エムケイ苦渋 現在の運賃継続を選択
西日本グループは新公定幅を視野
全社同一歩調はとらず 地域性を重視して個別判断
2016年11月29日
【京都】エムケイ(京都市南区、891両)の青木信明社長は11月28日、宇治・城陽営業所の全員集会に出席し、運賃に言及した。公定幅下限割れの現行運賃(初乗り中型車・2キロ610円、小型車・2キロ600円、5000円超え分5割引)を継続する意向を示した。青木社長は「今の運賃を続ければ裁判になるだろうが、負けそうな場合は新公定幅に入る」考えも示したとされる。
これに先立ちエムケイは11月21日までに役員会を開き、旧公定幅運賃下限から40円引き下げた新公定幅運賃には入らない方針を固めた。同社の役員の9割までが「現状維持」とする意見を表明する一方、「新公定幅に入るべき」とする意見はわずか1割だったとされる。このことは翌22日、同社八幡営業所で行われた全員集会で報告された。同集会には青木社長の姿はなかったが、運賃を現状維持とした場合、来年2~3月に行政当局から是正指導が行われると想定。その是正指導を合図に運賃を現状維持を求める仮処分申請を京都地裁に提出するなどの工程も示されたという。
関係者によると、今回の新公定幅公示で、エムケイグループ各社が検討した結果、「各社が適宜判断」することになった。従来のように東京を除く札幌、名古屋、滋賀、京都、大阪、神戸、福岡のグループ7社が下限割れ運賃を継続して全国で裁判を起こすということはせず、各地域で新公定幅運賃に入るかどうか判断することになった。
これを受け、青木三兄弟の長男である信明氏が管轄する札幌、滋賀(大津市域交通圏)、京都は運賃を現状維持する方針を固めた。ただ、名古屋エムケイは独自の判断で、審査に入っている名古屋交通圏の運賃改定が公示される来年1月頃、新公定幅が上下10%程度に広がった場合は下限を選択することを前向きに考えたいとしている。
また三男の義明氏が管轄する大阪、神戸、福岡の「西日本グループ」は新公定幅に入ることを視野に入れた。福岡交通圏も名古屋と同様、現在運賃改定の審査が行われているが、新公定幅運賃が公示されれば下限選択の可能性が高い。ただ、新公定幅運賃に入った場合は深夜早朝割増運賃の廃止を含め、新たな割引運賃を申請し、新たな競争を引き起こす恐れがある。
京都市域交通圏のエムケイは同エリアの法人車両数の15%近くのシェアを占めており、運賃については旧公定幅下限、新公定幅C運賃の小型車で初乗り1・7キロ590円を維持することを表明している京都最大手のヤサカグループ7社の20%強に次ぐ勢力。
しかし、京都市域には依然低額運賃戦略を続けるエムケイに対抗し、洛東タクシーグループを皮切りに、高速タクシーなどの5・5タクシーグループ、都タクシーグループ、キャビック、アオイタクシーグループなど市域の法人車両の約20%が深夜早朝割増運賃を廃止。こうした中、エムケイは「動くに動けない」状況に追いやられてきた。
エムケイは「選ばれる環境として、深夜は重要」と位置付けており、仮に新公定幅運賃に入った場合、これまでのように深夜早朝2割増運賃を適用したままでは「深夜割増廃止組には勝てない」と計算する。
一方、「新公定幅下限の小型車で初乗り1・7キロ550円を選択し、深夜早朝割増運賃を廃止したらどうか」という意見があるが、これに対しては、「深夜早朝の時間帯では現在の運賃よりも1割程度安くなるが、営収も下がる」と難色を示しているのは意外だ。「エムケイは安い」が浸透している中、昼も夜も安くするためには運賃を現状維持するしかなかったと言える。
ある幹部は「5000円5割引などは、自分たちの首を絞めるようなもの。なので、それは止めなければならない。同様に深夜早朝割増運賃の廃止も止めなければならない。基本運賃は上下格差を10%程度にして、その幅の範囲で、各社が好きな運賃が選択できるようにしたらいいのではないか。それが一番望ましいが、そうしたことを整理できる人は今のところいない。そうすると、エムケイには利点がないので動けなくなり、運賃は現状維持に留まらざるをえなくなる」とジレンマ状態を語った。