XTaxi(クロス・タクシー)が設立イベント
全理事・監事が京都に揃いZoomで配信190人参加
本紙、近藤代表理事にインタビュー

2020年9月11日付・第497/202号



【京都】(一社)XTaxiは9月4日、京都市下京区の「ホテルグランヴィア京都」で設立イベントを行った。

第一部は一般社団法人XTaxi組織活動紹介で、近藤洋祐・代表理事(株式会社電脳交通/徳島)、東江優成理事(沖東交通グループ/沖縄)、漢晋一郎理事(株式会社シティタクシーホールディングス/大分)、清川晋理事(株式会社仙台中央タクシー/宮城)、達川信二理事(株式会社中国タクシー/広島)、塚本泰央理事(株式会社冨士タクシー/石川)、吉川永一監事(三和交通株式会社/神奈川)が組織における自らの役割と抱負を語った。

第二部は「タクシー業界のDXチャレンジ~業種を超えた連携を目指して」をテーマにした記念パネルディスカッション。ファシリテーターは株式会社電脳交通取締役COOの北島昇氏、パネリストは株式会社MaaSTechJapan代表取締役CEOの日高洋祐氏、日本テクノロジーベンチャーパートナーズ代表の村口和孝氏、両備グループ経営戦略本部部長の大上真司氏、一般社団法人XTaxi代表理事の近藤氏が登壇した。

本紙、近藤代表理事にインタビュー

設立イベント終了後、近藤氏はホテルグランヴィア京都で、本紙のインタビューに次のように答えた。

本紙 本日は京都でイベントを開催したが、なぜ京都だったのか。

近藤 企画は1カ月ほど前につくった。どこで行うかということに意味を持たせたかった。最終的に決めた理由は、京都がいちばん売上げが減っていたということだ。このあと、京都の皆さんにあいさつ回りに行くが、昨年対比10%というのは強烈過ぎるので、そこからどう取組していくかなどの導線をつくりたいと考えた。

本紙 「クロスタクシー」という名称は、どういう経緯でつけたのか。

近藤 私たちの中に、メッセージが2つあり、一つはタクシー業界はおそろしく儲からないので、単独で生き残るのは難しいと思っている。そうなったとき、タクシー業界だけで抱え込んでしまうのではなく、もっと異業種と地域を一緒に支えていこうという考え方が、クロスタクシーの一丁目一番地の取組む姿勢だと思っている。

異業種との業種を乗り越えたかけ算をしていく。新しい利用者の輸送回数を伸ばしていくというのが、一丁目一番地のチャレンジだ。もう一つが、私たちが運転するのは、今までと同じモデルのタクシーなのかというと、早速、フードデリバリーが恒久化されたし、この先にタクシーが何をするのか、今までとは違ってきたのだと思う。その際、タクシーが変容していくという世界と、未知との遭遇するというのでXというのがある。

本紙 全タク連関係者の中には、XTaxiというのは、全タク連の青年部のようなものではないのか、と言う人もいる。比較的高齢の事業者からの目について、どのように認識しているのか。

近藤 実は反響は広がっていて、本日の参加者は190人ぐらいになった。全タク連が全国ハイヤー・タクシー事業者大会の来場者は400人ぐらいなので、そう比較しても結構なインパクトがあったと思っている。なぜ、話題性があったのかというと、いちばんのポイントはタイミングだと思う。このタイミングでこれをやるというのが、いちばん大きなインパクトを見出したのだと思う。

言われる通り、賛否両論はまだあると思うが、とにかく最初に考えたのは、走り出したときに宗教論争になるのは絶対に避けようというのがあった。全タク連に対しても大人のおつきあいをしましょう、ということで向き合い出した。その観点から言うと、ネガティブな声は多少はあるが、比較的少ないのかなと思っている。理由は、多分、横文字が多すぎるからだろうと思っている。社団法人というのは実績をつくってナンボだと思っている。タクシー会社がほしい事実を実現していくことを大きなテーマにしているからだ。

この会に入っていることで、良質な情報が入ってきたり、企画が前進したりという需要をどんどんつくっていかなければならないと思う。そのいちばんわかりやすい球は、例えば、点呼のリモート化であったりする。タクシーが旧態依然から抜け出ていないので、早くそれを変えていかないと、運行管理者が減っているので、有資格者がいても、インセンティブがないので、資格を取得する意味がないということもある。その仕組を変えていかないといけない。点呼制度があるので、アウトソーシングができないということもある。

持続可能になるように、いろいろな業務をアウトソーシングできるように業務委託の仕組をしていき、コストを下げる。例えば、運行管理代行業の仕組ができれば、業界のためにもお互いにいいのではないかと思っている。そうした具体的な打ち出しを早く行っていきたい。

本紙 賛助会員には、どのような業種の企業等が入っているのか。

近藤 金融系で言うと、自動車損害保険会社、銀行などがある。近年、MaaSやモビリティサービスという言葉が一人歩きしていた。それらが具体的にタクシー業界として何をするのかというのが、異業種から答が出ていても、タクシー業界には届きにくかったと思う。そうしたことを取り込むことにより、外部連携によって売上げが増えたとか、業務が効率化されてコストが下がったということなら、どんどん連携していくべきだと思う。

そうしたチャンスをいただける異業種とうまく連携していくべきだと思う。どうしても、タクシー業界の1社が個別にやってしまうと、彼らも追い切れないと思うので、業界が束になって一つの成果を出していく仕組が今回のXTaxiのDXワーキンググループだ。賛助会員になっていただいているのは、金融、エネルギー、運輸、大学研究機関、サプライヤー、アプリ会社、保険会社も入っている。海外資本はまだない。

本紙 設立趣旨にある「タクシー2.0」とは、どういう意味か。

近藤 若い人たちが集まって新しいチャレンジをすると、先輩方が心の距離を感じたり、足下を掬われるのではないかということを思ってしまう業界だと思う。そのようなことを避けるため、抽象論の高い球を投げたというのが「タクシー2.0」だ。過去100年のタクシーを1.0と定義して、それらとは違った取組を、事前確定運賃など、今までになかった形態にバージョンアップしたというイメージだ。

本紙 XTaxiというのはコロナ禍がなかったらできなかったのか。

近藤 それは、すごくおもしろい質問だ。私は徳島でタクシー会社を経営しており、徳島というのは、全国に比べ圧倒的に営収が低い。そこで経営再建した者からすると、たぶん20年ぐらいのうちに、今ぐらいに市場が小さくなると思っていた。大きな意味で、ノーモア徳島というか、そんな町に全国の地域が近づいていくと、すごくたいへんだということを考えた。いずれかは、これ以上、タクシー業界が落ち込むと危険で事業がもたなくなるということを、いろいろなところで発信していた。

それがコロナになって、乱暴な言い方をすると、いろいろな地域が一気に徳島に近づいてきて、大混乱に陥った。このようなコロナ禍の時期に業界が束になり、どこまで需要が戻るか分からないが、未来に向けて冷静になって考えようというので束になれた。どこかのタイミングで、このようなことをしようと考えていた。そちらに持って行かないと、本当に持続可能性がゼロになってしまうと懸念していた。その意味では、時期が早まったということだ。

本紙 どのような基準で、このような能力のある理事を選ばれたのか。

近藤 話をする中で、この人は多分、野心を持っている。その野心とは、ほしいものがあるなら、自分で手に入れてやる、という力強さが根っこにある人たちだ。なので、業界とか全タク連がどうとか、いうことに足並みを揃えていくよりかは、自分の力で生き抜いていく人たちなので、それがいちばん信用できるのだと思う。何かに依存するのではなく、完全に自立されていると思ったので、皆さんにお声がけさせていただいた。本業で取引したことがあるとかではない。

本紙 この業界には、2つの市場があるという人がいるという指摘がある。一つは、団塊の世代から上の高齢者層。それよりももう少し手前の60歳代以上の人口は全人口比34%程度だが、25歳以上59歳までの全人口と比べると60歳代以上は74%の割合となり、タクシーの利用頻度から見ると互角以上ということもできる。これが40歳代以下になると、皆さんの世代に近くなり、ITやパソコンを駆使できる世代になってくる。

なので、乱暴に言うと、半分は普通に配車アプリを受け入れられるIT世代、半分はITがちょっと苦手なアナログ世代という切り方もできる。これは、タクシー運転者も、利用者も同様に区分けすることができるのではないか。なので、そのような2つの市場があるので、それぞれの市場性に適したアプローチが必要だという指摘があるが、これについてどう思うか。

近藤 コロナで痛感したのは、売上げが半分になっても、半分の人が残っていただいた。この人たちは年齢層が幅広いし、通院やタクシーが欠かせない生活をしている人たちだ。この人たちの配車の方法はバラバラだった。タクシー会社として、いちばん「川上の理論」が、それらの客基盤をどう大事にして、どう増やすのかということだと思う。

今は、配車アプリ側がつくったルールで「皆さん使って下さい」というのが通常だと思うが、これからは、もしかすると運用を変えないと、タクシー会社は顧客基盤に守られているので、そこをどう大切にするか、リピーターをどう大切に増やしていくかということが、いちばんの本論になってくると思う。そのための経営努力としてツールとして必要なのが配車アプリなのかもしれないし、もしかすると自社でつくるものなのかもしれない。

ここにいるメンバーは、いろいろな求められるツールを全部提供するぐらいの気概を持っているのだと思う。それは公共交通機関として、すべての人の移動を満たしていくというのがベースにある。すごく欲張りな話かもしれないが、置いてけ堀を一人も出さないというのが基本的思想にあると思う。

徳島でタクシーをやっていたら、新しいサービスなどを言うが、農道で困っている高齢者を見たら、タダでもいいから乗せてあげたいと思ってしまう。これから利用者を増やしていかないと、社会性を追求するなら、私たち自身も変容していかなければならない。単純にアプリか電話かと聞かれれば、どちらもやります、というスタンスだ。そのことで分断させるようなことがないよう、我われが継続してやっていくというのが基本的思想になってくる。

写真:上=会合終了後に集合写真。後列左から清川氏、吉川氏、達川氏、塚本氏、前列左から近藤氏、東江氏、漢氏の順、
中=オンライン会合の模様(ホテルグランヴィア京都)
下=本紙のインタビューに答える近藤代表理事