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近運局部長 着任2年
大阪は ものすごく 面白いまち
白タク行為 阿部 自動車交通部長に聞く

2015年6月11日付・第334号

【近畿】見出しにあるように、「大阪はものすごく面白いまちだと思う」と語った上で、大阪の現状については「東京に比べて元気がない部分もあるでしょうし、関西の財界人や政治家もそう思ってしまっているところに問題があるのだと思います。そのマインドをいかに崩すかだと思う」――阿部竜矢・近畿運輸局自動車交通部長は就任2年、大阪についての質問に、このように答えた。

やはり発展する都市は懐が深い

―― ウーバーのライドシェアは白タク行為なので中止しなさい、という指導を今のところ守っています。しかし一方、東京で行っている、タクシー会社を相手にしたスマホ配車は、旅行業法を適用して運賃タリフを作り、それに基づいた料金を収受しています。東京のハイヤーには距離制運賃はありませんから、そうしたスポット料金を設定することによって利用しやすくしているのでしょう。

阿部  配車手数料のようなものがタクシー会社から支払われているのですね。

―― 旅行会社を介しますから、おそらく京都の修学旅行のように2割程度ではないかと言われています。

阿部  その配車手数料が原資となり、利用者との間では安くなるという仕組みなんでしょうかね?

―― 福岡業界では、旅行業法を介した法的な盲点があるので、放置しておけば、行く行くはツアーバスと同じようなことになりかねないので、この点についてはキチンと追及していきたいとのことです。

阿部  国会の国土交通委員会でも取り上げられていましたよね。タクシー会社は旅行会社たるウーバーとの間で運賃を収受しているのでしょう? その場合、手数料がオンされるのだから、手数料が運賃の2割というなら、通常の運賃よりも2割高くてしかるべきですよね。おそらく途中で何らかのキックバックがあるのでしょうかね。

―― それにウーバーはIT企業ですので、アプリを利用してもらうだけで別途通信料か通信手数料が入ってきます。基本的にはその通信料あるいは通信手数料をできるでけ多くの人に使ってもらうことで莫大なお金が入ってくるようになるというビジネスモデルがあると思います。それにキックバックがあるとすれば道路運送法違反になると…。まさに福岡業界は国会で問題化して実態を調査していこうとしています。

阿部  なるほど、そこはよく業界と議論した方がいいですよね。割戻しの形になっているかどうか。仮になっているとしても、ただちに違法扱いにするのは難しいと思います。

―― いわゆる手数料の問題ですね。

阿部  貸切バス業界でも旅行業者に手数料を支払いますし、そこは難しい問題ですね。IT企業が仲介していれば、仲介手数料は当然発生するので、ただちに違法とは言えないですね。

―― ウーバー社は青だろうが、白だろうが、利用者と運転者を仲介することを仕事としていますので…。

阿部  白タクはダメということには日本では異論はないでしょうが、楽天さんもそこを調整しているのでしょう。しかし、青ナンバーだからといって、運賃制度を本質的に骨抜きすることがありうるのかどうか、というところだと思います。

―― 新経済連盟についてはどう思われますか?

阿部  シェアリング・エコノミーですか。どちらかと言うと、メーンは空家の有効利用の方だと聞いています。しかし、自動車の方は安全の観点から見たときに、他人の異動の需要のために改革するということは、先ほど白ナンバーの有償輸送のことに触れましたがどうなのかという点はあります。安全・安心・持続可能性・利用者保護ということも含めて基本は青ナンバーなんだと思います。青ナンバーの中でどのような攻め合いをしていくのかという議論になるだと思います。

―― 白ナンバーだから安全や運行管理をないがしろにできる、ということはないと思います。タクシーと同様、税金もそうですが運行管理者や整備管理者を置かなければならないなどのことを、例え今後、白ナンバーが認められたところでも、青ナンバーと同じような法整備をしてほしいという声が上がっています。

阿部  そこですが、白と同じようなものを青に求めるなら、その白は青なんです。そこは禅問答のように論議がぐるぐる回るところだと思います。青と同じような白になれ、ということなら、それは青になれと言っているのと同じことという気がします。

―― ですから、一時、社会福祉協議会などで白ナンバーから青ナンバーに切り換えるところが出てきました。

阿部  これは個人的見解ですが、それが正しい姿だと思います。持続可能性をもってやっていこうというのなら、青ナンバーになって下さいということです。

―― これは聞いた話ですが、高松で大きな運転代行会社があるそうですが、そこが潰れそうになったタクシー会社の買収をしているということです。その運転代行会社の親会社は不動産会社なのだそうですが…。

阿部  白はボランティアで奉仕の精神でやっている、という誤解をもっている人が一般市民の中にはひょっとしたらいるかもしれませんが、それは私はちょっと違うと思います。ですから、そのような気持ちの問題で青になることを潔しとはしない人が、もしかしたら運行主体の方にもいるのかもしれませんね。しかし、私は青の世界はそのようなものではないと思います。一定の反復継続性をもってやっていく場合は青ナンバーの事業者になって下さい、ということだと私は思います。

―― 阿部部長も、近畿運輸局の自動車交通部長に就任されて間もなく2年です。この2年間を振り返って、どのような感想を持っておられますか。

阿部  大阪はものすごく面白いと思います。先日の都構想住民投票もそうだったのですが、ものすごく東京に対して大阪を意識しますよね。東京に対する大阪をどうすればいいのかと。

―― ということは、大阪独自のタクシー制度があっても良いと言えると?

阿部  そこまでの議論というのはありませんが、大阪は日本全体のためにも元気にならないといけないと思います。

―― 大阪は元気がないという印象ですか?

阿部  そうではありませんが、やはりいろいろなデータを見ると、東京に比べて元気がない部分もあるでしょうし、関西の財界人や政治家もそう思ってしまっているところに問題があるのだと思います。そのマインドをいかに崩すか、ということだと思います。大阪は明治以降、いろいろな地域から出てきた人により発展した。四国や九州などいろいろな地域から出てきた人が会社を立ち上げて大きくした人がたくさんいたわけで、もともと懐が広い地域なのだと思います。発展する都市はそのようなものだと思います。(了)