新宮市熊野川町でデマンドタクシー出発
1日8便、毎日運行、大人100円
熊野第一交通が運行を請け負う

2020年10月1日付・第500/204号



【和歌山】かつては和歌山県東牟婁郡に属し、平成の大合併で新宮市に編入された山間で飛び地の多い人口約2000人の熊野川町。過疎化、少子高齢化が進む同町で、10月1日から熊野第一交通のセダン型タクシー車両(乗客4人定員)によるデマンドタクシーの運行が始まった。

これにより、同町内を運行する熊野御坊南海バス、行政バス、熊野川診療所送迎が一部廃止となった。バスに代わるデマンドタクシーは通常、熊野川行政局に2両を待機させているが、予約が多い日には最大4両での対応が可能。

予約は運行を請け負う熊野第一交通へ電話(0735ー22ー6313)で行う。一日8便定時運行される1時間前までの予約が可能。利用料金は大人100円。子供は大人と一緒に乗車する場合は無料。熊野川町内の住人なら、自宅から目的地、目的地から別の目的地、目的地から自宅などのルート運行で、朝6時30分~夕方4時30分まで8便を毎日利用できる。

目的地はあらかじめ設定されており、公共施設・郵便局、医療・福祉・理美容、商業施設・店舗等39カ所、バス亭12カ所、集会所30カ所。隣接する生活圏である和歌山県田辺市高津橋バス停、三重県熊野市紀和庁舎までは運行範囲。複数人が同時利用となったときには、最短ルートを選択して運行する。運転は女性運転者2人が専任する。

熊野第一交通によると、出発式当日までに、30件の予約が入ったという反響だ。いかに住人の公共の足が不足しているかの現れだろう。市の予算では半年で約700万円の利用を見込んでいる。

運行開始に先立ち9月30日、熊野川行政局前で行われた出発式では、運行主体である新宮市の田岡実千年市長が「熊野川町はエリアも広く、地域によっては生活圏や交通事情も異なることから、住民の皆様の意見・要望を聞き、交通事業者や国・県と協議を行い、この度の再編では熊野川町の各地域へ乗り継ぎすることなく、自宅または自宅周辺から目的地にドアツードアで移動できるデマンドタクシーを導入することとなった」「高齢化が進む中、日常生活における移動手段の確保はたいへん重要な課題と考えている。運行開始後も住民の皆様の声を聞き、より良いものとなるよう適宜改善していきたい」と述べた。

下阪殖保・熊野川町区長連絡協議会会長は、「住民が育てる形で、地域に密着したタクシーであってほしい。住民、市、社協が協力し合うことですばらしいタクシーになる」と歓迎の意を表明した。

また、出発式では、麥田幹男・熊野第一交通営業所長が「熊野川町のデマンドタクシーの取組は、コロナ禍の中で、たいへん重要なもの。運行する側から利用者へのお願いは、乗車の際には、必ずマスクを付けてほしい。また、乗合いになるので、飲酒をした人は利用を控えてほしい」と呼びかけた。

熊野川町の地域住人の一人として出発式に試乗した森靜子(80)さんは「乗りごこちは良かった。若い人は自分でクルマを運転してでかけるが、高齢者は一人で買い物にも行けない。料金は100円と安いので、予約を取ってスーパーや診療所へ出かけたい」と話した。

写真:上=テープカットの瞬間。右端から、麥田幹男・熊野第一交通営業所長、髙野福己・熊野第一交通社長、下阪殖保・熊野川町区長連絡協議会会長、田岡実千年・新宮市長の順
中=NHK地元局の取材を受ける地域住民の森さん
下=デマンドタクシーを担当する2人の熊野第一交通・女性運転者