コロナ禍で高齢運転者が減少 補う方法?
サブジョブドライバーの発想で生産性向上
システムオリジン前社長の清野氏に聞く

2020年8月1日付・ 第494/199号

【大阪】新型コロナウィルス感染症の拡大は、国内でも続いている。3月下旬に安倍首相の判断で休校措置が取られ、4月初旬、緊急事態宣言が発令されて外出自粛が始まった。政府肝いりで取り組んできたインバウンドもほぼゼロになった。全国民的な協力が奏功、6月に全地域で緊急事態宣言が解除され、経済も正常化すると期待された。

しかし、7月下旬、観光事業等、経済回復政策の目玉として前だおしで実施されたGoToトラベルキャンペーンは、今のところ利用者、取り扱い観光業者等との歯車がかみ合っていないと言える。それどころか、第2波とも言える感染者数の増大が続いている。こうした中、沖縄は独自の緊急事態宣言を発出、東京は一部飲食店の営業時間短縮を要請、大阪はミナミの飲食店に2週間の営業自粛を要請した。生活様式の変化への対応が叫ばれ、ウイズ・コロナが合い言葉になっているが、公共交通機関のタクシーはどう対応したらいいのか。

高齢運転者は家族の要請もあり続々と退職、正規運転者も感染を恐れながら出勤している状況下、コロナ以前から稼働率が低下、総営収は全平均で前年比5~6割程度(6月度実績)。そこから少しでも脱出できそうな具体的な提言はないのか。

本紙は大阪市内で7月29日、タクシー専業のソフトハウス、株式会社システムオリジンの創業者の一人で1982~2016年に代表取締役社長を務め、現・株式会社クリアフィールド取締役の清野吉光氏にお話を伺った。清野氏は9月30日まで契約社員としてDiDiモビリティジャパンの営業を担当している。発言概要は次の通り。

実働時間率

タクシー産業の生産性を上げるためには、何が必要なのか。3つの要素が生産性に大きく影響している。一つは、実働時間率。極端に言うと、タクシーは24時間稼働できる。その24時間のうち、何時間稼働できるのか、というのが、タクシーの生産性に大きく影響する。それにいちばん大きく影響するのが、運転者の供給。これを増やしていくにはどうしたらいいのか、というのが、大きなポイントだ。

サブジョブドライバー

今、サブジョブドライバーのプラットフォームをつくろうとしている。つまり、本業は他にあって、副業としてタクシーに乗るような人たちを、構造的にタクシー業界に呼び込む仕組みをつくりたい。今後、生産年齢人口が減っていく。人手不足というのは、タクシーに限らず、日本全体の構造的な問題になっている。そうした中、タクシー運転者を本業として人材をタクシー業界に呼び込むのは必要だろうが、なかなか難しい。そこで、むしろ副業としてタクシー運転者を呼び込む仕組みをつくる。これが、サブジョブドライバーのプラットフォームの構造だ。しかし、そのためには、いくつかの障害がある。それをどう突破するのかが、一つのテーマだ。

しかし、サブジョブドライバーというのは、一種の副業になるので、教育やホスピタリティーのレベルが低い。一定の規模のタクシー会社からは、そうしたトレーナーは自前で雇用したり、アウトソーシングできるので、そうしたものは必要ないと言われているが、一方で、そうしたことができない会社も多数ある。低い実働率を、何とか上昇させたいというニーズもある。また、サブジョブドライバーの候補者には、いろいろな層の人がいると思っている。集める方法にもよるが、レベルの高いサブジョブドライバーはいるのではないかと思っている。

例えば、ホスピタリティーの高さで言えば、ホテルの従業員などだ。そのような人たちが、空いている時間にスポットで乗務することも可能となる。副業運転者とは言っても多種多様で、そうした人たちを各タクシー会社にうまくむすびつける仕組みをつくりたい。その仕組みをつくるには、現状ではいろいろな課題があるので、どう克服していくかが、一つ目のテーマだ。

実車時間率

二番目が、実車時間率だ。タクシーを稼働させながら、どう実車時間を延ばすか。そのためには、いくつかのポイントがある。一つは、需要を増やすことだ。その場合でも運賃の問題が大きい。運賃については、ダイナミック運賃、あるいはサブスクリプションモデルを実現していく必要がある。今は、流し営業の場合は、ある意味でいきあたりばったりだが、それを配車アプリで需要と供給のマッチング効率を高める。

今は需要予測に基づき、効率的な流し営業が可能なエリアを提示することが可能になったが、配車アプリの比率がすべてを合わせても4%ぐらいでは、とても効率が上がるところまではいかない。その4%の市場でバラバラに配車している。これでは効率は良くならない。難しいが、早く7、8割の配車率まで引き上げて、横の連携がとれるようなところを目指すべきではないだろうか。

地域全体の需要予測

需要予測という点からは、今のような、どっちを向いて走ったらいいか、ということだけではなく、AIの時代と言われる以上、向こう一週間、あるいは1カ月の需要を予測する。難しいが、そういう時代になってきている。需要予測を立て、それに応じた供給計画を立てる。今は、配車の当番表を機械的に回しているだけで、ほとんど意識的にコントロールされていない。

なので、運転者の個人的な勘でやっているところがある。それを地域全体の需要予測と供給計画ということを実現していかなければならないのではないか。地域の実情によって、ずいぶん違うが、協同配車、配車アプリを使っていてもいいが、地域全体のしかけや仕組みをつくる必要があるのではないか。

タクシー産業の生産性向上

三番目が、生産性の向上だ。それには一般管理費をどう下げるか、という課題がある。それを解決するのはアウトソーシングの活用だと思っている。その一つは配車だ。個々の事業者は、ひじょうに多くのコストをかけて配車管理をやっている。それをアウトソーシングする。大都市の場合は難しいかもしれないが、地方の中核都市や県庁所在地など、一定規模の都市部では、全部がそうではないかもしれないが、かなりの割合で共同配車センターがある。

これも組合形式にすると人件費等、結構、たいへんなので、外部に配車会社をつくり、そこと一元的に契約を行い、1カ月あたり、配車1回あたり何円などと設定して標準化、安くしていく。それによって配車コストや事務処理コスト等を減らす。このようなことをすると、固定費が下がり、1両あたりの生産性が向上し、結果的に運転者の時間単位の賃金が上昇する。タクシー会社にも、利用者にも恩恵が受けられる。

※清野氏はサブジョブドライバーのプラットフォームの実証実験をすべく、私財をなげうって小規模タクシー会社買収する意向を示している

写真:今年2月18日、沖縄県ハイヤー・タクシー協会が那覇市の「ハーバービューホテル」で開いた新春講演会で講師に招かれた清野吉光氏。講演テーマは「~総合生活産業の核としてのタクシー産業の蘇生のために~タクシービジネスの抜本的転換」だった