加賀市乗合デマンド交通のりあい号 ウェブで予約配車
第一交通産業と富士通が連携して開発 国内初の運用

2019年8月11日付・第466/171号

握手して写真に応じる左から大森肇・富士通事業企画総括部総括部長、田中亮一郎・第一交通産業社長、宮元陸・加賀市長、工合田修身・加賀第一交通社長

【加賀】加賀市内で約600カ所の乗降場を設け、乗車1回500円で利用できる「のりあい号」に運行事業者の第一交通産業と富士通が連携して開発した予約配車システムが、8月1日から導入され、加賀市役所で運用開始式が行われた。従来は出発時刻の1時間前までだったのが、30分前までの予約が可能となった他、夜間の予約も可能になった。パソコンやスマートフォンからも予約ができる同取り組みは全国で初めて。

宮元陸・加賀市長は「第一交通さんとの付き合いは、ひじょうに古く、長年にわたり地域交通を担っていただいている。ありがたい存在として、今日までお付き合いさせていただいている。平成19年、一部地域でのりあい号というシステムを作っていただき、それが今のシステムに移行したのが平成27年10月、そして本日を迎えた。あしかけ12年の長きにわたり、加賀市の地域交通に対し、第一交通さんから多大なご支援をいただいた。最近は高齢者の事故、運転免許証返納に向けての動きが、ひじょうに大きな社会問題になってきている。そうした中、高齢者の数が増え、免許返納の数の増えていく。高齢者が、例えば、病院に行く足、買い物に行く足、どうしても必要な場所へ行かなければならない移動手段が奪われていくことになる。その移動の自由を、何としても、我われ自治体としては、公共交通を中心とした交通システムを、補完的に果たしていかなければ、その人たちにとって、ひじょうに不自由な生活を余儀なくさせるということになる。少子高齢化社会なので、その結果、健康への影響が、肉体的にも精神的にも、いろいろな形で出てくる。それは、地域社会にとって不利益なことになる。健全に地域社会を発展させるためにも、移動は不可欠だ。そうした意味では、これまでの電話による配車ではなく、インターネット・アプリケーションを通じた予約配車システムを作っていただいたということは、高齢者があまねく利用することにはならないかもしれないが、これまで以上に利便性が高まったことは間違いがない。いずれは、それぞれの公共交通機関を最適化させるためのМaaSという概念が広まっていくのだろうが、その第一段階としてのオンデマンド交通のあり方を、まず、ここから始めさせていただきたいと思っている。その意味では、第一交通さんと富士通さんのシステムを、先進的なシステムとして、今後、加賀市で実証をどんどん積み上げ、より素晴らしいものになっていくことによって、全国に波及することに全力でサポートし、ともに地域交通の足を確保するための努力をしていきたい。高齢者以外の人たちにも、加賀市は公共交通が充実している、ここに住みたい、というようなことを思ってもらえるような地域づくりをしていきたい」と述べた。

田中亮一郎・第一交通産業社長は「今回の配車システムは、市町村主導で行うアプリケーションとしては、日本初となる。商業ベースの中では、いろいろなアプリがあるが、地域のために市町村主導でつくったサービスは、日本で初めて加賀市で行われる。今後は配車だけではなく、買い物代行、見守り、災害時の連絡等、防災無線の代わりような役割を果たしてもらえたらいいなと思っている。当社としては、ここで、いろいろな研究をさせていただき、今、日本全国で同じような、おでかけ交通を150路線以上行っているが、加賀市では月間延べ1200~1300人が利用している。高齢になり、動きたくても、なかなか動けなくなる。そこをデジタルで利便性を高めていくということをしていかないと、路線バスが走っていたところに、今度は小さなバスを走らせようということでは、再び利用できない地域交通になってしまう。全国からいろいろな形でオファーをいただいているので、とにかく、おでかけ交通は断らない。積極的に答えていく。これが地方のタクシー会社の生き残り作戦でもある。旅館の利便性を上げる、観光の利便性を上げることに関しても、このシステムでできないか、ということにも、富士通さんの技術で当社の車両を使っていただくということに、たいへん感謝している。形を変えながら、進化していくためにも、皆さんの忌憚のないご意見を生かしながら、おでかけ交通があるから加賀市に住もうと、人口が増えて活性化につなげていきたい」と抱負を語った。

写真:握手して写真に応じる左から大森肇・富士通事業企画総括部総括部長、田中亮一郎・第一交通産業社長、宮元陸・加賀市長、工合田修身・加賀第一交通社長