全タク連が緊急全国協会長会議
一見局長 切実な声に明確な処分時期示さず
業界の「年内実施」に対し「現時点において、なるべく早く」
2019年9月21日付・第469/174号
【東京】全タク連(川鍋一朗会長)は9月20日、東京都千代田区の「自動車会館」で、緊急全国協会長会議・経営委員会合同会議を開いた。国交省が10月1日の消費増税に伴う運賃改定と同時に実施する予定で全国48運賃ブロックから提出されていた本運賃改定申請の継続審査を8月30日に決めたことで、用意された大会議室は文字通り北海道から沖縄まで、当該地域の協会長をはじめ全国の協会幹部ら100人余りで埋め尽くされた。
来賓席に座った一見勝之・国交省自動車局長、早船文久・同旅客課長に対しては、裏切り者に対する感情に似た怒りの声もあったが、主に延期による経営への影響など窮状が訴えられた。最大の関心は本運賃改定の実施時期だったが、今回の緊急会議では異口同音に「年内実施」を強く迫る各協会長らの切実な訴えむなしく、一見局長ら国交省幹部は明確な回答をしないまま席をあとにした。
冒頭、川鍋会長は「今日ばかりは、皆さんにどう説明していいだろうと、朝から悩み、話し始めた今も、事態を的確に説明し、ご理解いただくという内容は、残念ながらない。全国48地域で、いちばん長いところで24年ぶりもの長い間、包括原価方式の中で据え置かれ、それに対して、毎年、日増しに高まる安全安心、アプリや決済器などの設備、車両といったものに対する投資も進め、当然、その中で運転者の賃金も確保し、全国の皆様が努力を続ける中で、ようやく運賃改定の機運が整った。多くの地域では、これまで何度も何度も整っては、7割に到達しなかったものを、何とか各地でまとめていただき、いろいろな声があったと思う。消費増税の前に実施すべきという話もあっただろう。一方、メーター改造もしなければならないので、ここは同時でいいのではないか、あるいは、その後でいいのではないか。初乗り短縮をするのかなど、いろいろな意見がある中、協会でまとめていただき、地方運輸局の皆様と意見調整をしていただいた。法律にのっとり、最後の最後まで進められてきたという事実に対して、このような結果は痛恨の念に堪えない。個人的には、これが法治国家がすることか、こんなことが起こるのか、という思いで、本当に晴天の霹靂だ。この怒りの矛先を、どこに向けたらいいのか。もちろん、我われの監督官庁である国交省の皆さん、地方運輸局の皆さんということに形の上ではなるのかもしれないが、本運賃改定の実施を前後にずらしたらいいという意見もあったのだろうが、メーター改造もあるので、消費増税改定と一緒に実施した方がいいという、我われの事業の実情を理解した上での判断も地方運輸局にはあっただろう。お互い、108年にわたる長い歴史の中で、一緒に築いてきた関係性の中で、やってきたので、必ずしも、国交省の皆さんを批判することで埋まるのかな、という気もする。このように、戸惑っている次第だ。しかし、その中でありがたいのは、今日も一見局長と早船課長が事態の収束目指し、まずは正副会長会議に来ていただいた。私は、もしかしたら、なにがしかの公務で来られないのではないかという、穿った見方をしていたが、実際に来られ、我われの意を受け取っていただいた。今日も来ていただいたことには、敬服の思い出いっぱいだ。皆さんとともに、皆さんのこれまでの努力、今の整理のつかない気持ちを直接、局長と課長に聞いていただき、10月1日の同時実施は難しいということは仕方のないことととらえ、全員で団結して、どうやったら延期とされている運賃改定を、1日も早く実施できるのか、ということに対し、一生懸命議論し、行動していきたい」と述べた。
一見局長は「実質改定については、引き続き、審査を続けるということなので、一日も早い改定に向け、努力をしたい。8月30日に連絡させていただいたが、急な連絡だったということで、皆さんに混乱が生じたことには、私もひじょうに心苦しく思っている。また、私自身の力不足があったことにもお詫びを申し上げたい」などと述べた。
今井一彦・北海道ハイヤー協会会長(全タク連副会長、東邦交通)は「先ほど、一見局長が一日も早く実施したいというように言われていた。ぜひ、それを望んでいる。北海道は、札幌を含め8地区、全部で11の運賃ブロックから申請しており、8月30日に本運賃と合わせ、消費増税分を合わせて改定されるという方向について、北海道運輸局から聞いていた。8月30日に急遽、本運賃がダメになった。今回は消費増税分だけの改定になるということを言われた。最初にこのことを聞いたとき、何を言っているのか、理解ができなかった。特に北海道については、JR北海道が消費増税分と合わせ、普通運賃で15%強の値上げが物価閣僚会議でちゃんと説明をし、認可をもらっている。170円区間が200円になる。今回、タクシーの運賃が消費増税の影響を見るということを言われているが、どう考えても、北海道で、JR北海道の値上げとタクシーの値上げと、どちらが影響が大きいのか、ということになると、当然、JR北海道の値上げの方が、影響が大きい。私が理解できないのは、JR北海道の値上げが良くて、どうしてタクシーの値上げがダメなのか。いまだに、それに対し、キチンと納得がいく説明がなされていない。今日、それを答えてほしいというわけではないが、このことに関しては、まったく理解ができない。札幌は12年ぶりの運賃改定で、札幌以外の中堅都市で、旭川や帯広など、いろいろあるが、そうしたところは22年ぶりの運賃改定だ。ようやく各地の会長がご苦労され、7割以上の運賃改定申請を揃え、昔は消費税改定時には運賃改定は難しいということを聞いていたが、3、4年前に消費増税改定時と本運賃改定の同時実施というようなことを言われ、それに照準を合わせたというのが事実だ。道内では、最低賃金はどんどん上昇している。数年前に、最低賃金が支払えなくて廃業したタクシー会社がある。道内で、どんな現象が起きているかというと、最低賃金がどんどん上昇している。今年もまた、最低賃金は10月から上がる。それは一律で、他のいろいろなコストもかかってくる。地域の交通を、しっかりと守るためには、今、運賃の改定を実施していただかなければ、地域の交通が守れなくなる。これは北海道だけの問題ではないかもしれないが、北海道にとっては、たいへんな問題だと思っている。この問題は、道議会で自民党タクシー議連をつくっていただいたが、そこでも提起している。地方からタクシーがなくなるとたいへんなことだということで、道議会でいろいろなことを取り上げていただく予定だ。すでに10月1日の実施は難しいだろうから、最短で、公示は1日と15日と聞いている。理想から言うと、次の11月1日実施が最短になるが、いろいろな事情があろうかと思う。冬の期間と雪のない期間では、まったくタクシーの利用は違う。各事業所の皆さんは、冬期間に向け、本運賃改定を実施するということに、全力を傾けた。全事業者がその期待をした。札幌地区は特定地域に指定されている。ということは、地域の50%以上の事業者が赤字なので、このような事情の中、本運賃改定の実施に向け、大いに期待していた。1日も早く本運賃改定ができるよう、全力をあげてほしい」と述べた。
下山清司・青森県タクシー協会会長(北星交通)は、「当然、10月1日から本運賃改定も実施されると思っていたが、誠に遺憾だ。今回の申請は、そもそも、安倍内閣の一丁目一番地の働き方改革、毎年3%ずつ引き上げられてきた最低賃金に伴う、運転者の待遇改善が大きな目的だった。これに加え、各種の利便向上のための設備投資も、待ったなしの状況にある中、我われ東北地方の中小企業においては、その原資をどこに求めたらいいのだろうか。こうした有給休暇や最低賃金に対する原資は、我われ地方の中小企業は、運賃改定に求めるしかない。ここをわかっていただきたい。他の地域では、20数年、値上げしていない地域もあるやに聞いているが、青森県では2008年以降、11年間値上げはしていない。しかも、青森県は、雪の降る年末年始の12月と1月で、1年間の利益を確保している状況の中、10月から本運賃改定が実現されないとなると、はっきり言って、その年の決算は赤字になる。そうなると、銀行融資もストップされ、来年度、消費税確定分を支払うときには、倒産する事業者が続出することは言うまでもない。このままズルズル、半年も引き延ばされると、我われ地方の事業者は立ち行かなくなる。真面目に国の看板政策である働き方改革に取り組んだ事業者が、逆に廃業に追い込まれるという皮肉な結果になりかねない。再度言いたい。このままでは、我われ青森県の事業者は、廃業・倒産というのは、火を見るより明らかだ。新聞報道では、石井大臣も今月3日の定例会議で、事業者の声をよく聞くと言っている。そこで、一見局長に申し上げたい。今般、見送られた運賃改定を、できるかぎり早く実施していただきたい。遅くとも、今年12月には実施できるよう、お願いしたい。どうでしょうか。よろしくお願いします。メーター改造を2回しなければならないが、これに関しても財政支援をお願いたい。いずれにしても、12月に間に合うよう、よろしくお願いします」と述べた。
伊藤宏・神奈川県タクシー協会会長(全タク連副会長、神奈川都市交通)は「本日の午前中、関東ブロックで申請のあった地域の幹部とともに関東運輸局を訪問し、一日も早い本運賃改定の実施を求めてきたが、最後に今まで以上に、より利用者に対し、この申請がどのような形で利便につながるのか。その点だけはしっかりとPRしてほしいと言われた。業界としても、本運賃改定、初乗り短縮を組み込んだ運賃が、より一層、利用者に対して正確、確実、迅速、便利というタクシーの特性が遺憾なく発揮されるというPRに全力を尽くす所存なので、一日も早く認可をお願いしたい。一見局長には、今回の本運賃改定には理解していただけたと思うので、別の人の力が働いたのだと思うが、本省にとっては、絶大な権力かもしれないが、業界の実情を、しっかりと伝えていただきたい」と述べた。
滝川哲也・長野県タクシー協会会長(桜観光タクシー)は「北海道の今井氏も言われていたが、石川県の北陸鉄道の運賃が、タクシー運賃改定の先送りが決定した後に13・3%の改定率で認可されている。10月1日から実施される予定だ。今井氏とまったく同じ思いで、どこがどう違うのか、お聞かせいただければと思う。改定のすみやかな実施は当然だが、急ぐあまり、8月30日には公示されたであろう数字から下ぶれすることのないようお願いしたい。参考までに、新国交大臣の発言で、利用者の受け止め、経済的影響を考慮したというものがあった。長野県では、6月に利用者懇談会を開催しており、その中で、運賃について高い、安いに触れた意見は、ただの一件もなかった。いちばん印象に残っているのは、ある主婦が『私もいつか、自動車免許を返納しようと思っている。その際、タクシーを利用しようと思っているが、利用しようと思っているタクシー会社が、そのときに存在するのか、どうかが、とても心配だ』ということを言っていたことだ。前回の運賃改定は12年前だったが、平成19年4月、運賃改定を実施しているが、A地区約10%、B地区約9%の実施になった。その1か月後、日本銀行松本支店で、ある数字が発表されている。長野県内におけるタクシー運賃値上げに伴う家庭支出への影響は、0・022%程度という数字が発表されており、現実にその通りになっている。当時とは世情の違いはあるかもしれないが、特に地方においては、家計にはそれほど影響がないというのが実態だ。憂慮される事態にはならないと確信している。当県84万世帯に対し、発行部数が40数万部という地元新聞で、9月5日に社説が掲載された。業界紙でもなんでもなく、一般紙の社説だ。そのタイトルが『裁量逸脱のちゃぶ台返し』というもので、この社説のむすびで、『利用者にすれば、運賃は安いに越したことはない。だが、適正な値上げができなければ、事業をやめる会社がでかねない。地域の公共交通を維持する視点からも考えたい』としている。結果的に利用者利便を損なうということが、ここでも触れられている。多用中にもかかわらず、全国各地の協会長がかけつけている。本日、この場で何らかの明確で具体的な明るい道筋をお示しいただければ、たいへんありがたい」と述べた。
佐藤友紀・新潟県ハイヤー・タクシー協会会長(太陽交通)は「新潟ではB地区が今回、本運賃改定の見送りとなったが、タクシーは中小零細、本当に車両数の少ない事業者が多い。そのようなところがこの10数年間、値上げをしないが、最低賃金はどんどん上がる。そのような状況で事業者は激減していった。実際、家族経営のところも結構、ある。そのようなところは社長が無報酬でやっているというような状況だ。そうした中、運賃値上げは7割ルールがあり、皆の申請がないとできない。そこを耐え抜き、経営努力してここまで来ているので、今回の運賃改定に賭けていた事業者が結構、ある。その気持ちが、直前で踏みにじられたという受け止め方が強いと思う。いろいろな経営者と話すと、皆さん、『国が決めたことなのだから、しようがないよね』とは言うが、半面、その表情はひじょうに悲しい。もう、どうしようもない、これから、どうしていっていいかわからないという状況に見える。どうして、直前になって、このような方向転換になったか、ということを、しっかりと説明していただきたい。見送るのであれば、もう少し前に判断できたのではないかと思う。そこがすごく残念で、運輸局を信じ、運輸局とこれから頑張っていこうと思っていた事業者の思いが踏みにじられたという思いが強いので、その辺をしっかりと説明していただきたい」と述べた。
末吉利敎・三重県タクシー協会会長(三重近鉄タクシー)は「三重は、23年ぶりの運賃改定が祈願だった。平成8年が最後の運賃改定だったが、その年から最低賃金の上昇が144円、実に38・8%上がっている。このような状況の中、何とか、交通空白地、交通空白時間帯などのサービスをキープしていたものが、実施延期で心配される。一日も早い通常の運賃改定を実施していただくようお願いしたい」と述べた。
坂本栄二・大阪タクシー協会会長(全タク連副会長、日本タクシー)は「大阪は24年ぶりということで、今回の運賃改定を皆さん、大いに期待していた。規制緩和時代は、我われ大阪地区は、ある意味、規制緩和の実験場と言われる中、ひじょうに苦しい思いをしてやってきた。その結果、今回、やっと本運賃改定ができるということで、全員が何とかやっていこうではないかと。労働条件の向上、利用者利便の向上、これが我われにとっても大切なことなので、それを目標にしてやっていこうと。近畿地区は今回、奈良県を除いて本運賃改定申請を提出している。各協会長が揃って近畿運輸局長のところへ行き、お願いにあがった。また大阪では、公明党との政策懇談会を行い、そのときに公明党の先生方にも、あらためてお願いした。何とか年内、もしくは年明け、ぜひとも実施していただくよう、お願いしたい。そうでないと、私も大阪に帰れない」と述べた。
川本恵三・京都府タクシー協会副会長(京都タクシー)は「京都北部運賃ブロックは、23年間、運賃改定を先送りしながら、平成30年に京都市域が運賃改定された。そのときに同時に、と検討を再開したが、かなわなかった。今回は、消費増税と同時に本運賃改定をしても受け付けるというお墨付きをいただいた中で、全国48ブロックからの申請がほぼ同時に提出されていたという影響が大きいのかどうか、考えている。冒頭、川鍋会長はこの国は本当に法治国家なんだろうかと言われていたが、私も本当に民主国家なのだろうか、という言葉が頭をよぎった。一見局長は、いろいろな省庁から出された意見を受け止め、自動車局が決定したということであれば、なぜ、そこで身を挺して抵抗していただけなかったのかと。やはり、もっと強い大きな力が働いていたのではないか、というのが、もっぱら、我われの中では議論となっている。先ほどから言われているように、この先、経営のメドがまったく立たないという状況だ。したがって、いつ認可のメドが立つのか、という見解を、一日も早く、あるいはこの場ででも聞かせていただきたい」と述べた。
北川賢二・京都府タクシー協会経営委員長(彌榮自動車)は「運賃制度について質問したい。物価閣僚会議で今回、このような結論が出たということだが、そもそも物価閣僚会議で審議されるのは、東京23区・武三地区の運賃だと業界紙では報じられているが、それ以外の運賃についてもそこで結論が出されたということになると、運賃について、どこが決定権を持ち、認可権をもっているのか、ということをお聞きしたいということと、今後、実施時期がズレるということだが、その実施時期を決めるのは、どの省庁になるのか、ということをお聞きしたい。また、近畿運輸局管内では、これまで、下限なり、上限以外のところで運賃がかなり集中していた。今回、運賃改定がこのような形になったことで、それなら、これを機に上限に移行しようという意向を示された事業者が、運輸局にそれを申し出られたところ、ダメだとは言わないまでも、好ましくないという判断が下されたということが、情報紙で報じられている。ということになると、この時期に、例えば、公定幅の中で、下限から上限へ変わるというこのも認められないのか。そのようなことも、運賃制度上の問題として、答えられるのであれば教えていただきたい」と述べた。
鈴木雅司・兵庫県タクシー協会副会長(阪急タクシー)は「兵庫は神戸市域、淡路島の2地区で申請しており、今回のようなことになった。その実施時期についてだが、9月4日にも全タク連から要望書が提出されているが、現時点で、どのくらいのタームで実施しようと検討しているのか。心待ちしているので、現在の検討状況を教えてほしい」と述べた。
信原弘・広島県タクシー協会会長(全タク連副会長、宝塚タクシー)は「皆さんと同じ意見だが、一つだけ、心配がある。例えば、継続する時期が長くなれば、申請をやり直して提出するのか。広島の申請率は77・2%だが、これを申請し直すと、70%をクリアできないことがあるかもしれない。その辺を、明確に、最低でもどのくらいか、ということをお聞きしたい。メーター改造費については、官公庁からいろいろな助成の話が出てきている。その金額を、少しでもメーター改造費に回していただければ幸いだ」と述べた。
楠瀬賢一・高知県ハイヤー・タクシー協議会会長(錦ハイヤー)は「今日、おいでいただいている局長、課長にいろいろなことを申し上げても、本当は、はじまらない話だと思う。国交省は、ひじょうに前向きに運賃改定に取り組んでいただいていたわけで、その努力に対しては、心から御礼を申し上げたい。今、日本のタクシーは、大きく二極されている。都市部と地方部では、動きが違う。地方では斜陽産業になっている。賃金が安いために運転者が集まらない。これが大きなテーマだ。30年近くデフレが続き、物価が上がっていないので、我慢して、我慢して運営してきたが、もう限界だということで、皆さんが24年ぶりに上げたいということで、踏み切って申請をした。一日も早く、と一日千秋の思いで待ちかねていたが、遅くとも消費増税のときには上げていただけるだろうと、当局の方からも、(認可時期が)一緒になるのではないかと話していただいていただけに、期待が大きかった。それが、8月30日に急遽ストップと。これは何か? といろいろと勘繰ったわけだが、閣議か何かで、他の省庁の大臣が意見を言ったという情報が入ったが、そこで残念なのは、国土交通大臣が一言、何かコメントしていただくのが、何も言わなかった。記録に残っていない。これだけ、各局の皆さんに努力していただいているのに、何も言わなかった。この姿では、どうも、私たちは期待外れになってきた、という情報が入っている。地元の高知新聞の見出しに、『タクシーの値上げはストップ/業界は音上げだ』というものがあった。運輸行政を何か、誹謗したような書き方だった。その意味で、ひじょうに困っているし、早く増収率を上げて、今回の値上げはすべて運転者のために充てようという考えでいる。どうか、一日も早く、私どもが正常な運営ができる、本当の公共交通だと言われるようにしていただきたい。特に、運転者不足が顕著になっており、乗合タクシーの要請が、市町村から業界にあるが、業界ではそこに回す労力がないということで、お断りしているところが、だんだんと増えてきている。そのようなことでは、本当に、国土交通省の方針である高齢者の足が守れないということになってくるので、ぜひ、思い切って、一日も早く上げていただきたい。今回、2回の値上げとなることで、いちばん喜んでいるのはメーター屋さんだ。その代わり、その2回が業界の大きな負担になる。泣いても泣けないというのが現状なので、ぜひ心中をご理解いただき、一日も早い認可をいただきたい」と述べた。
吉本悟朗・宮崎県タクシー協会会長(エムアール交通)は「宮崎も運賃改定は24年ぶりということで、ひじょうに長い間、辛抱して、やっと今回、ということで、ひじょうに期待していた。新規参入事業者に下限割れでむちゃくちゃにされ、やっと流れが変わって申請ということで、期待をしていたところが、8月30日のたった一日でひっくりかえされ、晴天の霹靂というか、皆さん同じだと思うが、ショックだった。やはり、協議会等で消費者団体に現状に説明をしていただいたり、九州では宮崎の運賃がいちばん安いので、せめて同じレベルにと、利用者にご理解いただいた上で、今回やっと7割をクリアしたという現状があったので、ひじょうに驚いている。いちばん困っているのは、いつになるのか、と地元の会議等で事業者から問われたときに、答えようがない。それが、いちばん困っている。年内なのか、年度内なのか、まったくわからないというので困っている。その辺をはっきり回答していただきたい。一日も早い実施をお願いしたい」と述べた。
漢二美・大分県タクシー協会会長(全タク連ケア輸送委員長、大分シティタクシー)は「特定地域協議会、準特定協議会等で、消費者と協議をして、いいのではないかということになったので、申請させていただいた。働き方改革を実施しようと思えば、我われの収入は運賃からしか入ってこない。その収入も年々落ちてきているということを考えると、少しでも運転者に還元できるということで、申請をさせていただいた。懸念しているのは、8月30日に国土交通省から出された文書に『より丁寧な検討が必要という意見があった』というのがあったが、これ以上、何を丁寧にやればいいのか。我われは、本当に皆さんと一生懸命、運輸局に入っていただいた中で申請に至った。これ以上、何を丁寧にしなければならないのか、という思いがある。そして今回、消費増税に伴う運賃改定ということだが、これまで、3%、5%、8%と増税されてきたが、そのたびに全部、端数を切り捨てている。今回さらに2%の増税で10%になるが、その切り捨て分は事業者が負担している。ましてや今回、メーターを改造するには、1両あたり2万円弱がかかってくる。これらはすべて、事業者が負担する。少なくとも、今回のメーター改造費については、国で負担していただきたい。通常の運賃改定が伴えば、我われの負担でもやむを得ないということもあるが、ぜひその辺を考慮していただきたい。そしていつ、本運賃改定が実施できるのか。国土交通省の文書に、『より丁寧な』とあるのに一抹の不安がある」と述べた。
羽仁正次郎・鹿児島県タクシー協会会長(全タク連副会長、ハニ)は「我われは、国土交通省に所管していただいているが、他のところで、この話がおかしくなったのではないか、と思っている。他とのコミュニケーションがうまくいっていなかったのではないかという思いもある。その辺をお考えいただき、一刻も早く、という気持ちは一緒だが、そう簡単にいくのかな、という思いも一方ではある。他省庁とのコミュニケーションをとるということにも踏み込んでいただいて、お力添えをいただきたい」と述べた。
佐々木昌二・宮城県タクシー協会会長(全タク連副会長、仙台タクシー)は「メーター改造費助成の話が出たが、最初の消費税5%負担の当時は、かなり業界の負担が大きかった。それで、当局に要望した。国税を期日に納金するが、我われは手数料を負担しているのでメーター改造費の負担をお願いしたいと強く訴えた。その返答が、タクシーメーターに対する補助は、当然考えるべきで、理解できるという回答があった。ただし、スーパーのレジ改造に対する補助も当然出るだろう。だから、タクシーに補助したくてもできない、という内容だった。ところが日経新聞によると、軽減税率対象商品を扱う中小企業に対し、改造費に対する補助を設けた。それも、10月いっぱいで申請を打ち切られる。現在は状況が変わり、助成制度が設けられている。ましてや今回、このような運賃の問題が出たわけなので、ぜひとも国土交通省に強く訴え、お願いしたい」と述べた。
これら、全国各協会長らの発言に対し、一見・自動車局長は「まさに、全国からの悲痛な声だと思う。皆さんの思いを、私もしっかりと受け止めさせていただく。一つには、私に『頑張れ』と仰っていただいていることと思うので、今まで以上に気を引き締めて、検討していきたい。24年ぶり、大阪や高知など、23年ぶりの京都ということで、皆さん、値上げをせずに頑張っていただいたということは、よくわかる。値上げをするのは、事業者の皆さんが儲けるためではなく、働き方改革で労働者のため、利用者利便、IT機器や車両購入など利用者に喜んでもらうために行うのだという大本も、重々、わかっている。今回の具体的な話を申し上げると、運輸局には一つもミスはないので、判断はすべて私の判断だ。冒頭にも申し上げたが、消費税増税と同時に実施をするということが、日本経済に大きな影響を与えるのではないか。消費税を所管している消費者庁から意見があった。それを踏まえて私が判断したものだ。物価関係閣僚会議については今回、石井(前)大臣が出席したものではない。持ち回りで行われたので、私どもに各省庁から意見が送られ、私どもで検討し、方針を決めて大臣に具申をする、このような方法だったので、大臣がその場で発言をしたか、ということではないので、ここは誤解のないようにお願いしたい。公定幅、自動認可制度の話については、今回の閣僚会議ではなく、消費税のみの話だった。ただ、それについて、今回、タクシーについて、どういう値上げを考えているのか、ということで各省庁から情報提供を求められた。消費者庁を通して提供した。それを提供したところ、先ほどのような意見があったという経緯なので、それらの意見をちょうだいした。公定幅の中での運賃価改定の話があったが、これは運輸局に聞いてみないとわからないが、それは通常でできる話なので、どうしてそれが望ましくないと言ったのか、確認をさせていただきたい。今回、申請をしていただいているので、冒頭申し上げたように、継続して審査を続けさせていただきたい。JR北海道については、私どもが所管しているわけではないが、国土交通省としては一体として所管しているわけで、長い期間、路線は当然だが、会社の存廃も含め、道庁も巻き込んで論議してきた結果だと聞いている。私どもも、タクシー事業者の皆さんも、ひじょうに苦しい中、働き方改革や利用者利便への対応はしっかりとやっておられるということは申し上げた。その中で、今回については、私どもでこのような決断をさせていただいた。なるべく早く、実質改定をさせたいただきたいという、皆さんの気持ちはよくわかる。私どもも、同じ気持ちなので、関係方面にしっかりと説明をしていきたい。なるべく早く、ということしか、申し上げられないことをご理解いただきたい。これはたいへん申し訳ないと思うが、現時点において、なるべく早く、と私が思っているということを理解していただきたい。引き続き、皆さんから意見をちょうだいして、その意見を受けさせていただいて、私どもが判断をさせていただきたいと思うので、よろしくお願いしたい」と回答し、理解を求めた。
写真:上=9月20日、東京・自動車会館で開かれた緊急全国協会長会議開催前の模様
中=前席左から一見之・国交省自動車局長、川鍋一朗・全タク連会長、佐藤雅一・同経営委員長
下=緊急全国協会長会議冒頭、発言をする川鍋会長(中央上)