遷都千三百余年の奈良、委員全員で特定合意
非協会事業者は否決だが協会は全員賛成
否決事業者に強い減車アレルギー
2015年5月4日付・第331号
【奈良】第2回奈良市域交通圏タクシー準特定地域協議会(会長=藤井聡・京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻教授、第二次安倍内閣官房参与)が4月23日、奈良県大和郡山市の「奈良県自動車整備振興会」で開かれた。特定地域指定に関する審議では賛成多数で指定に合意した。
第2回奈良市域交通圏タクシー準特定地域協議会の特定地域指定に関する協議では、最初に藤井会長が指定賛成を表明。タクシー事業者枠では構成員7社・333両のうち賛成が5社・307両、不合意が2社・26両と賛成が過半数を大幅に上回った。運転者枠の2労組も賛成。奈良県、奈良市、奈良市自治連合会、奈良県警、奈良労働局全員が賛成し、全会一致で特定地域指定に合意した。
冒頭、藤井会長は「今、タクシーに乗って会場まできたが、もし道路上でルールがなかったらどうなるか。信号や交通法規が守られなかったら危なくて仕方がない。渋滞が起きるかもしれない。そのようなこともなく、安全にここまで来られたのは、道路交通法という国家が定めた法律があり、その法律の枠組みの中でルールが定められ、そのルールを一人ひとりが守ることによって、限られた資源の有効利用できてここまで来られた」とルールの必要性を強調。
その上で、「世の中でルールが極めて重要なのは言うまでもない。しかし、どういうわけか、わが国にはこの10~20年、ルールの撤廃が経済活性化につながるという主張がある。これは邪説、毒説、デマだ。適正なルールと自由が必要で、そのバランスを取るのが大事だというのは、大人であれば誰でも分かっている話だ。ルールが厳し過ぎるが故に、緩めることが大事だと言われ過ぎたところがあったのではないかという議論が、タクシーだけでなく、さまざまな分野で行われている。タクシーの分野でもさまざまな議論があり、国会の決議等を経て協議会が設置された」と改正タクシー特措法施行までの経緯を分かりやすく説明。
協議会運営について「タクシーを巡る適正なルール、適正な仕組みのあり方を、しっかりとそれぞれの地域の実情を踏まえて議論せよ、というのがこの協議会の趣旨。皆さんのご意見を賜わりながら、適正なタクシーの秩序のあり方の議論ができればと思っている」と述べ、適正化の実現に協力を求めた。
適正化論議では 大和交通の北浦健次専務は奈良県の需要創出に関する質問に答える形で「今、奈良県さんからタクシー業界はどのように活性化するのかという質問があったが、タクシーがしなければならないのは、まさしくそこだと思う。特に奈良県の場合は観光都市なので、観光行政にタクシーとして関わっていかなければならない。奈良県では奈良市周辺のバスを運行されているが、我われタクシー業界からすると、とんでもないことをしているな、という感じだ。タクシー事業者からすると、そんなことは止めておいてほしいと思う。ただ、そんな愚痴ばかり言っていられないので、タクシーとしては身体障害者もおられるし、小回りの効く交通機関なので、もっと奈良県でタクシーを利用していただきたい。足の不自由な方を観光地から観光地へ輸送することを、県や市にバックアップしていただき、タクシー事業者に委託していただくというような取り組みをしていただきたい。平城宮跡にしても、そこを周回するのにバスでは行けないが、ジャンボタクシーでは行けるということも聞く。タクシー事業者自体が中小企業なので、そうした知恵がなかなかない。行政側から『このような移動にタクシーは利用できないか』という提案をしていただくと、タクシー事業者からすると、ひじょうにありがたい。今運行しているグルッとバスをタクシーにやらせていただいてもいいのではないか。1回100円ではできないが、200円ならできるかもしれない」と要望した。
当日は冒頭、非協会事業者2社から地域協議会に構成員として参加することへの告知が不十分で不親切な対応があったとして、他の非加盟会社をただちに構成員として認めるよう執拗に求めたが、協議会執行部側は「法に基づき告知を行っており問題はなかった」との認識を示し、2社の要請を退けた。
次回の特定地域協議会に移行する第3回準特定地域協議会から今回外れた2社は構成員となることができる。