住み分け理論崩壊 大阪メトロがタクシー市場に殴り込み

2021年2月12日・第510/215号

大阪市生野区、平野区の一部地域で3月30日から1年間、AIオンデマンド交通社会実験が行われる。

運賃は大人210円。実験地域内の「ミーティングスポット」数十カ所でのみ乗降ができる。電話やスマホからの配車要請に応じ、乗合を前提にしたコースがAIで組まれ、運転者のタブレットに「運行指示」が表示される。

使用する車両はトヨタ・ハイエースコミュータ14人乗を8人乗に改造したもの。乗車人員からはタクシーに分類される。運行時間は朝6時から夜11時までと、地域住民が外出移動する時間帯をほぼ網羅する。そのため、近運局も「形態がタクシーによく似ており、タクシー業界に十分な説明と理解をする努力が必要」と実施事業者の大阪メトロに注文を付けていた。

タクシー業界にとっては、「タクシーによく似ている」という基本部分の整理が大阪メトロ側と十分につかないまま、内田会長の判断で見切り発車した格好だ。

事実、平野区でタクシー運転者をしている男性は、「死活問題。タクシー類似行為であることが明らかで、営収は10%~15%減収になると予想している」と怒りが収まらないという状況だ。

大阪メトロの3月期業績予想は純損益が38億円の赤字の見込みだ。その赤字会社がさらに赤字覚悟で乗り込んできた。タクシー業界は「バスとタクシーの住み分け」理論はすでに崩壊したと理解し、反転攻勢を考えるときだろう。

<山田>

写真:開催直前に資料に目を通す内田会長