全自交労連 白タク反対 2015夏季労働セミナー
「人口30万人以下 特定地域切り捨」に疑義
青森地連が勇気をもって行政訴訟
2015年7月21日付・第338号
【静岡】全自交労連(伊藤実委員長)は7月14日~15日、静岡県伊東市の「ホテル聚楽」で、2015夏季労働セミナーを開催。坂本克己・全タク連・タクシー事業適正化・活性化推進特別委員会本部長、神谷俊広・全タク連理事長があいさつ。15日に新潟県副知事に就任した寺田吉道氏が国土交通省旅客課長として最後の講演を行った。「白タク行為の合法化に断固反対し、阻止する緊急決議」を全会一致で採択した。
初日の14日、伊藤委員長は「安倍政権の下、実質賃金が低下し続ける中、他産業との格差を是正する公共交通労働者にふさわしい賃金水準を求め、月額1万円の統一要求を掲げ、改正タクシー特措法附帯決議にある運転者負担分廃止に向け、皆さんにご奮闘いただいた。進捗状況については、3月、4月段階では妥結ベースが昨年を上回ったが、5月以降はペースダウンで現状維持が困難な状況に陥った単組もある。妥結内容では、定昇は確保しながらも、ベアに届かないというのが現実だが、新潟地連では2000円以上の賃上げを獲得した単組が4組合。また愛知地連では名鉄労組を中心に年間臨給70万円台での妥結が4単組。運転者負担の廃止または軽減化を実現した単組も2組合。賃金体系をオール歩合からA型に転換させたという組織もある。組合員の期待に答えられたかというと、そうでもないという気がしているが、このような前進面もあるので、そうした面も含めて総括し、来春闘に結びつけたい」と表明。
政策面については「改正タクシー特措法が施行され、1年6カ月が経過する。公定幅運賃が導入され、運賃競争についてはエムケイ問題が残されているが、随分と改善されたのではないかと思っている。やはり規制改革会議の介入で、改正法のキモである特定地域指定がとんでもないことになってしまい、全国で指定候補地になったのが29地域。さらに腹の立つのは、事業者の身勝手で、指定を拒んだところが10地域あるという状況で、19勝10敗。秋田、仙台、熊本は一足先行して6月1日付で特定地域に指定された。これら地域ではぜひ、適正化に向けた結果を残してほしいと思っているし、賃金水準の改善目標を決めた中で、対策を練っていただきたい。ほとんどの地域が準特定地域のままになってしまった。すべての職場で附帯決議を実行させる取り組みを進めていかなければならない」との方針を示した。
また「昨日の執行委員会で、規制改革会議の意向により人口30万人以下の地域を切り捨ててしまった特定地域の指定基準については、やはり改正法の趣旨と目的に反するということを広く世論に訴えようということで、青森地連の仲間が行政訴訟を提起することを決定した。不満を行動に移す中で道は開けると思っている」と報告し、支援を求めた。
新経済連盟のシェアリングエコノミー成長戦略については「これらが進められると、タクシーはもちろんのこと、バス、鉄道といった公共交通そのものの存続が脅かされるし、移動の足を担保することも難しくなると危惧している」として、翌日「白タク行為の合法化に断固反対し、阻止する緊急決議」を採択することを表明した。
来賓の坂本克己・全タク連・タクシー事業適正化・活性化推進特別委員会本部長は「タクシーは町のパトカーであり、救急車でもある、と言われるほど地域に密着している事業だ。目先の利益を追い求めるのではない。本当にその地域のために皆さんが汗を流している。苦しい中、一生懸命にやっておられる。だから、公共交通を担う。だから、誰よりも誇りをもって働いている。やりましょう。遠とい公共交通を担う対価を、皆さんがしあわせになって暮らせる対価をいただくようにならなければならない。どうか、潤いのある豊かな生活ができるように、逆転して(ウーバー、リフトのような)外敵から守ろう。どうか誇りをもってやってほしい」と語った。
神谷俊広・全タク連理事長は「新経済連盟が白タク合法化を政府・自民党に要請している。自民党もマイカーや自家用車という表現を提言から落としていただいたが、シェリングエコノミーという言葉は残っている。これを踏まえ、政府の規制改革会議や諮問会議は明白に道路運送法を改正し、白タクが合法的にできるようにせよ、という方向を具体的に出している。今のところは規制改革会議(内閣府)からの照会に対し、国交省は対応不可ということで奮闘している。国家戦略特区からはまだ正式な要望が来ていないということだが、そちらも国土交通省はしっかりと対応していただけるものと思っている。全タク連としては、こうした事態を憂慮しており、6月23日の全タク連第103回通常総会で緊急動議決議を行った。ただ、安倍政権は成長戦略に力を入れており、先般、日本再興戦略2015という閣議決定を行った。これはアベノミクスの憲法のようなものだが、これをつくったのが産業競争力会議。この中に民間議員として、楽天の三木谷浩史氏と竹中平蔵氏がしっかりと鎮座している。シェアリングエコノミー実現のために法的整備を図るということが、閣議決定ベースでもしっかりと書かれている。そこには『白タク』とはハッキリと書いてはいないが、我われとしては予断を許さない状況になっている。全タク連としても、先日の正副会長会議は実質白タク問題対策検討委員会ということで、坂本本部長の助言をいただきながら、侃侃諤諤の論議をした。これからもしっかりと対応していかなければならないが、やはり大事なことは、タクシー産業の根幹を根底から揺るがすものであり、自公民の議員立法でできた改正タクシー特措法の意義を損なうものだ。労使一体で対応していかなければならないということと、与野党国会議員、個人タクシーともしっかりと連携していかなければならない」と危機感を込め、協力を呼びかけた。
15日に新潟県副知事に就任するため国土交通省の旅客課長としては最後となった寺田吉道氏は「タクシー事業の現状について」をテーマに講演。質疑応答では大阪地連の加藤直人委員長が「大阪市域交通圏の協議会であるにもかかわらず、肝心の大阪市が欠席するなど大阪のような複雑な地域では、運輸局は黒子ではなく、議決権をもたない構成員として地域協議会に出席し、発言ができるよう検討してほしい」と要望。これに対し寺田氏は「法の立て付けは特定地域計画など協議会が提出する計画の認可権者である運輸局は構成員になれない。だが、積極的に事務局に協力するよう文書で伝えている」とし、協力をしない運輸局は本省に伝えるよう訴えることに留まった。