都タクシーグループ3社、深夜割増廃止
17年ぶり実施の運賃改定の恩恵は束の間
エムケイの裁判付・運賃戦略 業界道連れ
2015年2月11日付・第323号
【京都】昨年4月の消費増税に伴う公定幅運賃の導入に合わせて17年ぶりに実施された運賃改定のおかげで、平成14年の需給調整規制撤廃以前から「規制緩和の実験場」と揶揄されてきた京都業界。エムケイの低額運賃戦略に引っ張られる格好で運賃改定を見送り、日本屈指の観光地の恩恵から遠のいていたが、ようやく人心地ついたのもつかの間だった。今回も京都業界は裁判闘争中のエムケイの運賃戦略に引っ張られた。最初に深夜早朝割増運賃廃止が認可されたのは、認可を待望していた都タクシーグループだった。
近畿運輸局は2月3日、都タクシーグループ(京都市南区、筒井基好社長、都タクシー・西都交通・都大路交通=計550両)が提出していた深夜早朝割増運賃廃止申請を認可した。 認可まで、申請から1年余りかかる「難産」だった。21日から実施予定。認可には1年間の限定条件が付与されている。
認可に当たり、近畿運輸局は昨年3月20日に発出した通達により、「賃金台帳等による運転者の時間当たり賃金の前年度分の支払い実績の報告を毎年度4月末までに行う」ことを条件とし、「深夜早朝割増の廃止又は割増率の引き下げが行われた結果、運転者の深夜早朝時間帯の時間当たり賃金が減少したことが明らかとなった場合には、認可を取り消す」としている。
一方、都タクシーグループよりも後発となるが、ほぼ同時期に深夜早朝割増料金廃止申請を提出したエムケイは、違法状態となる公定幅下限割れ運賃を適用しているため、処分対象から外れている。そのため、都タクシーグループの次に認可されるのは、キャビック、アオイタクシーグループ2社、ヤサカタクシーグループ7社、ケイテイなど北港梅田グループ3社、京都相互タクシー(旧・京都相互タクシー自動車)、京和タクシーなど滋賀交通グループ2社、ユニオンの18社。運賃で係争中のエムケイ(公定幅深夜割増廃止と同じ運賃水準)を除けば、すでに実施している6社を含め、京都市域の6割弱が深夜早朝割増なしとなるが、廃止しなくても深夜は廃止組と同じ運賃水準になるエムケイを含めると7割強に膨れ上がる。
近畿運輸局ではこれら申請中の18社の中には、原価計算書の未提出も含め書類不備により審査に手間っているところもあるとしている。黒田唯雄・近運局旅客第2課長は4日の本紙の取材に「都タクシーグループの申請を認可したことで、当局の方針が定まったことを示した。京都業界にはいろいろな事情があると聞いており、申請中の事業者の意思を確認しながら、順次認可していきたい」と答えた。
一昨年末のエムケイによる「運賃改定申請取り下げ」に続く、昨年1月の「深夜早朝割増運賃廃止申請」という暴走に対し、認可されれば京都市域のタクシーの7割が深夜早朝割増が廃止となり、廃止のメリットがなくなることを示し、これ以上業界が疲弊することに歯止めをかけ、抑止策としての「消極的申請」も含まれていた。
しかし、堰は切られた。消極的申請とされる事業者間では「深夜早朝割増廃止は労働条件悪化につながり、あってはならないことだが、現実に認可されたのなら、利用者の移動が起きないうちに、一刻も早い認可を望む」と行政への批判を込めながらも競争への参加は不可避とする声が出ている。
昨年、関西中央グループの薬師寺薫代表は記者懇談会で「ヤサカグループが申請したのには驚いた。深夜早朝割増の廃止は、5・5遠割のように一定の距離を走行した場合に割引が発生するのではなく、深夜11時以降は初乗り運賃から2割カットされる。やがては大阪に飛び火するのではないか」と懸念を表明していた。
これが、現実にならないよう祈るばかりと話す事業者は多い。