遠割の扱いは?  京都の取り下げを認めるのか?
阿部・近運局自動車交通部長に緊急インタビュー

2014年1月1日付・第280号

【大阪】昨年12月27日、京都市域で運賃改定申請していた9社が申請を取り下げた。エムケイが公示後取り下げれば新運賃に影響ないとして申請取り下げを表明したことの影響と見れらる。行政はこの事態をどう見ているのか。暮れも押し迫る昨年12月25日、阿部自動車交通部長に緊急インタビューを行った。要旨はつぎの通り。

―― タクシー新法の通達パブコメが出た。遠距離割引運賃はどのような扱いになるのか?

阿部  遠距離割引については、短い距離での極端な割引は認められないことになるだろう。その距離がどのような距離になるのかは現段階では分からないが、運輸局長が地域の状況に応じて定めた運賃額に相当する距離ということになる。その定めた距離以内において、公定幅運賃の下限を下回る運賃について個別に認可することになる。

運賃額は、ある一定の線で運輸局が固定することになるだろう。だから、例えば大阪だったら5000円、9000円を超える運賃に対して割引が行われているが、その運賃額が一定になり、例えば9000円に相当する距離を超える運賃に対する割引を認めるということになれば、5000円を超える運賃についての公的幅運賃、その下限を下回る割引は認められないということを意味しているのだろうと思う。

収支が償われるかどうかについては、平年度でみることになるので、割引運賃を含め全体の収支が償われればよいことになるだろう。

―― 新地域協議会では、運輸局は議長にも事務局にもなれないとある。どのように関わるのか?

阿部  今回の法律では、地域計画を国が認定する仕組みになっている。これまでの法律では、事業者の特定事業計画のみを認定するということだった。今回は上位の協議会が策定する地域計画を国が認定することになったので、その地域協議会に国が会長や事務局で入ると、国が作った計画を国が認定するというおかしな仕組みになる。法律論として取り入れることはできない、という法律論的なことでそうした仕組みになったと聞いている。

実際には、付帯決議に書いてあるように、運輸局が円滑な運営に協力することになるので、表には出られないが、黒子の部分では最大限の協力をすることになると思う。新法の解釈など法律的な部分については、われわれがサポートしていくことになるだろう。多分、運輸局は協議会には出るのだろうと思う。必要であれば、補助的に発言したりしていくことになる。

会長は中立的な立場の人が望ましい。これまでの地域協議会では運輸局が中立的な立場で仕切ることができたのでよかったと思うが、中立的な立場というのは運輸局でなければできないということにはならない。

例えば、学識経験者が委員におられるので、そういう人を会長に選んでいただくことになるのだろうと思う。協議会においては、行政でなければコメントできないような部分について、われわれが支援していくことになるだろう。現在の協議会は、会長が事務局を指名する仕組みになっている。業界団体が推す人が会長になった場合、協議会が承認すればその業界団体が事務局になるということは考えられる。

―― 京都市域の新運賃が公示された。取り下げ願いを認めればこれまで以上に運賃格差が出てくる。その対応は?

阿部  申請の取り下げは、法律的に位置付けられている手続きではない。あくまでも運用上その都度、「取り下げたい」「分かりました」ということをやってきた。だから、取り下げるのかどうかということは、そのような話が具体的にあったときにその都度判断することになる。法的には、申請があれば、それに対して認可(処分)することだけで取り下げを認める、認めないということはない。

取り下げ申請という行為以外に、運賃改定申請している事業者が今回の公示運賃に対して申請しないということもありうる。未申請事業者がどうするか、ということもある。今の運賃制度の中では、運賃がバラつく可能性は常に付きまとう。運賃が大きくバラつくことが望ましいこととは思われないが、ルールとして認められている。

仮に、取り下げ申請があり、それを受理したからと言って、公示された京都市域の新運賃に対する影響はない。また、京都での今回の公示は、現在の道運法に基づく手続き。新法に基づき準特定地域になり、公定幅運賃が公示されたときの話とはまったく別の話。

新法に基づき公定幅運賃を適用しなかった事業者に対しては、指導勧告、是正命令を行い、それでも従わない場合は行政処分という手順を踏むことになる。公定幅運賃の幅がどのようになるかは現段階では分からない。時間はかかるかもしれないが、最終的にすべて公定幅に収れんされていくというのが新法の考え方だ。

―― ハイヤーの扱いは?

阿部  タクシーと同じような形態で運行するハイヤーがあるということは、われわれも承知しているし、本省も知っている。新法の国会審議の中でも、タクシーの規制逃れの便法としてのハイヤーは認めないという旨の答弁をしていると思う。

ハイヤーがタクシーの減車逃れに使われないような運用をしていく必要がある、という答弁をしていたと思う。今回の公示・通達はそれを反映したものになっているはず。

顧客層がまったく同じであるにもかかわらず、少しだけ違う手法で営業することによって「これはハイヤーだから規制の網から外れる」ということにはならないようにしていく。

―― 基準日を動かすのか?

阿部  現在の法律下では、2009年7月11日時点の数字を基準としているが、それが動く可能性はあると思う。しかし、その場合でも「これまでの減車努力を反映する」ことが前提となる設計・運用の仕方になるのだろうと思う。

―― 読者へひとこと。

阿部  特定地域というのは、目的ではない。特定地域に指定されて「よかった」、という発想はよくないと思う。タクシーをよくするためには、利用者を増やす努力を忘れてはならない。むしろ、地方の事業者の方が、地域に密着して利用者を増やす努力をしているように思う。路線バスが撤退し、タクシーが「最後の足」として頼りにされ、機能しているケースも少なくない。大都市ほど、自治体の交通政策との縁が遠くなり、そのためか地域の足として機能させるための経営者の努力が見えにくいように思える。

タクシー事業者から「このようなサービスを地域の足として提案します」という企業が出てくるよう、提案力を磨いてほしい。

五輪という特需があることがひとつのきっかけになると思うが、観光、インバウンドに対する取り組みを東京は目に見える形でやっている。目に見える形で利用者を増やす努力をやっていかないと、世間からの理解が得られない。

今回の新法の制定にあたっての一般紙の論調は皆さんご存知だとは思うが、かなりの違和感をもって受け取られていたと思う。何でそのように見られるかを考えていかなければならない。他産業ではやっている努力を果たしてタクシーの経営者はやっているのか、と見られている。

タクシーは特殊な業態なので、単純に製造業などと同列視することはできないとは思うが、ひとつの産業である以上は世間から求められるような努力をしていかねばならない。

―― ありがとうございました。