スマホ配車アプリ・ヘイローが東京で営業始動
Uber Lyft 意識した戦略に注視
業界 notteco 違法性を追求へ
2015年9月1日付・第341号
【東京】大阪を撤退したスマホ配車アプリ・ヘイローが本社を東京都豊島区から新宿区に移し、東京で顧客獲得を目的に動きだした。
ヘイローが8月19日付で発行した「今後の国内タクシー業界の動向予測/外資系企業と国内大手IT企業の参入による変革」では、タクシー業界の現状について、都市部に対しては、①M&Aによる大手事業者のシェア拡大と中小事業者の淘汰・再編、1社あたり売上の増加 ②外資系ライドシェアサービス「Uber」「Lyft」(いわゆる白タク)の進出に危機感 ③タクシー業務適正化特別措置法の管理化での業界の持続的発展可能性に懸念――と分析。
地方部に対しては、①自家用車の普及による需要の頭打ち、売上アップ見込めず、従来型の事業形態の限界 ②高齢化・過疎化地域では、デマンド交通や介護・生活支援事業への業態替えが進行中 ③今後の生き残り策として、特定地域限定営業、定額制運賃導入、会員制ライドシェアなど検討中――との見方を示している。
ウーバー、リフトの動向に意識しながら、中長期的展望ではヘイロータクシーが現在の従来型タクシー事業者を席捲し、ウーバーとのシェア争いで優位に立つとし、長期的展望では、ヘイロータクシーの既得シェアの半分がロボットタクシーに奪われるが、ウーバーより優位に立つという見方は変わらない。
一方、リフトは「notteco」など、その他ライドシェアの中に含まれ、ライバル視していないことが伺える。相当な手前みそな見方だが、果たして、東京でこうした強気の営業は通用するのか。
ヘイローが撤退した大阪で、個人タクシーユーザーが最も多かったということから、(一社)全国個人タクシー協会の木村忠義会長に8月25日、話を聞いた。概要はつぎの通り。
九州から指摘があり、ホームページから引っ張り出してもらったもののコピーがありますが、国内で営利目的で白タク行為であるライドシェアをやっている「notteco」というのがあります。
このようなところが国内にあるということを、私は知りませんでした。九州の法人業界に知らせたところ、知らなかったようです。全タク連の富田昌孝会長にも話しましたので、すでに国土交通省に報告しに行っていると思います。
東京で動き出したとされるヘイローは大阪へ進出する前、東京で動いていました。道路運送法違反もあったのかもしれませんが、東京では法人業界が表向きほとんど受け入れないという状況だったと思います。
個人タクシーも400人ほどいる無所属が多少やっていたのかもしれません。しかし、東京では法人も個人もほとんど動かなかったのです。
今、無線室があるのに、そこを経由しないで外のシステムで配車をやると、無線室が形骸化してしまいます。法人業界もそのようなことで、ヘイローに対しては拒絶反応を示していました。
大阪は商売になるということで、受け入れられやすい土壌だったのではないでしょうか。しかし、ヘイローにしてもそうですが、入口で了承した条件と軌道に乗ってきた時の条件は変わってきます。
手数料をもっと上げられる状況ができてくれば、つまりそれをやりたいという法人や個人が増えてくれば、条件は変わってきますよね。
ヘイローについては、撤退した大阪はテストケースとしては活用できたのかもしれませんが、やはり東京はマーケットとして見た場合、大きくて魅力があると映ったのかもしれません。
けれども、こうした動きを水際で防げずに放っておけば、業界はそうした外資系アプリ会社の下請けにならなければならない状況になってしまうかもしれません。だから、業界で力を合わせ、東京で成功例を作らせないようにしていかなければなりません。
個人タクシーで言えば、無線でもチケットでも、共同事業をやっているわけで、その共同事業がうまくいかなくなると、団体の存在意義は薄れてきます。
そのようにしてバラバラになってしまった個人タクシーは、果たして生き残っていけるのだろうか、と考えると難しい問題だという危機感があります。その危機感を組合員の皆さんと共有していかなければなりません。(談)
国産の notteco とは?
■notteco=主に長距離の相乗り利用者がターゲット。例えば、資料によると、宮城県白石市~神奈川県海老名市1000円、東京都~新潟県1000円など、利用した人がコードネームで報告してくる情報がホームページに掲載されている。東京と地方を行ったり来たりする人が利用しており、一見、ヒッチハイクのお手伝いのようにも見える。株式会社Costyleという資本金500万円で昨年4月に設立された会社が運営。CEOは三輪航平氏という38歳のゴールドマン・サックス証券で企業の合併・買収(M&A)を担当していた人物だ。
会社設立前の2007年からスマホではなく、ガラケーを使ってライドシェアを始めたnottecoを買収したというから、日本のライドシェアはすでに数年の歴史があると言える。
木村会長が談話記事で、「手数料をもっと上げられる状況ができてくれば、つまりそれをやりたいという法人や個人が増えてくれば、条件は変わってきますよね」と発言しているように、このnottecoは、最初の2年間の手数料は無料にして会員を増やすことに努め、その後はキチンと儲けて元が取れるよう、資金計画を立てている。最初の2年間はサイトを運営するだけの資金が集まっていたら事足りる。つまり、今は手数料を取らないことで白タクには該当しないとしても、将来にそのツケが回るだけで、数年後の複数の誰かが、未収扱いになっていた誰かの手数料を広く薄く肩代わりすることに他ならない。
この手法は一般の新規参入企業が顧客獲得のために常套手段として行っている紛れもない「営利行為」と言えなくはないか。グレーなのか、黒なのか、という論争をしている間に、自家用車による白タク行為の結果、安心・安全の担保が何もなく、事故があったらどうするのか、という問題が残る。ウーバーが福岡で実験しかけたライドシェアと同様、国土交通省の対応が注目される。(本紙編集部)