丹後 ささえ合い交通 エリア拡大か
京都運輸支局専門官が地元事業者に打診
業績不振? 丹後町から京丹後市全域へ
2016年12月11日
【京都】京丹後市丹後町で5月26日に実証実験がスタートしたNPO法人「気張る!ふるさと丹後町」が運営し、登録した住民がウーバー・ジャパン(髙橋正巳社長)のICTによる配車アプリで公共交通空白地有償輸送を行う「ささえ合い交通」だが、輸送実績は一般マスコミが描くイメージとは裏腹に、思ったほど伸びていないもようだ。
中山泰・前市長が京丹後市の日本海に面する旧丹後町、網野町、久美浜町を交通空白地として、国家戦略特区化でウーバーアプリなどによる自家用車配車をしたいとする申請をして1年余りが過ぎた。
今年4月、久美浜町と網野町には京都のタクシー事業者が営業所を設置し、「現金で乗れる」タクシーの運行を始め、開業後1年を待たずに経営が軌道に乗ってきている。
当初は峰山自動車も丹後町に営業所を出したいとしていたが、「見えざる力」が働いたのか、営業所進出を断念した。
その丹後町で突如として登場し、鳴り物入りで始まったウーバー配車による自家用有償運送だけが、行政の力を借りないと存続が危ぶまれる状況になっているのは皮肉だ。現状を見る限り、とても「ウィン・ウィンの関係」とは言い難い。
NPO法人「気張る!ふるさと丹後町」の東和彦・専務理事は12月10日、本紙の取材に「年内に運行開始後半年余りの輸送実績を公表したい。方法は、記者会見かプレス・リリースの配布か、どちらかで考えている」と語った。
ささえ合い交通を始めるにあたり、京丹後市はNPO法人「気張る!ふるさと丹後町」に対して200万円の補助金を予算化。同NPO法人は、その200万円を初期投資として、ステッカーやドライブレコーダーなどの製作・導入費用にあてたが、運行費用には使っていない(東専務)。ささえ合い交通の当面の実証実験期間は来年3月末まで。
京都運輸支局の藤原幸嗣・首席運輸企画専門官は12月9日、京丹後市峰山町と大宮町を主な営業エリアとする峰山自動車(矢谷平夫社長、19両)を訪問し、「ささえ合い交通の業績が思わしくない」ことを理由に「ささえ合い交通」の運行エリアを市内全域広げたい考えを示した。
ささえ合い交通は現在、乗車は丹後町内に限られるが、降車は京丹後市全域で、運行時間は午前8時から午後8時まで毎日。これを丹後町内から乗車した人に限り、京丹後市内で下ろした人から配車要請があれば帰路乗車できるようにしたいというのが訪問の趣旨だったという。矢谷社長は「夜8時までの運行時間を10時までとかに延ばしたいのではないか」とも語る。
ただでさえ、ささえ合い交通の利用は、丹後町の住民だけでなく、丹後町を訪問している観光客やビジネスマンなどに拡大されているのだ。
藤原専門官は矢谷社長に「丹後市内から帰路乗車する人が、丹後町から乗車した人であるかどうかが分かるアプリにする」旨を伝えたというが、技術とコストを含め、果たしてどこまで「識別」できるのか疑問という声が上がっている。
矢谷社長は「エリア拡大が実施されたが、アプリを通さず携帯電話で呼びつけたり、傭車するケースが出てこないとも限らない」と指摘、警戒を強めている。
運輸支局の首席専門官がNPO自家用有償運送のエリア拡大を側面から援助するという動きに出た背景には、丹後町の運行は全国のモデルケースであり、赤字だからといって中止するわけにないかないという思惑があるからではないか、という憶測が流れている。
また、峰山自動車の営業エリア内には10月1日に開業した運転代行業の8823(ハヤブサ)代行があり、違法である白タク行為を繰り返している。
このことで、藤原専門官は「近畿運輸局の若林陽介局長と京都府警本部の片山勉・交通部長に伝える」と話したとされる。
矢谷社長によると、8823代行は白タク行為を行っていることは明らかだが、スナックのママさんや常連客などに証言を頼んでも、拒まれている。そこで、弁護士や地元警察署長に相談していたという。
矢谷社長は「ささえ合い交通の運行エリア拡大については、近く協議会が開かれるのではないか、という気がしている。運転代行の白タク行為もあり、前年比400~500万円は売り上げがマイナスになる見込みだ。この解決を早くしたいが、それに加え、ささえ合い交通のエリア拡大で地元を発地とする利用者まで取り込まれてしまったら、商売ができなくなる。そうなるなら明確に協議会で反対したい」と怒りを込めて語った。