物流界のウーバー、国産のDIAq(ダイヤク)が8月から東京23区で運用開始
タクシー事業者、「労使関係が破壊され、ライドシェア解禁を後押しする」と危機感

2017年7月18日

【全国】人材派遣大手で官庁に食い込むパソナ(シェアリングエコノミー協会特別会員)と業務提携するなど、同社と関係が深い株式会社セルートが7月11日、下記のようなニュースリリースをネットで公表した。このリリースはネット系物流サイト『Logistics Today』や紙媒体の『物流Weekly』など物流系業界紙で報道された。当面は「宅配クライシス」が直撃するインターネット通販大手のアマゾンジャパン対策と受け取られているが、適用範囲は限定されておらず、その内容は国産の物流ウーバーと言える。

タクシー・ハイヤー分野では、安全の確保に決着がついていないことなどから、先の規制改革推進会議第1次答申では、人を運ぶ「ライドシェア」に関する記述はかろうじて免れたが、セルート社の「DIAq」がニュースリリースの通り8月中旬から東京23区で実施されれば、シェアリングエコノミーが過疎化の進む地方を含む全国に「物を運ぶ貨物という別の手段で波及」することになるのは時間の問題と懸念の声が上がっている。

「DIAq」の最新リリースを読んだタクシー事業者、大阪・日本城タクシーの坂本篤紀社長(大阪タクシー協会・広報サービス副委員長)は7月14日、「軽自動車や自動二輪は貨物事業の届け出が必要としているが、事実上の『白軽貨物』になっていくことが懸念される。請負契約のため、登録運転者が依頼物運送中に起こした事故の責任は誰が取るのか、言及されていない。健全な労使関係が根底から覆されるきっかけにもなり、労働条件確保の観点からも看過できない。今後、荷物とともに人を運ぶことが容認され、『アプリで仲介された貨客混載』が実施されることになれば、バス・タクシーへの影響ははかりしれない。今はかろうじて堰き止められているライドシェアへの門戸も開かれるきっかけを与えるだけだ。DIAqはトラックだけでなく、バス・タクシー全モードの問題と捉え、一致団結して阻止にあたらねばならない」と語気を強め、運輸業界の良質な人材確保という観点からも、ひじょうに大きな問題があるとの認識を示した。

DIAqでは、「貨物保険をかけているので、万が一の事故でも安心」としているが、個人も含めた「荷主」と登録運転者との間に労使関係が存在しないという判断が働いた場合、運転者が荷主から預かった荷物や重要書類の紛失や破損したときの補償範囲、運送者の交通事故発生時に誰が対応するのかや相手方を含めた補償範囲は、少なくとも事前登録を行っているDIAqのHPでは示されていない。そもそも、ここで言う「荷主」の定義があいまいだ。

また、Diaのアプリを介すので、「誰が誰にどのように運んだのか」という履歴は残るが、荷主の範囲は企業だけでなく、個人まで広げられるとみられるため、同システムが万が一悪用された場合、運転者が知らぬ間に犯罪の手助けをしていたということにもなりかねず、この指摘を否定する材料は今のところないと言えそうだ。

7月11日付DIAqニュースリリースは以下の通り。


宅配クライシス問題をシェアリング・エコノミーで解決!「空き時間」で荷物を運ぶアプリ「DIAq」を開発・8月中旬リリースへ

緊急輸送事業を行う株式会社セルート(本社:東京都新宿区、代表取締役:高木 惠理)は、ネット通販における「荷物が届かない(再配達、遅配、未着で配送完了)」などの問題を解決するため、一般人が空き時間を使って配達を行うシェアリング・エコノミーの物流プラットフォームアプリ「DIAq(ダイヤク)」を2017年8月中旬リリースへ向けて開発中です。

■宅配サービスが混乱している理由
    大きな原因は2つあります。

・荷物量の増加と荷物全体の約20%(※1)を占める不在再配達。
   (※1 国交省総合政策局物流政策課調べ)
   ・荷物量や時間指定が特定の日時に集中しやすいこと。

再配達にはドライバーの業務的な負担増以外に、持ち帰った荷物の保管スペースの問題もあります。一般的な宅配事業者の荷物保管期間は7日間程度となっており、最大で1日の取扱量の2倍以上に及ぶ保管スペースを確保しなければなりません(20%の荷物が7日間滞留すると1.4日分となり、当日分と合わせて最大2.4日分の荷物を扱う計算になります)。

また、荷物量はECサイトのキャンペーン期間やお中元、クリスマスなどの時期に集中し、日ごとの配達時間指定を見ると、在宅率の高い夕方以降(18:00~20:00、19:00~21:00)に集中しています。

増加するネット通販の荷物に対応するため、宅配事業者は“ピーク時だけの応援ドライバー”を複数の物流業者からかき集めて対応していますが、宅配経験がないドライバーも少なくないほか、荷物追跡情報を入力するためのハンディ端末(※2)はピーク時のドライバーに行き渡るだけの数が用意できず、配達状況を把握する方法も無いのが現状です。

6~7月は例年宅配の繁忙シーズンではありませんが、大手宅配事業者の撤退などにより中小事業者の荷物扱い量が急増したため、「予定日時に荷物が届かない」「時間指定が守られない」「まだ届いていないのに、荷物追跡サイトでは配送完了になっている」「在宅していたのに、不在票が入っていた」などの問題が発生しています。

※2 宅配事業者では、ドライバーが端末へ入力した配達完了や不在などの情報が、荷物追跡サイトへ即時反映される仕組みを導入しています。

■「空き時間」を使って荷物を運ぶ!~次世代の物流プラットフォーム「DIAq」~

配送クラウドソーシングアプリ「DIAq」は、自転車で通学する学生、買い物に行く主婦、出前の原付から個人事業主のプロドライバー、バイク便のプロライダー、自転車便のプロメッセンジャーまで、多種多様な人たちが「空き時間」を使って荷物を運ぶことができるプラットフォームアプリです。アプリを通じて、シェアリング・エコノミーによる、効率が良く持続可能な次世代の物流プラットフォームの提供を目指します。

■アプリ詳細

名称     : DIAq(ダイヤク/代役)
   提供日  : 2017年8月中旬
   価格     : ダウンロード無料(成約時には、配送料金が発生します。)
   内容     : 配送クラウドソーシング
   提供場所: APP Store(iOS)、Google Play(Android)
   決済方法: 各種クレジットカード

■運営会社について

会社名: 株式会社セルート
   設立   : 1984年11月
   代表者: 代表取締役 高木 惠理
   本社   : 〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-31-18
   資本金: 5,000万円
   URL    : http://www.saroute.co.jp/