電脳交通 総額5億円の資金調達を発表
三菱商事、JR東日本スタートアップ、第一交通産業グループ、エムケイ、阿波銀行、いよぎんキャピタルから

2020年10月11日付・第500/205号


【徳島】株式会社電脳交通(本社=徳島県徳島市、近藤洋祐社長)は10月7日、三菱商事、JR東日本スタートアップ、第一交通産業グループ、エムケイ、阿波銀行、いよぎんキャピタルを引受先とした総額5億円の資金調達を実施したと発表した。

近藤社長は10月7日、東京都内で本紙に三菱商事との資本業務提携について「三菱商事は、東南アジアにおける配車アプリへの出資だけでなく、その地域全体の発展を視野に入れた投資を行ってきた。この度の資本業務提携は、その三菱商事が、少子高齢化・人口減少を続ける日本における地域社会の再構築を目指すという点で、弊社の活動に魅力を感じていただいたものと思っている」と語った。

電脳交通では「近年、配車アプリの急速な普及により都市部ではタクシー利用の利便性が向上する一方で、国内のタクシー事業者は市場の縮小、従業員の高齢化(全国平均60歳)、IT化が進まず長時間労働や地方における配車業務の75%が未だに電話対応であるなど、多くの課題を抱えている。

このため、地方では観光や地元住民の貴重な移動手段としてのタクシー車両が減少し交通空白地帯が拡大しており、中小のタクシー事業者はIT化も進められない中、新型コロナウイルス流行による経済的打撃により、タクシー業界は急速な変化が求められている。

電脳交通は2015年に設立したベンチャー企業。これまでクラウド型配車システム、配車センター代行業を中心に事業者向けビジネスを展開し、今年9月時点で全国25都道府県のタクシー事業者にサービスを提供、YoY(前年比)300%のペースで導入されている。

電脳交通が提供するサービスは、IT知識の乏しい人でも使いやすい配車サービスを、柔軟で低コストな導入が可能なSaaSとして提供することで、導入企業における経営効率化、配車業務の負担軽減・コストの削減、配車アプリ間のデータ共有・交換を実現している。

また、タクシー事業者の配車業務の代行サービスも提供しており、社内組織として全国各地に配車センターを開設しリモート配車業務を行っており、導入企業では平均30~50%のコスト削減に繋がっている。

今年1月までに累計4億円の資金調達を実施し事業拡大を図ると同時に、徳島市、尾道市、山口市など西日本を中心にその地域における移動の課題解決にむけた取り組みを各自治体と推進している。

今回の資金調達は今後の『全国への事業展開』『さらなる機能強化や配車センターの拡充など事業拡大に必要な人員採用強化』『サービス開始以来蓄積したデータ基盤と、コールセンター業務を通じて培われた現場のノウハウを活用した新サービス開発と提供』を主な目的としている。

電脳交通は設立当初、地方の中小タクシー事業者を中心にクラウド型配車システム・配車業務代行サービスを提供してきたが、今年6月の大規模事業者向け機能(自動配車・データ解析など)の提供、提携各社との取り組みにより、事業規模や都市・地方関わらず導入できるサービスへと変わりつつある。

今後はさらにQRチケットや決済レスコール機能、フードデリバリーや公共タクシー配車など、システム・サービスの両面からタクシー業界内の課題はもちろん、地域ごとに存在する『生活者が必要とする移動・輸送サービス』『観光地における移動利便性向上』などの課題を解決するために、タクシーのDXに必要なサービスを提供していく」としている。

今回、資本業務提携に参画した三菱商事株式会社にはモビリティ事業本部がある。モビリティ分野における事業開発を推進するために今年4月に発足した新しい本部で、自動車バリューチェーン事業でこれまで培ってきた事業基盤や強みを活かし、「ヒト」や「モノ」の移動に伴う課題を解決する新たなビジネスモデルの構築をミッションとしている。

昨年4月から福岡市で取り組んでいるオンデマンドバス事業「のるーと」の実証実験など、さまざまな事業開発に取り組んでいる。三菱商事と西日本鉄道の合弁会社ネクスト・モビリティ株式会社が昨年4月25日から、福岡市アイランドシティ地区でAI活用型オンデマンドバス「のるーと」を運行している。

また、同社や塩尻市等とのコンソーシアムを通じて、経産省「地域新MaaS創出推進事業」で選定された「自動走行を活用したMaaS」実証事業(以下「塩尻プロジェクト」)を開始すると8月6日、発表した。塩尻プロジェクトは、同一市内でAI活用型オンデマンドバス「のるーと」による運行(特定エリア内移動)と乗用車の自動運転による運行(エリア間移動)を推進するもので、公共交通事業のDXを検討していくとしている。

インドネシアの配車サービス大手、ゴジェックは昨年、三菱商事などから出資を受けたと発表した。調達額は合計で10億ドル(約1100億円)で、資金をインドネシアや周辺国での事業拡大に充てる。三菱商事は出資額を公表していないが、数十億円規模とみられる。

※註:DX(デジタルトランスフォーメーション)=デジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること。または、既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすこと。

写真:上=近藤洋祐・電脳交通社長、下=オンデマンドバス「のるーと」の実証実験出発式(西鉄が運行)