薬師寺最高顧問「特定地域で何を主張するのか」
大阪タクシー協会 第37回理事会で意見交換
「変化の重大な問題の時」次回準特定地域協議会
2015年5月21日付・第332号
【大阪】(一社)大阪タクシー協会は5月15日、大阪市中央区の「大阪堺筋ビル」内の大タ協会議室で、第37回理事会を開いた。議題最後の審議事項で、継続審議になった特定地域指定について論議され、薬師寺理事・最高顧問は終始イニシアティブをとる格好で「変化の重大な問題という時に時間を惜しんでいてどうするのか」と叱咤激励しながら、「特定地域になったら大タ協として何を主張するのか、意見をまとめるのが重要」との認識を示した。特定地域指定を論議する準特定地域協議会は6月18日に開かれる。準特定地域協議会に関する審議のほぼ全文を紹介する。
高士雅次理事(都島自動車) 特定地域に反対する人は、それほどいないと思う。ただ、特定地域になると減車がセットになっているのではないかとか、その先に何があるのかが、ハッキリしない。それで、態度を保留したり条件付で賛成している人が多いのだと思う。何故先のことをキチンと説明できないのか、ということを疑問に思う。ぜひとも先のことをキチンと説明し、特定地域に賛成するという手続きをしたらどうか。
三野文男会長(商都交通) 議論は大いに結構だが、準特定地域における議決ということになれば、構成員が議決権を持っているということと、当理事会においては大阪市域交通圏に営業車両を配置していない事業者もあるので議決は理事会ではできないと思っている。私はこれまでの理事会で、特定地域に指定されてしかるべきということを申し上げ、減車問題については指定された後の問題であるため、指定後に議論すべきと申し上げてきた。
高士理事 意向調査は大阪市域交通圏の事業者に対してだけ行ったのか?
三野会長 そうだ。
高士理事 特定地域イコール減車と思っている人が多く、当初からその方向で議論が進んでいると思うが、たぶん減車に反対や減車に条件があるという人が多いのだと思う。それは行ってみなければ分からないというのだが、本当にそうなのか。あるいはその辺の議論が十分にできるのかがハッキリしないように感じる。
三野会長 特定地域に移行するかどうかということについては、大阪市域交通圏に配置されている車両数にウエートをかけた票決で過半数をもって意思表示ができるということになっているが、特定地域協議会に移行した後に特定地域計画を策定する段階において、事業者の票決においては3分の2以上の同意が必要ということになっている。法律が施行されて以降、業界全体の意見を業界紙等を通じて勘案するとたいへんハードルが高いと思っている。
岩城秀行理事(北港タクシー) 今となったら、大阪市域交通圏の事業者だけを集めて議決するということができたと思う。第3回大阪市域交通圏タクシー準特定地域協議会当日、自治体や利用者委員に意向調査を確認したところ、「これはそのようには思えない」という意見が出たのは聞こえていると思う。だから、キチンと議決を採ってあのような場へ行くべきではなかったのか。そうでないとウヤムヤのうちに特定地域への移行が決まってしまう。小規模事業者は減車しなくていいかのような印象を与える発言があったが、何も決まっていないのだと思う。特定地域協議会が発足しないと、減車や小規模事業者をどうするのかが何も決まっていない段階で、小規模事業者には減車はないとしている。減車しないところには営業の制限があるという点に目隠しをして世論を誘導するのはいかがなものかと思う。
三野会長 この件について、過日の準特定地域協議会開催以降、執行部と事務局で確認した。いろいろと反省すべき点はあったが、その反省に基づき、次回は疑義が生じないように取り組んでいきたい。構成員として参加した事業者は、それぞれが議決権をもって協議会に臨むというようなシステムになっているので、敢えて(理事会等で)議決を採らない方がいいだろうと確認している。ただし、議論は進めていただき、タクシー業界の方向性に多くの会員はどのような意見をもっているのか(を確認する)ということを確認した。
坂本篤紀理事(日本城タクシー) 第2回準特定地域協議会の議事を見ていて、期日前投票を行っても良かったという気がする。あの日、賛成が過半数に達していた。議事進行にも不満はあったが、いかに反対の意見を入れてやるかという程度の会合だったはずなのが、いつの間にか最後の方の不規則発言で流会になってしまった。構成員の中に、反対派が負けたら裁判したらいい、どうせ勝つのだから、と言う人を入れておいてもいいものだろうか。それから、弁護士で反対のための反対を繰り返し言っていた人がいる。回転ずしも過当競争でしんどいのだから、タクシーもしんどい思いをしろと。本来、私だったら反論したかったが発言を制限された。回転ずしが規制緩和でしんどいなら、フグでも出したらいい。あぶなくてしょうがない、と言いたかったけれども発言の制限があり、たいへんストレスが溜まった。アンケート(意向調査)という中途半端なことではなしに期日前投票にして優劣を決めて反対派の意見を取り入れていった方が良かったのではないか。新自由主義だの古いことを言っていた大阪MKの青木義明社長ですら、京都へ行けば、安いのと高いの両方やっているわけだから、反対のための反対を言う人や負けたら裁判するという人を入れる必要があるのかを次回は問うていこうと思っている。
三野会長 期日前投票については検討をしたが、いろいろと難しい点があるということも分かってきた。進め方は準特定地域協議会事務局を務める大タ協事務局、強力な黒子と言っている近畿運輸局、協議会議長を務める安部誠治・関西大学社会安全学部教授の3者で今後の運営について近いうちに協議を予定している。
山根成尊理事(国際タクシー) おそらく、特定地域に指定されるのだろうが、今までは出入り自由の預かり減車はダメと言っていたが、特定地域に指定されると、それはどのようになるのか。特定地域計画にそういう強制力はないのか。
足立堅治・大タ協専務理事 特定地域については、供給過剰なので、その地域においては減車が原則になろうかと思う。預かり減車・休車の話には多分、国土交通省はウンとは言わないだろう。
三野会長 預かり休車という制度は今はない。将来課題としてはあるだろうが、全タク連も国交省との折衝状況をみて真剣に打ち出していくのは難しい状況にあるという見解をもっている。
薬師寺薫理事・最高顧問(関西中央グループ) 足立専務は大阪タクシー交友会の説明会で、「前回、減車に応じていないところ(の減車)が優先される」という発言もあるし、いろいろと発言している。だから、私はその時に議事録をキチンと取っておくようにと指示をしていおいた。今、日本城タクシーさんの発言にもあったが、協議会の構成員をコントロールできないのでしょ? 出入り自由だから、拒むわけにいかない。そのようなルールではないのだから。私は2カ月ほど前から、「いろいろバラバラで分からない」と言っていたが、特定地域に参加する目的は何なのか。私は分かっているが、皆さんは質問がないが、バラバラなことを言われていたら、どちらが本当か分かっているのか。執行部側の説明が、事務局長と会長の質問とが違う。そういうことを放ったらかしたまま、協会は前進するのか。基本的な問題だ。前進する前に、そのようなことも整理しておかなければいけないと思う。まず、我われタクシー事業者が特定に参加する目的は何なのか聞きたい。
三野会長 私自身はちょっとした表現は違うが、根本的には違いはないと思っている。特定地域になった段階で、私は減車をしていない会社と減車を実施した会社で不公平があるとき是正すべきということを、以前にも言ったつもりだ。特定地域移行以降、不公平是正は必要ないというようなことは言った覚えはない。その点で足立専務と私の発言に矛盾はないと理解している。目的については、第一義的には供給の削減。改正タクシー特措法では特定地域と準特定地域の2段階に分かれた。準特定地域に留まれば先日、準特が解かれた泉州交通圏のように元の道路運送法に戻ってしまう可能性が高くなる。
薬師寺理事・最高顧問 特定地域になるというのは、適正化・活性化という大命題があるわけだから、皆分かっている。そこで、我われ事業者の主張というか、そこへ参加する前から、我われの希望をボリュームを大きくして持ち込むということも必要だ。大阪タクシー協会としては、このような目標を達成したい、できないとしても我われ事業者の意見というものは、言っておかなければならないと思うし、言うために参加するのだろう。特定地域に参加するのは、我われ事業者の意見を言うためのはず。であれば、我われが主張すべき多様な意見を集約するということでないと、代表した意見を協議会で述べるわけにはいかないと思う。大阪タクシー協会としては、どのような主張をするために特定地域に参加するのか。目的がなければ参加する意味がない。我われが主張を持たないで参加して、参加してから決めると言っても、その前に主張を集約する場が必要ではないかと思っている。答えは要らないが、特定地域指定イコール適正化・活性化という問題。今事務局が言ったように簡単に言えば減車。それを今分からないような話をしていたらおかしい。筋が通らないと思っている。幸か不幸か、準特が延長になったから、時間は十分にある。我われ事業者も主張をもって参加する。反対という人は多分いないと思うが、何しに行くやら分からないお使いに全面的に協力してほしいというのは言っている方が無茶じゃないかと思う。組織だから、組織の代表、公的な場での発言、行動は皆、無責任ではない。十分に時間があり、目的地へ到達する。登山に例えれば、途中で足を滑らすということもありうる。業界外の団体からしたら「それはタクシー業界のエゴではないのか」ということを多数発している。タクシー業界とは関係ない自治体や消費者が集まる中、我われの主張がそう簡単に通るわけではない。根回しの時間も十分にある。
薬師寺理事・最高顧問 大阪タクシー協会としてまとまった主張が、特定地域協議会では弾かれて通らなかった。その時に、我われ大タ協はどうなるのか、ということも聞きたい。我われの主張が全く通らなかったら、特定の場で参加を止めることができるのか。
牛島憲人理事・経営委員長(松竹タクシー社長) ガイドラインで「事業者の(構成員)の3分の2以上の賛成が必要」と謳われているのだから、どれだけ値引きされたとしても、過半数の賛成が必要だと私は理解している。
薬師寺理事・最高顧問 事業者ばかりでなく自治体が結構、発言力が強いと思う。
牛島理事・経営委員長 しかし、自治体側が特定地域計画案をもってきても、事業者の3分の2が賛成しなかったら没になる。
薬師寺理事・最高顧問 それもまたたいへんで、没になった時に、その特定地域協議会は解散するのか。
足立・専務理事 特定地域のメンバーが揃い、地域計画を作成するときにはタクシー協会の意見を聞いて素案を作るが、それを協議会に諮ったとき、(事業者枠で)3分の2に達しない場合にはその計画を国土交通省は認めない。仮に合意ができても国交省がどう判断するかというのもあるが、例えば、自治体から「この地域計画は認められない」と言われれば、そこで計画はとん挫する。ここから先は個人的見解だが、地域計画を作る努力をして特定指定期間は最低2年間、その間は特定地域に残れるが、そこから先は特定地域計画を作れない地域協議会は、逆に国の方から認められないということで準特定地域に戻るのかな、という気はする。
坂本理事 次の準特定地域協議会には、ぜひ薬師寺・最高顧問に出席していただき、あの憎たらしい人の前に座ってほしい。
薬師寺理事・最高顧問 次回は参加してみよう、という気持ちはある。我われの主張はこの際、キチンと表明すべきだと思う。何も持たないで特定になっても仕方ない。会員は皆、万歳と思っているわけではない。それぞれ、ある種の不安をもっている。そのような状況なので、その不安を打ち消すための努力をしてもらい、特定地域に指定される準備をしてもらうというのが私は正しいのではないかと思う。
薬師寺理事・最高顧問 (特定地域計画が)決まった後、絶対に従わない人たちが出るのが分かった上で、大阪タクシー協会は減車する。正直者がバカを見るという言葉があちこちから出るわけだが、それはそれとして割り切って大阪タクシー協会は減車するということを議論しておく必要がある。昔はよく臨時理事会をやったものだ。臨時総会も開催した。変化の重大な問題という時に時間を惜しんでいてどうするのか。だから、臨時理事会でも何でもやったらいい。後になっていろいろと言う人が出てこないように事前に意見を集約しなければならないということを言っている。そのような努力を見せないと、まとまるものもまとまらない。