「全タク副会長は田中氏しかいない」
福タ協幹部合同会議
九乗協退会と会長辞任を了承

2020年7月21日付・第493/198号

【福岡】(一社)福岡県タクシー協会(中井眞紀会長)は7月17日、福岡市博多区の「八仙閣」で、正副会長・専門委員長合同会議を開いた。6月26日の九乗協みなし総会で退会、田中亮一郎・名誉会長が九乗協会長を辞任した。当日の福タ協幹部会合で、中井会長と田中名誉会長は、退会の理由と経緯について次のように報告、県協会の総意であることを、あらためて確認した。

中井眞紀・福タ協会長(清流タクシー社長)は「九州乗用自動車協会は各県協会間の親睦を図る任意団体だ。以前は運賃問題などの課題があったが、今は、そのようなことは取り扱っていない。かつて、九乗協の会長は福岡県が務めていた。本来なら、前々会長には福岡の野上氏が就任する予定だったが、体調を壊したため、長崎の会長を務めていた故・川添一巳氏から『1期だけ会長をやらせてほしい』という要請があり、川添氏が会長に就任した。そうした経緯があったが、結局、川添氏は九乗協会長を11年務めた。

その後、田中氏が福タ協会長となり、九乗協会長に就任するが、その間、福岡外しが見えるようになってきた。とにかく『福岡はわがままだ』とされ、『福岡以外から会長が出てもいいではないか。しかし、事務局は福岡が務めてほしい』という理不尽な要請があった。この10年、2年ごとの会長改選時には、そのようなことでいつも揉めていた。長崎の九乗協通常総会のときも揉めた。九乗協では、理事に権限がなく、各県協会長が務める常任理事により、すべてが決められるようになっている。

これに対し、『それはおかしい。理事会で決めるべきだ』と是正を求めたが、受け入れられなかった。田中氏が全タク連の地域交通委員長になり、全国を回って適切に対応しているのを見てきた。その活躍ぶりを見て、福岡県として田中氏に九乗協会長になっていただくしかないと、各支部(福岡、北九州、筑豊、筑後)の会長とともに会長を推薦してきた。2年前、私が県会長になり、田中氏に名誉会長になっていただき、田中氏を九乗協会長と全タク連副会長に推薦した。その際、他県から『県の会長ではない人が九乗協の会長になるのはおかしい』という批判が出た。

しかし、九乗協の定款では、会長は県の代表であればいいことになっている。私が福岡市の会長を務めていたときにも、そのようなことなら、九乗協を脱退してもいいという考えはもっていた。各県協会長と話すと、『事務局は福岡に残し、会長は他県の人に』というような話しか出てこなかったので、これでは一緒にやっていけないと思った。このままではいけないという思いで、田中氏とともに、当時の富田昌孝・全タク連会長(現・名誉会長、東京・日の丸交通会長)に『福岡に一つ、副会長のポストを下さい』とお願いをした。その件で3回、富田会長、三浦副会長にお願いをした結果、了解は取り付けたものの、『一般社団法人になってからキチンとする』という回答になっていた。

当時の理事長は各務正人氏(現・中部国際空港代表取締役副社長)だったが、彼が『九乗協の副会長枠は2つだ。誰にするかは九乗協で決めてほしい』ということを言ってきたので、おかしな話になった。とにかく『福岡が言うことは理不尽だ』と全部蹴られてしまう。しかし、実際には、佐賀県はバス会社の金子晴信・昭和自動車社長が県バス・タクシー協会の会長だが、多忙のたため、タクシー関係は副会長の齊藤恭宏・鳥栖構内タクシー社長が代行している。このケースは以前からの慣例だが、一方で、福岡は認めないということだった。今、田中氏は全タク連副会長および地域交通委員長を務めており、その任期が来年の通常総会まであるが、一部の県は、その次の会長は福岡に芽がないという根回しを行っている。

6月22日の全タク連通常総会終了後、川鍋一朗会長と神谷俊広理事長に『福岡は九乗協から脱退する』と伝えた。これは福岡県の総意と理解してもらうため、私(福岡県)、田中氏(北九州)、中川恵司・筑後地区タクシー協会会長、安川哲史・福岡市タクシー協会会長、嘉久礼子・筑豊地区タクシー協会会長が同席した。これに対し、すぐに返事はなく、『困った』と言うだけだった。その後の26日、福岡で開かれた九乗協みなし総会で、田中会長は辞任と福岡脱退を表明した。7月3日の九乗協常任理事会で、新会長の羽仁氏は『九乗協の新しい形をつくる』と言ったようだが、福岡は九乗協を脱退し、全タク連単独加盟という形になる。

先日、この件について、ある業界紙にめちゃくちゃなことが書いてあった。『田中氏が九乗協を引っかき回し、それに奥野藤雄・専務理事がついていっている』というような内容の記事だったが、それは全く違う。田中氏を九乗協と全タク連の会長に推薦したのは我われ福岡県だ。そこには田中氏の私的意見は入っていない。一方、九乗協通常総会・事業者大会の資料は、福岡で行っている会議の資料と同じ内容で、ただ、懇親の場を持つだけ。全タク連会長が講演するということもあるが、『もう、そのようなことは必要ないのではいか』という意見があり、各支部の会長に相談して決まったことだ」と説明した。

田中亮一郎・名誉会長(副会長兼任、第一交通産業社長)は「これまで8年間、九乗協の会長をさせていただいた。いろいろあったが、すべて条件付きだったような気がする。例えば、2年前、福タ協名誉会長で九乗協会長を継続したときも、『一筆書いたら九乗協の会長をやらせてやる』というようなことがあった。冗談ではない、ということだった。

『今、このような時期だから、自分たちが東京に行けないから、田中さんに言ってほしい』とも言われたことがあるが、このようなことでずっとやってきたような感じだ。九乗協の常任理事会は、年に3回ぐらいしかないが、その会合で、『九州のタクシーのあり方を、ちゃんと考えよう』という提案はしてきた。年に1回だけ、各県に順番に集まり、懇親会を行うのはいいが、年々、来る人たちも減少してきて、主催者側も、『次はうちにこなければいいが…』というようでは、あまり意味がない。

『今こそ各委員会が動き、九州モードのようなものをキチンとつくるべきだ』と、数少ない常任理事会で毎回主張してきたが、すべて無視されてきた。福岡を九乗協の会長、全タク連の副会長にさせないため、いろいろと腐心をしている県もあり、それだったら意味がない。実は、九乗協の会長を辞めるということは、前回の改選のときにも言っている。九州の副会長枠は2つに増えたが、この枠は中井氏と私がいただいてきたもので、九州からの副会長は福岡で1つ、その他の九州で1つだ。福岡に副会長枠を1ついただけけるなら、九乗協会長は皆さんで回してもらってもかまわないと伝えた。

これに対し、『理事会は車両割で理事が決まるので、福岡の人数が圧倒的に多い。理事会で決議すると、福岡の主張が通るに決まっているから決をとらせない』とハッキリと言われた。これでは意味がないので、再度やり直そうと、常任理事会で幾度となく主張した。それが聞き流されたかどうかは分からないが、今回は、まず『九乗協の会長を辞める』と表明した。会長を辞めるにあたり、『九乗協のあり方について、このようにしたかったが、それができなくなった。私の力不足なので、会長を辞めさせていただく』と発言した上で、『福岡県は独自の道を歩んでいくので、よろしくお願いします』と話した。

この発言に対し、新たに副会長になった他の県会長からは、『福岡県がなかったら、九乗協は成り立たないのではないか』との考えを示している。私が『今は、コロナ禍で人が集まれないし、会費を払うのもたいへんだから、何か問題があったときに皆が実費で集まり、その都度協議したらどうか。本当に懇親会をやりたいのだったら、懇親だけの会を開いてもいいのではないか』と提案したら、『それでいい』という県が2、3県あった。一方、そうではない県も2、3県あり、中には『今までのやり方で、何が悪いのか』と主張する県もある。さらに『福岡は自分のところのことばかり考えて、他県のことは考えていない』と言うので、『そういうわけではないが、どこまで行っても平行線なので、懇親会や親睦会の会には、福岡はいても意味がない。すでに県の会議で決めたことでもあるし、福岡は独自の道を行かていただく』と伝えた。

鹿児島の羽仁氏は全タク連の副会長でもある。その羽仁氏が『皆が公平な形で会費を集め、何でも話ができるようなフラットな組織をつくりたい』と発言したので、その組織ができたときに、皆さんが『福岡も戻ってきたらどうか』という話なら戻ってもいい。ただ、今のように、条件付で2年任期の会長を決めて、やっても意味がない選挙を(形式的に)やるのなら、他県も多少は負担しているが、『どの県から会長が出ても福岡が事務局をやってくれという会ならもういい。福岡は新しい道を行かせていただく』という話をした。

私は全タク連の副会長を8年務めているが、地域交通委員長も兼ねている。だが、地域交通委員長を外れたとき、福岡として何の役員も出していないというのはおかしい。福岡は全国で5番目(平成30年3月)に会員車両数が多い大規模組織なのに、全タク連が恒久的に扱わないというのはおかしいと思う。例えば、近畿は大阪+2が副会長の定数になっている。九乗協の中で2つある副会長枠を取るか、取らないかということよりも、この問題を全タク連としてハッキリしていただきたい。福岡から出た会長がこのような思いをするのは、私限りにしたい。

5月の九乗協の会合で、『2年前に言ったはずだ。全タク連の副会長は福岡+1だと。それで皆さんが、それでいいということなら、福岡はこの組織にいると思う』と言った。ところが、6月26日の九乗協みなし総会でそれを言っても、何の返事もなかった。それどころか、多数決で優位に立つため、沖縄県まで九乗協に入れようとしている。しかし、それは違う。そのような状況で、会費を最も多く治め、事務局まで福岡がやっているとなると、どこまでお人好しなのか、ということになる。26日のみなし総会では『どこかまっとうな県が出てきて、何かあったら話し合おう、どこがイニシアチブを取るでもなく、九州として意見をまとめていこうということになるのなら、いくらでも復帰する。だが、どこかの県協会長の仲間に入り、この会長に従わないなら仲間に入れさせないというなら、福岡は入る必要はない、というイメージで、このような形にさせていただいた』と発言をして引き上げた。

前回もそうだったが、現会長には役員改選の投票権がないと勝手に決められてしまったからだ。それに、脱退すると表明した人が残って意見を言うのもおかしい。残った人たちで決めてほしいと。それを受けて行われたのが、7月3日の常任理事会だった。そこでは、喧々諤々の論議になったらしいが、とりあえず、鹿児島県タクシー協会の羽仁正次郎会長が『九乗協会長を引き受けて、福岡が復帰できるよう、組織を変更したい』と言われたので、その結果を待っているという状況だ。『福岡に辞めてもらったら困る』と言う人は、何人かいたが、『辞めればいい』という人の声が大きかったので、このような結果になった。

ただ、今のコロナ禍や豪雨災害などがある時期に組織にゴタゴタが起こるのは、最悪のタイミングかもしれないが、福岡県内はまとまっていて、何かあったときには、それぞれの地域を助けに行くというスタンスで行けば、大丈夫だと思っている。今の福岡の役員がいなくなっても、全タク連副会長の枠を福岡に絶対に残してもらわないと納得できない。それが第一義的にある。それを、全タク連がどう判断するのか、ということもあるが、今はたまたま全タク連の役員任期と九乗協の任期が1年ずれている。全タク連は次の役員任期満了になるまでに結論を出すと言っているので、どのような結論になるのかを待っているところだ。

たいへんなときに皆さんに迷惑をかけることになるかもしれないが、私が全タク連副会長としていろいろなことをやり、県の要望を吸い上げながら、全タク連正副会長会議で、他の副会長らが発言しない中、地域の問題について発言しているということは、出席者に分かっていただいていると思うし、福岡の皆さんにも分かっていただいていると思う。その意味で、九州の会長としてやらなければならないことはやってきたつもりだ。全タク連の地域交通委員長と言えば、全国を見られる役職なので、残りの1年、皆さんの意見を全タク連に発信していきたい。

皆さんの地域にも、他県と接しているところがあると思うが、業者同士の仲が悪くなったわけではないので、会社同士の仲はこれまで通り、キッチリと守っていってほしい。このようなことになり、たいへん申し訳ない。この8年で議決権がある組織になっていれば、もっとちゃんとできたとは思うが、多数決もしたらいけないという協会では、声の大きいところに固まってしまう。このような、ふがいのない結果になってしまったが、その辺のところはご理解いただきたい」と九乗協会長辞任と福岡県タクシー協会脱退に至る経緯を語った。

中井会長は「我われは、全タク連副会長および地域交通委員長、九州の会長になれる人は誰なのかと、いろいろと協議をした結果、田中さんしかいない。人脈も我われとは違う。そのようなことで、この間、推薦してきた。何も、第一交通産業に偏ったとか、そのようなことは一切ない。誤解のないようにお願いしたい」と釘をさした。

労務委員長に就任した貞包健一氏(三ヶ森タクシー社長)は「前から言われていたことで、当然の流れではないかと思う」との見方を表明した。

安川哲史・福岡市タクシー協会会長(安川タクシー社長)は会合当日は欠席したが後日、本紙の取材に「我われは、協会全会一致で田中氏を全タク連の副会長にしてほしいと要請してきた。今のようなコロナ禍のときに、全国的な視野で考えられるのは、田中氏しかいない」と話した。

写真:7月上旬の博多駅タクシー乗り場