おもてなしは国体で終了させてはならない
不幸な法人協会分裂もプラス思考で
三草大介 和歌山市国体輸送協議会会長に聞く
2015年9月1日付・第341号
【和歌山】和歌山業界は今年、大きなイベントの輸送に取り組む。その前哨戦となる2015インターハイ近畿大会で、和歌山市は陸上競技と剣道を担当した。昨年、和歌山の法人業界は不幸にも分裂。
しかし、和歌山市国体輸送協議会の会長を務める(一社)和歌山県タクシー協会副会長で和歌山支部長の三草大介・南海アーバン交通社長は法人2協会の仲を取り持ち、個人タクシーの協力を得て予想を上回る人出への対応となったインターハイのタクシー輸送を成功させた。
9月26日から10月6日までの10日間、今度は和歌山県全域の競技場を会場として第70回国体・紀の国わかやま大会が開催される。その意気込みを8月18日、協会で伺った。
―― インターハイ和歌山大会関連のタクシー輸送はたいへんだったと思います
三草 無事終わりましたが、いくつかの問題点も見えてきました。学校関係者は横のつながりはありますが、縦の命令系統はありません。問題が発生したときに、どのような指揮系統ができているかで早く解決できるかどうかが決まります。
大会自体は成功裡に終わりましたが、選手の送迎も含め、もう少しキチンとできたのではないか、というのが総括です。
期間中、私も初めて見たのですが、和歌山では珍しく200~300人がタクシー乗り場に並ぶ、という光景がありました。和歌山ではほとんどありませんが、全国的に見たら、タクシー乗り場に並ぶということはありえることなんでしょうね。
大会の最初の方では、1時間ぐらい並ぶ人もいました。けれども、そんなにムチャクチャなことも言われず、和歌山市内の全事業者と個人タクシーで当番を決めて、いつもよりも長い時間、街頭指導をしました。当初の予定では午後5時まででしたが、長い時には午後8時過ぎまで行いました。役員は当番の関係なく、ほぼ毎日出ていました。
紀三井寺公園の競技場で行われた陸上競技では、開催前は「学生さんだから、タクシー利用は少ないのではないか」と予想していたのですが、始まったらそんなことはありません。終わってみれば、その学生さんが7、8割のタクシー利用を締めていたのです。
報道関係では、その競技が成立したことに報道陣が記録をもってテレビや新聞に間に合うように出ていきます。それには、予約車が対応しましたが、競技によって午後7時過ぎに終わるものもありましたので、成立を待つと8時過ぎになることもありました。
そのようなことは、事前に大会関係者から周知されていませんでしたので、大会を経験して初めて知りました。そのようなことは9月26日から10月6日まで開催される第70回国体・紀の国わかやま大会でも多分、同じことが起きるだろうと思っています。
県や市では、各競技場は競技者も観客もインターハイの1・5倍の人が来るという試算をしています。インターハイのときも、約2万人で満員になる競技場で、ほとんど会場が埋まるかな、という勢いでした。
―― いよいよ国体に向け、準備が始まりますが、どのような取り組みを用意していますか
三草 よく九州へ旅行に行きますが、福岡空港にコンシェルジュを置いているでしょ。冬に行ったときに、格好良く見えたのです。本当にホテルのコンシェルジュさんみたいに制服を着ていたので、「ポーターさん?」と聞くと、「違います。私たちコンシェルジュでございます」という反応が返ってきました。
今回、和歌山では国体期間中に置こうというもので、内部で研修するようなことはしなかったのですが、派遣社員を使おうと思っています。派遣会社の人たちは各種イベントに出られているので、お客さまの扱いには慣れているでしょう。先ほど、人材派遣会社であるパソナの和歌山支店長と、その打ち合わせをしました。
―― タクシー用の人材は揃っていたのですか
三草 そのような人はいませんでしたが、派遣社員の人たちには協会で10年余りの間、ポーターを務めていただいた職員の中北望美さんをチューターに2日間研修を行い、大会期間中にも中北さんに班長として頑張っていただきます。
ただ、最終的にはどんな制服にするかは決まっていません。昨年、長崎国体へ視察に行きましたが、9月下旬とは言え、暑かったですから、暑さにも対応できるようにしたいと思っています。
これは、決定ではありませんが、今年の春にJR西日本さんに、国体開催期間中に限り、契約者以外の車両も駅乗り場へ入ることを許可してもらえないかとお願いしています。そうしないとお客さんを捌けなくなる可能性があるのですが、まだ返事はいただいておりません。その時に臨時列車が出るのだったら言ってほしいとお願いすると、「ひょっとしたら、JR紀三井寺駅に特急が臨時停車できるようになるかもしれない」ということを言われていました。しかし、これもまだ返事が来ていません。
実は5月8日、和歌山市長に対し、(一社)和歌山県タクシー協会の川村昌彦会長、(一社)和歌山県ハイヤー・タクシー協会の田畑孝芳会長、和歌山県個人タクシー協同組合の和田俊夫理事長の連名で、「国体開催に向け、JR和歌山駅、南海和歌山市駅、JR紀三井寺駅の整備」を要望しました。その結果、3駅すべてでバリアフリー化が行われ、南海和歌山市駅に関してはバリアフリー化と照明灯の新設、JR和歌山駅に関してはバリアフリー化とタクシー乗り場の屋根の設置、照明灯の新設、JR紀三井寺駅に関しては、タクシー乗り場の屋根設置は無理だったのですが、そうしたタクシー業界からの要望を聞いていただくことができました。
和タ協和歌山支部の顧問になっていただいていますが、和歌山市会議員の尾崎まさや氏が今年の統一地方選で当選してから市議会議長に就任しました。その尾崎氏に同席していただき、和歌山市長に嘆願していただいたことで、5月8日に要望書提出後、異例ですが7~8月中に「着工、または完成させます」という返事をいただくことができました。
法人の協会は不幸にも昨年分裂しましたが、それ以降、いちばん最初にまとまって行ったことです。これをきっかけに、和歌山の法人協会を何とか一つにまとめていく足掛かりにしたいと考えています。
―― 昨年、県の肝いりで「和歌山おもてなしタクシー大作戦」と称し、運転者のマナーアップの講習が行われました
三草 私は、おもてなしというのは国体開催に間に合わせればいいというのではなく、未来永劫にやらなければならないものだと思っています。従来、県にはそう主張してきましたが、平成28年度予算に再度計上してもらうことができました。今年だけ、来年だけ、というのではなく、このような取り組みは恒常化していかなければならないと思っています。県でも「そうするつもりです」と言っていますが、ある日突然、予算から外されることのないよう、取り組みを定着させていきたいですね。
そもそも、「おもてなし」という言葉を掲げることは、私たちにとっては恥なんです。おもてなしをすることが当たり前にならなければなりません。それを県が頑張って、私たちも頑張らせていただくということには、ひじょうに片腹痛い思いです。
ただ、外国人利用者向けの「指差しシート」もそうですが、一般のタクシー利用者や市民に対し、「こんなことをやっていますよ」ということをお示しすることができる、という点では有意義だと思っています。
私は、10月1日から運転者登録制度が始まりますが、その研修に「おもてなし講習」を組み込めれば、一石二鳥になると思っています。和歌山全県で、和歌山独自の講習を取り入れることはできないか、その経費の一部負担を県にやってもらえないものか、ということを今、考えています。
―― ありがとうございました