ウーバーは過疎地限定 都市部には入らせない
椎木議員(おおさか維新)、石井大臣を引っ張り出す
衆議予算委員で2月25日、白タク・ライドシェア質疑

2016年2月27日

【東京】おおさか維新の会の椎木保議員(大阪2区選出)は2月25日開かれた衆議院予算委員会第八分科会で、白タク・ライドシェアについて質問し、石井啓一・国交大臣と藤井直樹・国交省自動車局長が答えた。椎木議員は「白タク・ライドシェアは都市部へ入ってきってもらったら困る」との認識を示し、石井大臣は「大都市には入れさせない」と答えた。

2月22日の国家戦略特区ワーキンググループで、15日の内閣府地方創生推進室からの指摘・確認事項への国交省の回答として「国家戦略特区に、過疎地等における観光客の運送を主たる目的とした自家用有償輸送の仕組みを設けることを検討する。運送対象として、地域住民やビジネス客を排除することを想定しているものではない」とし、過疎地ライドシェア特区法案作成に着手していることを示唆。今通常国会成立には3月11日が法案提出期限だが、同日までに提出があるかどうかが注目される。

その最中、おおさか維新の会からの「白タク・ライドシェアに関する質問」は検討法案の内容を確認する上で、重要な役割を果たした。

同党は、規制緩和推進の立場にあるが、椎木議員は「改革路線の中でも、タクシーは人の命を運ぶもの。規制緩和は推進しながら、慎重に行き過ぎがないようにしてほしい。人の命を運ぶためには大事な問題」と質問の趣旨を説明。石井大臣は「ライドシェアにはさまざまな問題があり、極めて慎重に検討する必要がある」とする姿勢を示した。

過疎地ライドシェア特区法案の骨子はほぼ固まっており、その具体的内容は京丹後市丹後町で3月から行われる予定の「NPO法人を隠れ蓑とするウーバー・アプリ配車」をモデルとしていることが垣間見られる格好となった。概要はつぎの通り。

椎木議員は「白タクは営業エリアがなく、乗客をどこで乗せても降ろしても、基本的には自由なため、既存のタクシー事業者の営業機会を奪う可能性があると考えられる」と質問。これに対し、藤井局長は「現在検討を進めている自家用車の活用拡大については、公共交通による旅客運送が困難な地域において、市町村の区域内における観光客等の移動手段の提供を主たる目的としたケースを想定している。そうしたことで、営業エリアが無制限に広がることがないようにと検討を進めている。また自家用車による運送を行うものが市町村、タクシー事業者等、旅客の運送に関して協議する枠組みを設けることを混ぜて検討している。これにより、タクシー事業者の営業エリアを確保しつつ、新しい制度が運用されるように進めていく」と述べ、観光客等の移動手段について既存の公共交通空白地自家用有償事業に組み込みたい意向を示した。これは、2月22日の国家戦略特区ワーキングでの「地域住民やビジネス客を排除することを想定しているものではない」とする回答内容と齟齬をきたしている。

また椎木議員は「(白タクはタクシーよりも運賃が安いなどの)料金面での公平性について、どのように考えているのか」と白タク・ライドシェアの料金設定についての考え方をただした。これに対し、藤井局長は「現在進めている自家用有償旅客運送と同様の考え方に基づいて対価の設定を行う」とし、「運送の対価」は概ね地域のタクシー運賃の半額が妥当とする考えを示した。

重ねて、「車両の整備と運転者の技能、運行管理について、どのように考えているのか」と質問。これ対し、藤井局長は「自家用有償旅客運送で求められている輸送の安全措置を義務付けることを想定している」と答えた。この回答に椎木議員は不満を持ち、「昭和31年に制度が始まった二種免許を取得している運転者は単に物を運んでいるのではない。二種免許は人の命を運ぶためのものだ。その原点に再度立ち返りたい」と質問の趣旨を説明。ここで石井大臣が答弁に立ち、「いわゆる白タクの導入には極めて慎重だ。検討しているのは、あくまでも過疎地における自家用有償制度の活用なので、白タクの導入を前提とした質問には答弁しにくい。タクシーには従前のように命を運ぶ仕事をしていただきたい」と強調した。

さらに、椎木議員は特定地域の指定に絡め、「タクシーが減車されても、白タクが参入すれば供給過剰状態となってしまい、これまでの国の政策と矛盾することになるのではないか」と質問。石井大臣は「都市部ではなく、あくまで過疎地における自家用旅客運送制度のさらなる活用だ」と回答を繰り返した。

最後に、椎木議員は「(現行の自家用有償輸送は)事業への参入・撤退が基本的に自由であることから、実態の把握が極めて困難であり、何らかの問題が生じても国として対策を講じることが極めて困難だと考える」との見方を示した。藤井局長は「現行の自家用有償輸送の参入は安全確保・利用者保護の観点から、国交大臣ないしは、委任を受けた地方公共団体が運行管理、車両整備の体制確保、損害賠償能力等を確認して登録している。さらに撤退においても、事後の届出を義務付けている。現在検討を進めている自家用車の活用拡大においても、現行制度で求められている登録、廃止の届出を義務付けて事業の把握にしっかりと努めていきたい」と答えるに留まった。椎木議員はこの回答に不満を持ち、「今後具体的な事例を踏まえて質問したい」と述べた。