未曾有のコロナ禍 タクシー業界はどう生き残るか
薬師寺氏ら在阪7事業者がワンテーマで懇談
稼働少ない会社多数「歪な状況を協会は放置」とチクリ

2020年9月11日付・第497/202号


【大阪】大阪業界の重鎮、薬師寺薫・関西中央グループ代表を中心に、古知愛一郎・梅田交通グループ代表、高士雅次・都島自動車社長、暮部光昭・日の丸ハイヤー社長、坂本篤紀・日本城タクシー社長、藤原大・駒姫タクシー社長、山根成尊・珊瑚タクシーグループ代表は9月4日、大阪市中央区の「アークホテル大阪心斎橋」で、「タクシーの未来を語る懇談会」を行い、コロナ禍後の未来のタクシーのあり方、コロナ禍が与えたタクシー業界への影響などをテーマに語った。当日は古知氏が進行役を務めた。出席者の主な発言は、次の通り。

薬師寺 京都の方の会社は、全滅するのではないかという話もチラチラ聞こえる。一方、大阪では、会社の名前は知っているが、全然走っていない会社がたくさんあるのではないかと思う。大小200社近く、タクシー会社があるが、大阪のタクシーも大げさに言うと危機に足を踏み込んでいるのではないか。何か良い方法はないか、ということを考えなければいけないと思っている。

こうすれば良くなるというものは、私の頭にはない。今、タクシー経営をやり出して何十年か経っているが、本日現在も20~30年前の会社の状況と同じだ。変化はしていない。ただ、一時は1000両を超えていたが、700両ぐらいに減らしている。当分、今のまま650両、700両という規模で、あと何年かやる予定だ。

高士 私もまだ、タクシー業界で6年ぐらいなので、分からないことだらけだが、自動車学校を長くやっている。タクシーもそうだが、お客さんが減り続けている。自動車学校は人口が減っているので、お客さんが減り続けている。新規需要はない。

例えば、18歳人口は平成のあるときと比べて半分になっている。だから、業界としての未来はない業界になる。タクシーもある程度同じことが言えるのではないか。タクシー需要が減り続けるのは仕方がない。ただ、その中で、タクシー経営者として、生き残っていく会社になるかどうかを考えなければならないと思っている。自動車学校は、タクシーと違い、料金を決められるところだ。(同業他社)自らが経営を諦めて撤退してもらうことを考えている。

コロナで地方の合宿制の教習所が受け入れをしなくなった。コロナで電車やバスが危ないから、免許を取得しようという動きが出てきている。たいへんな活況だ。どんな環境でもやるべきことをやっていれば、世間ではマイナスになっていることをプラスに転化することができるのではないか。

暮部 平成6年に父の会社に入り、26年目になる。北摂は運転者の確保は他社よりもましではないかと思っているが、4月は前年同月比でかなり売上げが落ちたが、その後は順調に推移している。(キタやミナミなど)夜の町に出て行かず、豊中で飲むお客さんが増えた。

池田もダイハツの町なので落ち込んではいない。年明けになり、ワクチンができれば大丈夫ではないかと思っている。ただ、数年後は分からないが、インバウンドを中心に営業していたところはしんどいのではないか。ここを堪え忍んで、雇用調整助成金の活用で、各営業所で時短や出勤調整でバランスを取りながら考えていきたい。

坂本 タミフル的な薬ができればいいのだろうが、世の中、おかしくなってバランスが崩れて、官公庁のオークションを見ていると、青森空港の格納庫が1600万円ぐらいで売りに出ている。これはどう見てもアカンという考えの表れなんだろう。もし、元通りになるのなら、この格納庫もかつては2、3億円はしただろう。投資家は誰も買わず、とうとうオークションに出てしまっている。

京都の話にもあったように、売上げが10分の1になったら、タクシー車両数も10分の1になるのかという問題でもある。集団で事業を守っていくのか、死んでいくのを見守るのか、どうしても通らなければならない道だと思っている。

藤原 お客さんに料金を支払っていただく仕事なので、経済も所得がないと乗ってもらえない。現状では、輸送量が減っていくということになると、タクシー車両も減らさないといけないだろうし、運賃もこのままではいけないということは明らかだと思う。

山根 このままで行けば、タクシーは消滅するのではないかと思っている。白タクが今後は出てくるのではないか。タクシー業界が自分たちの都合で考えているような気がする。本当にお客さんの求めていることや国が求めていることに対し、反対運動は一生懸命しているが、それに対する打開策の議論が生み出されていないような気がする。このまま手を拱いているだけでは、タクシーは消滅してしまうのではないかと思っている。それくらい自家用車は走り回っている。

これだけ夜は暇だと言っても、白タクはたくさん走っている。ホステスの送りは白タクがやっている。本来ならタクシーがやらなければならない仕事だが、逆に白タクだからこそやれている点もあると思う。そこを見ていかないと本来のタクシーの仕事が奪われていくと思う。我われは旅客輸送ではノウハウがあるので、タクシーが白になったときのことをかんがえながらやっていかなければならないのではないか。

配車アプリにしても、2年前までは、ここまで広がるとは思っていなかったものが広がっている。その中で、タクシーを守るためには何をしなければならないかを、もっと考えていかなければならない。

薬師寺 私は、企業内個人タクシーのような形で行くべきではないかと思っている。1両を2人ぐらいに責任を持たせて、これは今までとは考えが違ってくるが、そのような形しかないのかな、とは思っている。

古知 企業内個人タクシーは戦前の多田淸氏の相互タクシーで良く知られている。この形態が大阪を席巻した時代もある。1人1車制だったが、それほど、とんでもない話でもない。償却制の会社は、それを下敷きにして1車2人制にしたりしているのが現状だ。

薬師寺 なんだかんだ言っても、タクシー屋なんだから、タクシーで経営ができるような方向にしていかなければならないが、なかなか経営が難しいのではないか。大阪の200社のうち、何社が動いているか。僅かな会社しかない。そんな歪な状況を協会として、そのままにしている。悪い言葉で言えば、野垂れ死にの方向に我われは向かっている。

だから、動かない車両は早くナンバーを返してしっかりした経営をしないといけない。贅肉を取ることから始めなければならない。他の産業の経営者はやっている。バサッとやめるところもある。我われの業界では、卵を産まない鶏を飼っていても仕方がない。しっかりと自分の足下を見て頑張らないといけないと思う

写真:上=薬師寺薫・関西中央グループ代表、下=懇談する在阪7人の事業者。正面中央で立って話す薬師寺氏