第3回大阪市域交通圏タクシー準特定地域協議会
薄氷踏む展開 特定指定論議で合意方法巡り紛糾
福岡、久留米に続き特定に特化して継続審議

2015年5月4日付・第331号

【大阪】第3回大阪市域交通圏タクシー準特定地域協議会(会長=安部誠治・関西大学社会安全学部教授)が4月27日、大阪市天王寺区の「ホテルアウィーナ大阪」で開かれ、特定地域の審議で紛糾するなどしたため、継続審議となった。

福岡のように特定地域指定審議に特化して継続する場合は「公示後45日」の規定を適用せずに日程を設定して再開できるが、新たな構成員を受け入れてほしいとの要望を受け、安部会長は次回協議会の開催について連休明けにも公示する考えを示した。

ホテルの宴会場を会場として開催された第3回大阪市域交通圏タクシー準特定地域協議会は予想通り、200人を超える参加者と随行者・取材記者らで埋まった。

会場の前方に作られた「ロ」の字のテーブルには、26人の委員(構成員=1人は委任状を安部会長に託して欠席)が座り、その後ろにタクシー事業者や労組関係者ら構成員が座るテーブル席が設けられた。

協議会が始まる直前、足立堅治・協議会事務局長が発表した出席者数は構成員250人のうち207人(委任状出席者70人含む)だった。

安部会長は冒頭、「1年少し前、第1回準特定地域協議会を開催した時に私が申し上げたのは、半年ほど先に第2回会合を開くということでしたが、その後、国の方で特定地域の指定要件を策定するのに少し手間取られ、ようやくそれが出来上がったのが昨年暮れでした。それを踏まえて本日、第2回会合を開催し、新しい改正された法の下で特定地域の指定に合意するか否かを協議し、かつ今日それをこの場で決めていただく協議会を設定させていただきました。業界労使・関係者以外の委員の方はこの会場に入り、ちょっとびっくりされたのではないかと思います。第1回会合はこれほどたくさんの人がいらっしゃらなかったのですが、本日の議題は特に事業者の皆さんの関心が高いのでこれほどの参加になったのだと思います。その辺を汲み取りいただき、積極的な議論を行っていただきたいと思います。ただ、1年間何もしなかったわけではありません。準特定協議会の中で活性化策は進めてまいりました。活性化については進めてきたと報告しておきたいと思います」と述べ議事に入った。

特定地域指定の審議では、一旦はタクシー事業者枠の構成員の合意が車両数比で過半数と発表され、続いて労組枠の賛否確認に移ろうとしたが、特定地域指定に反対する大阪MKの青木義明社長ら反対勢力から「合意」方法を巡りクレームが付き一時紛糾したことなどで、安部会長がタクシー事業者と労組代表以外の委員にこのまま特定地域指定に関する採決を続けるべきかを諮った。

松井府知事の意向を踏まえ反対を表明した大阪府以外に吹田市が「議論の結果に従おうと考えていたが、これだけ当事者であるタクシー事業者から賛否両論が出ている以上、議決を棄権するしかない」と表明したほか、利用者の熊和子・元毎日放送ラジオ局長が「肝心のタクシー事業者の方向が分かれたまま賛否を問われても困る」と保留を表明するなど継続審議支持の声が多数を占めた。

これに対し、照屋勝晴副会長(ナショナルタクシー)など大阪タクシー協会執行部や理事、労組代表からは「タクシー事業者の過半数が特定地域指定に合意しているのは明らか。このまま議決を進めるべき」と議事続行の声が相次いだ。一方、青木氏は「合意方法の根本に問題がある。神戸では全構成員が投票した結果、特定地域指定が合意されたが、その根本がないまま進めるのはおかしい」と疑義を唱えた上で「膨大な資料を読み込むにはもう少し時間が必要」と継続審議を主張した。

これらを受け、安部会長は「合意・不合意の意思確認をした書面は私が大阪タクシー協会で確認した」として書面の一部を委員に配布して確認を求め「本日の論議で賛成から反対に回った人は数を訂正するので申し出てほしい」と修正案を提示し、理解を求めたが反対勢力に「欠席の人はどうするのか」と反論されるなど収拾がつかず、最終的に青木氏らの主張を受け入れた格好になった。

協議会事務局が構成員に対し事前に行っていた「意向調査」では大阪市域交通圏に営業所を置く179社のうち162社1万2986両(96%)が母数となり、賛成が83社7224両(55・6%)、反対42社2330両、賛否の意思表示がなかったのが28社2763両、未提出が9社669両だった。この時点では賛成が合意条件の過半数を上回っていた。

ただ、賛成回答には条件が付けられたものがあり「預かり減・休車制度を創設してほしい」との要望が9社、公平な減車を求めたものが1社、30両以下の事業者には減車を対象外にしてほしいとするものが1社。これ以外に「協会長が賛成なら賛成する」としたものが1社だった。

当初から予想されていたこととは言え、薄氷を踏む議事運営となったが、特定地域指定合意要件を満たす過半数となっていたにもかかわらず反対派も納得できるよう、公明正大に投票を行うなどの慎重かつ緻密な作業と準備に欠けていたと言えそうだ。

特定地域指定合意有無に特化した継続審議は6月18日、大阪市中央区の「難波御堂筋ホール」で開かれる。