて語った。

早船文久・国交省旅客課長は「タクシーは9月に入り、若干の回復はしているが、依然として前年同月比32%減と厳しい状況が続いている。これだけの需要減の中でも、雇用を確保し、事業を必死にエッセンシャルサービスとしての運行を継続されている。このことに本当に頭が下がる思いだ。

この間、国交省として、感染対策、事業継続支援、需要喚起、雇用調整助成金の特例措置は9割以上の事業者が適用しており、12月末まで延長されたが、財源の枯渇問題があり、この次の延長のときには何らかの見直しが必須と言われている。財務省では半年以上行っているので、職種及び配置転換を促す制度にするというようなことを言っている。

タクシーは一時的に需要が減っているものの、ドアツードアのニーズは決してなくならない。今後、経済が戻ったときにドライバーがすぐには戻らないということで、雇調金の継続を強く主張する必要がある」などとした。またGoToトラベルキャンペーンでは「10月1日から地域共通クーポンの配布が始まった。観光庁に確認したところ、タクシー事業者の半数以上が登録しているが、逆に言うと、まだ半数が登録していない。さらなる登録の呼びかけをしていただきたい。このタクシーでは地域共通クーポンが使えると表示するなど、目に見える形にしてほしい」とした。

コロナ臨時休車については「3月から始めたが、休車期限を12月末、復活期限を来年3月末までに延長した。これら期限についても、今後の休車状況を見て柔軟に対応したい。全国の休車状況は、6月頭をピークに若干減ってはいるが、6~9月と横ばい・微減で、まだ臨時休車制度の必要性は高いと思っている。このような状況が続くのであれば、さらなる延長を考えていきたい」とした。

感染防止対策については「こうした対策を打っても、利用者にいかに安心して乗ってもらえるかが大事だと考える。川鍋会長からも話があったように、新技術を活用したコロナ対策は新政権でも進めている。デンソーが開発したウイルス・花粉除去装置や車内空間の見える化、車内空間をきれいにすることにより、運転者の皆さんの感染リスクを低減することができる。

このフィルターの性能を確認するため、(独法)交通安全研究所で実験をして、エアコンだけの場合とフィルターを通した場合を比較し、フィルターを通した方が、40%早く空気清浄効果があることを確認した。理化学研究所のスーパーコンピューター富岳で、タクシーの気流シュミレーションで感染対策を科学的に確認していきたい。ピンチをチャンスを変えるためにも、行政と一体となって、ワンボイスで進めることが大事だと思っている」と取組を説明した。

こうしたことができるように国交省として初めて「事項要求」を行ったことを強調した。

質疑応答では、信原智彦・兵庫県タクシー協会副会長(荒井タクシー有限会社社長)は「タクシーフードデリバリーサービスは採算の合う事業ではないが、10月以降は貨物自動車事業扱いとして申請時に登録免許税が12万円が必要になっている。アイデアは良いが、考慮してほしい」と質問。早船課長は「事業を始めるにあたり、登録免許税自体はどうしてもかかる。まだまだタクデリの認知が十分に進んでいないということもあるのかなと思う。その辺も含めて頑張ってほしい」と回答した。

佐々木・前副会長は「9月18日、仙台の特定地域協議会で休車問題を決議して局長に提出した。アフターコロナでもそう簡単に需要は戻らないだろう。そうした場合、最後にはお互いにつぶし合いが想定される。終息後にも休車を長いスパンで認めていただき、半分以上は将来的には減車になると思う。しかし、今すぐの減車は、経営者の心理として、いろいろ苦労して今の車両数にした。夢をいただきながら、将来に結びつくには、適正な需給バランスにもっていかないと共倒れになってしまう。そのような理由で決議書を提出した」と述べた。

これに対し、早船課長は「休車のスパンについては柔軟に考えたい。預かり減車的なもの。自由に出し入れする話は、タクシー特措法の供給力を削減するという考え方にバッティングしないよう、コロナの影響がある中、よく考えてやっていきたい」と回答した。

信原・兵タ協副会長は全体の意見交換で、「コロナ禍の中、ウーバーイーツが浸透している。これがライドシェアに結びつかないか危惧している。自治体に支援を要望しても限度がある、我われ自身が工夫をして取り組む必要がある。協会でも2カ月の会費減免を実施した。全タク連総会の承認があった会費値上げに対しては、もう少し猶予をもってほしい」などと述べた。

これに対し、神谷俊広理事長は「会費値上げについては、とても新しい単価に値上げすることはできないと事務局も承知しており、会長からもまかりならないと言われている」と回答した。

関連して、川鍋会長は「ウーバーが悪いというのではなく、ライドシェアが悪いのだが、ウーバーイーツで認知度が上がっていることを危惧する。我われができることは、ウーバータクシーをやっているので、そこはタクシー業界として自重しなければいけないと思っている。苦しいのは、いろいろと先生方に陳情しても、『ウーバーはタクシーをやっている』と言われてしまう。

菅政権が面会した経済人は、我われが敵としているライドシェア推進派の人たちだ。彼らは、タクシー業界に対し、ライドシェアを止められたという忸怩たる思いをもっているのだろう。そこは祓川局長とは逆の見方をしていて、怖いと思っている。これまでの経緯があるから、ライドシェアを深く進行させようとしているのかもしれない。そんなことがあれば、すぐに皆さんに伝える」と述べた。

前島忻治・大和自動車交通株式会社社長(東京)は「雇用調整助成金は12月末以降も引き続き延長するという理解でいる。ならば、どの程度の内容になるのか」と質問。

武居利春・労務委員長(副会長・昭栄自動車株式会社社長)は「9月25日に2次補正予算の1兆4千億円を使い切り、1兆5千億円が出ている。なおかつ申請した2割がまだ支給されていない。雇調金は4月に始まり、5月19日に緩和された。4月の段階では8330円、10分の9で申請した。それが5月19日に10分の10になり、1万5千円。これを4月に遡って申請できるという形になった。その再申請分もまだ全社に支給されていない。5月以降は新しい計算式で行うので戻ってきているが、5月分は止められている。

10月5日、職業安定局長のヒアリングを受けた。バスの次に受け、全国の実態を話した。そこで、何故、団体ごとにやっているのかという質問を行った。雇調金の延長となると、全産業が対象になるので、今のコロナ禍を見ると、以前のようには戻らない。それなら、継続は全産業を対象として審議すると思うが、団体別のヒアリングは、おそらく官邸からの指示だろうと思っている。

財務省の予算も含め、11月以降は各業界での必要性、差別化等が出てくるのだろうな、と思った。厚労省は、『財務省に何とか年度末までは今のまま継続したいと要請したい』と話していた。財務省は団体ごとに少しずつ条件を変えてくるのではないかという感じが若干ある。教育手当を申請している飛鳥交通の資料を提出したが、実態調査の必要性を訴えた。12月末で雇調金特例措置が終わると、1月から全車両を稼働させなければならない。仮に8330円に戻れば、ものすごい差額を皆さんが払わなければならない。

そうすると、廃業が出てきて、タクシーはなくなってしまう。我われはエッセンシャル産業としてキチンと維持できないと主張してきた。したがって、11月末ぐらいには厚労省から見込みが来るのではないか。厚労省と話をして3年で11億円の就職氷河期事業を実施した。コロナ禍で3カ月、労基監査がストップしたが、9月から各団体、業界ごとに一気に監査が入った。

タクシーの違反率は、バス・トラックに比べて高いというのも新聞に出てしまった。監査では3モードで91%という違反率だ。これも雇調金にも少し影響が出てくるのかなともう。先生方、内閣府にもお願いに行かないといけないと思っている。今のところ、厚労省は3カ月の延長をメドに考えているようだ」と答えた。

写真:上=冒頭発言をする川鍋一朗会長 下=当日の出席理事らは約50人だった