福岡タク協会、九乗協退会 あり方に疑義総意で
九乗協会長、田中氏の後任に鹿児島の羽仁氏
役員任期を全タク連に合わせ来年総会まで延長
車両数全国5位の福岡、全タク連副会長枠恒久化は長年の悲願

2020年7月21日付・第493/198号

福岡県タクシー協会・正副会長・専門委員長合同会議(2020.7.17福岡市博多区の八仙閣)

【福岡】(一社)福岡県タクシー協会(中井眞紀会長)は7月17日、福岡市博多区の「八仙閣」で、正副会長・専門委員長合同会議を開いた。福タ協が6月26日、福岡市内で開かれた任意団体の九州乗用自動車協会みなし総会で退会に至った経緯を報告し、了承された。退会は福タ協の総意であることを確認した。今後、福タ協は九乗協を通さず、単独で全タク連に加盟する。同時に、福タ協名誉会長の田中亮一郎氏が九乗協会長を辞任したことが報告された。来年6月で任期満了を迎える全タク連副会長の残任期間を務める。

田中氏は、全国34都道府県に事業所を置く第一交通産業グループの社長としても地域交通の維持発展に寄与してきた。こうした功績から福岡のみならず、全国会員事業者からの田中氏への期待は大きい。さらに、財界、政界、行政とも太いパイプがあることから、その手腕は業界外にも広く知れ渡る。その発言の多さや温厚な人柄からも、全タク連になくてはならない人材であることは衆目の一致するところだ。

何故、このような事態になったのか。背景には、九州には2つの全タク連副会長枠があるが、合理的理由で1つを福岡に固定してほしいとする要望に対し、それを認めない一部有力県という構図が見え隠れする。九乗協は7月3日の常任理事会で鹿児島県タクシー協会会長の羽仁正次郎氏を新会長に選任、田中氏の残任期間を務めることが了承された。羽仁会長は就任あいさつで「福岡が戻ってこらるような組織改編に着手する」意向を表明した。従来のような親睦会に終わらせず、現下の情勢を踏まえ、九州のタクシーのあり方やビジョンなど、生き残りをかけた業界の方向性について自由闊達な議論ができる組織に変えられるかが、福岡復帰のカギとなっている。

一方で、福岡は富田昌孝・前会長時代から、幾度となく全タク連を訪問し、副会長ポストを固定するよう要請してきた。7月6日の全タク連正副会長終了後、羽仁、田中両副会長に漢二美・ケア輸送委員長(九乗協副会長、大分タ協会長)が立ち会う形で、川鍋一朗会長と神谷俊広理事長にこの間の経緯を報告。福岡から、これまでに「九州の副会長2枠のうち1つは福岡に固定してほしい」という要望を数回受けていることが確認された。

さらに、富田前会長時代からの悲願だったことについて、全タク連が当時の三浦宏喜副会長に問い合わせると、「田中、中井の両氏(現・福タ協会長)から、福岡に副会長枠を固定することをお願いしたいという要請があった」との証言があった。しかし、富田前会長は体調を崩して九乗協事業者大会を欠席、回答は公表されずにいる。

福岡に副会長枠を固定するには「九州運輸局管内から副会長2人」とする副会長選出基準を変更する必要があるとされるが、現在、当の全タク連トップは「困った」と頭を抱えるのみだという。地方の要請を事実上放置してきた格好の新旧トップだが、副会長選出基準の変更などの調整は、果たして来年の役員任期満了までに間に合うのか。長引くコロナ禍への対応に加え、全タク連にも新たな宿題が生まれたと言えそうだ。

写真:福岡県タクシー協会・正副会長・専門委員長合同会議(2020.7.17福岡市博多区の八仙閣)