《新春インタビュー》

東京に先駆け運賃改定
三野文男・大タ協会長 2015年の抱負

2015年1月1日付・第319/320合併号

【大阪】大タ協の三野会長は昨年12月25日、大阪市の商都交通本社で本紙の質問に答え、年内に運賃改定を実現させることなど抱負を語った。

―― 会長就任の半年を振り返って一言お願いします

「私は理事会の前日にはメモ書きしてパソコンに打ち込み、私の考えが理事の皆さんにきちんと伝わるように、との思いでやっている。大タ協会長に就任してからの半年を振り返り、皆さんに陰ひなたなくご協力いただいているので、ありがたいと思っている。新聞(12月25日付)にある人の発言として「羅針盤なき航海の半年間であった」と書いてあったが、私の心境に似ていると思った。会長として、皆さんの意見をまとめ汲み取ることに努めたい」

―― 初乗り短縮運賃についてはどのように見ているのですか?

「東京ではプロジェクトチームが組まれ、実施に向け論議されている初乗り距離短縮については、大阪業界として初乗り距離を統一した場合、独禁法に抵触するのかどうかを確認しておく必要がある。会長会社が先陣を切って初乗り距離を事後加算距離1回分を短縮して実施してはどうかとの声もあるが、初乗り2kmとの混在にならないか、との懸念がある。理事の中には初乗り距離2kmを守ってほしいという意見もあるが、運賃は供給サイドだけでは決められないという側面もある。大阪市域などでは公定幅運賃があり、社会的に決まってくる運賃。今後、東京・横浜で初乗り2kmから短縮されるようなことになると、2km運賃は全国では大阪だけになってしまう。大阪だけになれば、社会的な運賃とは言えなくなってしまう」

―― 東京の動きを見届けてから動くと?

「東京で論議されている初乗り距離短縮運賃が実施されたのを見てから初乗り距離短縮をしようとしているのではない。5km、10km走ったときでも今の運賃水準のままかというと、そうではない。東京で運賃水準を上げる初乗り短縮をやるということになれば、運賃改定は東京よりも現時点では1回遅れており、東京の新運賃を見てから実施するのであれば2回遅れることになる。どちらかと言えば、遅れを取り戻すためにも、東京に先行したい。そのときに初乗り距離が短縮されるなら、それが望ましい」

―― 短縮するなら、初乗り距離はどのくらいが望ましいですか?

「過去の例からも運賃改定率は、1回の改定で1割弱となるケースが多い。仮に現在の2kmから1割、初乗り距離を短縮するとすれば、1・8kmになる。仮の話だが、そのような感覚だ。それよりも大きな問題は、公定幅の問題だ。公定幅の上下幅が、今(中型車・初乗り2km680~660円)よりも広がることになり、下限を適用する事業者が多くなれば、上限運賃改定効果が薄まってくる。だから、私が先日の理事会あいさつで言ったのは、『運賃改定が1回遅れとなっているから運賃改定を実施したいと言っても、その運賃で実質的に増収を伴うかどうか、悩ましい』ということだ。公定幅運賃が広がり、下限運賃が増えたとき、増収効果が出てきにくい。そのとき、ひょっとしたら、現在上限運賃を適用している事業者が上限ではない運賃にシフトしていく可能性もなきにしもあらず、ということが言えるのではないか」

―― UDとの兼ね合いは?

「公定幅の初乗り運賃における上下間格差は、東京30円、横浜40円、大阪20円。東京と横浜は、中小型の車種区分がなくなり、普通車に統一されているということを考慮しなければならない。大阪は中型の下に小型運賃があり、中型上限と小型下限の幅で言うと東京と同じ40円となる。今、トヨタ自動車が開発を進めている次世代タクシーは小型車の規格となる。そのようなことを考慮すると、『つぎの運賃改定は普通車に統一すべき』という意見もあり、それをどのようにまとめていくかが、一つの課題とも言える」

―― その時期は?

「消費増税が現在の8%から10%に上がる時期が当初予定されていた10月から1年半延期となった。当初は、昨年京都で行われたように、運賃認可を先にいただいておき、実施日をつぎの消費増税時期に合わせる、というようなことも考えていたが、1年半も延ばしていいのか、という考えがよぎる。大阪の運賃水準は、上限運賃の比較で言うと、横浜とは10kmで約3100円、それに対して100円安い。同じ距離では、東京とは200円ぐらい安い。15kmになると、大阪は約4600円、東京4900円で300円の差額となっている。横浜は4720円で、120円の差がある。運賃改定が周回遅れと言うが、横浜に比べたら3%程度の差となっている。一方、名古屋は中型上限で10km3340円、15kmで約5000円と高い。東京は運賃改定を吸収できるだけの経済力がある。だが、大阪は東京の周回遅れ、と言われるのは抵抗感がある。虎視眈眈と起死回生の時期をうかがっている第二集団といったところだ。意外と大阪の運賃は高い水準にある。ただ、運賃改定の時期については、昔のように6大都市同時ということはなくなっている。今は地方の時代と言われ、近畿運輸局に権限があるのだから、その辺はあまり意識しない方がいいのではないか。運賃改定は、来年中にはやりたいと思っている。方法としては、準特定地域及び特定地域では、7割(車両数比)を揃えて運賃改定のお願いをしなければならない。申請に対する認可ではなく、行政が作業をして新しい公定幅を公示することになる。その期間は半年程度と言われている。業界をまとめるのは、6月までに行わなければならない。ただ、次回地域協議会の開催時期としては、(パブコメ後)特定地域が公示される時期よりも前に実施するのは難しいと思う。5、6月の開催が妥当だろう。それまでに業界のコンセンサスを得ておかなければならない」

―― 若手理事の発言が増えてきました

「若手理事の積極的な意見が出てきているが、まだまだ一部の人が繰り返し発言している状況だ。もっと多数の理事が発言していただきたい。大阪における乗り場問題には、中小型車の車種区分問題や近距離問題があったが、乗り場の設置そのものについて軽視してきたような気がする。JR大阪駅では、北側の1階には乗り場がない。不便な2階にEV、ハイブリッド車両などエコカーに限られた乗り場があるが、実態としてはほとんど利用されていないような状況だ。今回の西口(桜橋口)への移転についても、身体の不自由な人に不便になっている。この点を改善していかなければならない。降り場ぐらいは便利なところに降ろせるようにしてほしい。JR大阪駅のような大きな構造なら、利用者が『ここで降ろしてほしい』という要望にできるだけ添えるようにしないといけない。JR線の大阪駅と阪急百貨店間高架下に降り場を設置してはどうかという意見もあるが、駅東側にはそこしか降り場がないということになれば、かえって不評を買うようなことになってしまう。私は『タクシー降車ゾーン』のような区域を設定し、駅北側も含め、そのゾーンで降ろせるようにしたらどうかと思っている」

―― 今年、理事や会員に望むことは?

「薄氷を踏むような思いで、ソロリ、ソロリと行く。理事の皆さんの意思と会員の皆さんの総意を汲み取り、協会運営をしていきたい。理事の皆さん一人ひとりが勉強して、自らの判断力をつけていかないと、協会全体の運営は難しい。それが望ましい姿だ。もう少し、多くの理事に発言していただき、現実を解決するような具体的な提案をしたほしいと思っている」

(2014年12月25日、商都交通本社で)