(一社)大阪タクシー協会 第34回理事会
三野会長 3本の矢 運賃改定で留めると表明
質疑応答で特定指定賛成・反対で侃侃諤諤

2015年2月21日付・第324号

【大阪】(一社)大阪タクシー協会(三野文男会長)は2月20日、大阪市中央区の「大阪堺筋ビル」で第34回理事会を開いた。三野会長は冒頭、所信表明を行った。改正タクシー特措法施行までの経緯を説明すると共に大阪市域の特定地域指定を視野に入れ、①減車を含む供給削減②活性化事業の推進③運賃改定――これらをアベノミクスになぞらえ「3本の矢」とし、「労働条件の改善と経営収支の改善は早期に3本目の矢を放ち、成果を得なければならない」と理解を求めた。

三野会長は第34回理事会冒頭、「女性部会が近く正式に発足する運びとなった。女性客が最近多くなっている。運転者不足については、女性運転者を積極的に充足の対象にしていきたい。その折に女性部会が発足する。ある意味で遅きに失したと思うが、女性経営者の新たな視点で、情報の発信・提言をしてほしい」とあいさつ。その上で、「本日は改正タクシー特措法に重点を置き発言したい」として、改正タクシー特措法成立に至る背景に触れ、つぎのように述べた。

「(旧タクシー特措法下では)供給過剰において協議会を組織し、供給力削減の減車に取り組み、さらに活性化を自主的に取り組むという画期的な法律の仕組みであると期待された。

自主的な減車の効果とあいまって、日車営収と賃金はそれまでの下落傾向から回復に転じたが、それは緩やかなものに留まった。

大きな原因は自主的な取り組みであるがゆえに、減車に積極的に取り組む事業者と消極的な事業者との間に不公平感が生じたからだ。

すなわち、積極的な事業者は自らの減車という犠牲の下に、1両当たり営収の向上を通じて、運転者の労働条件の回復に寄与しようというものだが、経営改善に資するものは小幅に留まってしまった。

他方、供給削減に消極的な事業者は減車という犠牲を払うことなく、利益を享受することになり、この不公平感こそがさらなる減車を進める阻害要因となっていた。

このような状況の中、供給過剰対策を今後とも効果的に進めるための制度のあり方を自公民三党からの提出により改正タクシー特措法が成立したものだ。

ここで、改正タクシー特措法の重要ポイントについて言及しておく。

①旧タクシー特措法と同様、道路運送法に基づき、新規参入は許可制、増車は届出制という規制緩和の原則は引き続き維持したまま、供給過剰地域については、その対策が講じられている。それは特定地域と準特定地域の2本立て制とした上で、特定地域に指定されている期間中においては、旧法時代と同様、新規参入も増車も禁止されており、その上に供給過剰対策の取り組みについて、地域協議会の決議の下に過去に行った減車を含め不公平感の残らない減車・営業方法の制限などの供給力削減を義務付けられた。

②特定地域における供給削減の取り組みについては、地域協議会の決議を通じて為される限り、独占禁止法の適用除外の規定が設けられた。

③運賃については、自動認可運賃制度から公定幅運賃制度に移行した――以上が改正タクシー特措法の重要項目だ。

つぎに、③の公定幅運賃制度について、①の供給過剰対策との関連性について説明する。

私たちは公定幅運賃制度の導入により、下限割れ運賃がなくなり、大いなる恩恵を受け、現場で働く運転者も理不尽な運賃がなくなり歓迎しているが、公定幅運賃制度と供給削減対策は、それぞれが関連性のない独立した制度ではなく、大きく関連し合っている。

たまたま昨年4月、消費税引き上げに伴う運賃改定があったので、公定幅運賃制度の導入が先行して実施された。

ここで、公定幅運賃が導入された根拠について説明する。

事業者が供給過剰対策として減車に取り組むとき、事業者収入減という大きなリスクがある。それに追い打ちをかけるように、地域全体での運賃値下げ競争が行われれば、二重のリスクを抱え込むことになるため、肝心の減車が進捗せず、供給過剰解消が遅れることになるとの考え方に基づき、減車に取り組む間においては、公定幅運賃制度により、運賃値下げ競争を中断し、供給過剰解消を迅速に進めることを優先すべきとする考え方に基づくものだ。従って、公定幅運賃はいただくが、供給過剰対策はご免こうむるといったご都合主義は通らない。

以上、改正タクシー特措法の概要を述べたが、供給削減について、代表的な形態である減車に絞って述べた。他に減車はせずに営業方法の制限という方法があるが、この説明は後日事務局から説明する。

ところで、大阪では厄介な問題を府と市が投げかけている。政府の規制改革会議の国家戦略特区に対する大阪府・市の提案として、タクシー優良事業者に対し、改正タクシー特措法の適用を除外して、需給規制、運賃規制の適用を除外しようとするものがある。

私たちは、改正タクシー特措法に基づき、タクシー市場特有の供給過剰への対策を、より効果的に進め、タクシーの安全性やサービス水準を一層向上させることを目的とする、この法律の準備を慎重に進め、今まさにスタートしようとしているときに、真逆の提案に対し、断固反対するものであり、これへの対応についても、国権の最高機関の力を借りなければならない。

タクシー業界労使に理解の深い議員先生方のご尽力で成立した改正タクシー特措法は、タクシー業界の現況を鑑みるとき、全国の大半の地域が特定地域に指定されるべきものだが、その指定を最小限に留めようとする政府の規制改革会議の主張によって、29地域の指定候補となった。

大阪においても、需要に見合った適正車両数と実在車両数の乖離幅が全国的にも高位にある交通圏が特定地域候補から外れるという矛盾が生じた。

以上のように、残された課題の解決には、政治の場での取り組みが残されている。それにはまず、この改正タクシー特措法の成立にご尽力いただいた議員先生がたのご期待に答えなければならない。この点においても、理事の皆さんのご理解をお願いしたい。

つぎに、運賃問題について触れたい。地域協議会の事務局を大阪タクシー協会が司ることで、多忙を極めることになるが、かといって運賃問題は一服、休憩というわけにはいかない。

疲弊したタクシー業界を立て直すには、供給力の削減という1本目の矢だけで仕留めることはできない。

新しいタクシー需要を創生する活性化事業の推進が2本目の矢である。

そして、3本目の矢が運賃改定だ。労働条件の改善と経営収支の改善は、ぜひとも早い時期に3本目の矢を放ち、成果を得なければならない。

引き続き、経営委員会、理事会において、実現のための研究に努めていただきたい。

最後に、業界紙の報道で、特定地域の指定問題について、協会執行部は一枚岩ではないのではないか、との懸念が報じられているが、去る16日に臨時五役会を開催し、つぎのように確認した。協会として会員皆さまに丁寧に説明して、特定地域になれるように今後進めていくことを全会一致で確認した」

大阪の準特定地域協議会会長を務める安部誠治・関大教授と2月26日に打ち合わせを行い、議題公示の3月10日までに近運局から講師を呼び説明会を開き、意思統一。4月27日に準特定地域協議会開催の予定。