大阪市、来年2月以降、民間社会実験
路線バスの代わりにAIオンデマンド交通
バスだけでなく、タクシーにも呼びかけ
2020年8月21日付・第492/197号
【大阪】大阪タクシー協会は8月12日の経営委員会で、大阪市が3日から募集しているAIデマンド交通の社会実験に関する民間からの事業提案への応募について周知を図った。募集期間は8月31日まで。
9月に応募事業者からのヒアリングを行い、下旬に事業提案を公表、10月上旬から11月上旬に事業者意見の照会を予定している。11月中旬に地域公共交通会議の開催を告知、12月に仮称・大阪市地域公共交通会議を開催し、協議が整い次第、民間事業者による社会実験を行うとしている。松井一郎市長は「事業として成立するか検証したい」と意気込んでいる。
これに対し、日本城タクシーは、ゴルフ場などの移動に使われている電動カートによるグリーンスローモビリティによるAIデマンド交通を提案すると表明した。
京都府舞鶴市では、オムロンソーシアルソリューションズ、日本交通(大阪市)とともに、オムロンが開発したMaaSアプリ「meemo」を活用し、移動したい人と送迎可能な人をマッチングさせる仕組みを導入、全国初の試みとして、既存の公共交通と住民同士の送迎を組み合わせた最適な移動手段や経路情報を提供する実証実験を7月~9月にかけて実施している。
「おでかけ交通」として乗合タクシーを全国展開する第一交通産業グループは、福岡市、北九州市をはじめ、全国主要都市で地元鉄道会社などと協力のもと、MaaS取組の準備を進めている。これらMaaSに積極的に取り組む大手事業者が、今回の社会実験にどう絡んでくるかも注目したいところだ。
松井市長は「利用客が多くないために1時間1本程度のバスで市民の足を確保しているエリアがある。また、路線バスでは短距離にも関わらず何度も乗り換えしないといけないことも。利用者が発着場所を決められるオンデマンド交通があれば便利」と期待を寄せる。
大阪府と大阪市は3月31日、「大阪スマートシティ戦略Ver1.0~eーOSAKAをめざして~」を策定した。時期的には4月以降に新型コロナウィルス感染拡大を受け、政府は全国に緊急事態宣言を発令し、外出自粛や飲食店の営業縮小、それ以前から始まった学校休校要請などとともに、ソーシアルディスタンスや三密回避が呼びかけられ、新しい生活様式の定着が図られる以前の策定ということを考慮しなければならない。
この「大阪スマートシティ戦略Ver1.0」では、AIデマンド交通の導入という項目で、いわゆるオールドタウンが多く存在する中、高齢化が進む一方、坂道がある地域が多く、移動困難者が出るだろうという予想のもと、「より一層ラストワンマイル問題対策が求められている」としている。これら問題の解決のため、「配車等にAIシステムを活用することで、交通事業者の人手不足問題の解消や、移動の更なる効率化を実現する形で、導入していく。
大阪市は、府下市町村に対し、技術やノウハウを有する企業とのマッチング支援や関係機関との調整や申請に関する相談等を行い、まずは条件の整った市町村にてAIデマンド交通の導入を進め、これを先行モデルとし、その後、横展開で取組を拡大していく。また、自動運転については、Osaka Metroグループが実証実験を行うなどの動きもある。
今後、万博を見据えた取組や、地域におけるAIデマンド交通をベースにした取組をもとに、技術開発や法整備の状況を踏まえつつ、2025年に向けて、全国に先駆けてレベル4の自動運転の社会実験に取り組む」などとしている。
AIデマンド交通の社会実験に関する民間事業提案の募集要項では、「持続可能な公共交通ネットワークを維持するとともに、さらなる移動サービスの向上をめざし、スマートモビリティのような新たな交通モードによってきめ細かい移動サービスを検討したい」「AIデマンド交通の検討を進めるとともに、最先端の技術やアイデアを活用するため、民間事業者による社会実験に取り組む」「デマンド交通を乗合事業とする場合については、道路運送法の定めにより地方公共団体の長が主催する『地域公共交通会議』で協議が調う必要があり、今回の民間事業者によるAIデマンド交通の社会実験であっても、大阪市長が主催するこの『地域公共交通会議』での協議を必要」とするとして、「AIデマンド交通の実現可能性や事業者ニーズを把握する」ことを目的にしている。
大阪市が求める提案の着眼点について、提案する対象区域で①ICT技術等の新技術によっる地域課題の解消につながるもの②地域住民及び公共交通利用者のニーズ及び利用状況を反映した実施地域設定しているもの③クリームスキミング的な運用をすることなく既存の公共交通ネットワークと連携・調和されたもの――等で、これらと趣旨が異なる提案につじては、受理しないことがあるとしている。
こうしたハードルの高さから、「公募開始から1カ月もない期間に地域の了解を取り付けろなど、どだい無理な注文だ。関連企業などから事実上の内定企業があり、『アリバイ的に』社会実験参画事業者を公募したのでは」との憶測を呼んでいる。
写真:上=梅田の第三ビルから南のビル群を臨む/下=JR大阪駅ビル