大阪のAIオンデマンド いがみ合いは百害あって一利なし

2020年12月1日・第505/210号

大阪メトロが来年3月から1年、実施予定のAIオンデマンド交通社会実験は、MaaSの枠組みでも重要な役割を果たす「ラスト・ワンマイル」を担う輸送のあり方の模索の一つでもある。

地域を300m四方のマス目で埋めた網で覆い、簡易停留所の「コミュニティースポット」が、既存停留所と合わせて約300mごとに設置されるという方法は、新たな発想のようだが、これでは、まるで加賀第一交通(工合田修身社長)がすでに加賀市で実施している乗合タクシーのパクリだ。

すでに、読者の皆さんはお分かりのように、MaaSのラスト・ワンマイルをAIオンデマンド交通が担うという説明には少々無理がある。

というのは、ラスト・ワンマイルをモビリティーが担う大きな理由の一つに、シームレスな手続きの他に、玄関口まで高齢者や障害者、大きな荷物を持つ人の移動に供するというのがある。かたや便利さの追求なら、かたや安心の追求とでも呼ばれようか。

そのラスト・ワンマイルの移動に、多少の距離は歩かなければならないAIオンデマンド交通が相応しくないというのは明らかだ。また、少し遠くへの移動には、まずAIオンデマンド交通を利用して、路線バスや地下鉄に乗り換えて下さい、というのは移動困難者には苦痛でしかない。

タクシーと大阪メトロは、本来協力関係を保たなければならない公共交通機関でもある。両者がシェア争いを始め、いがみ合うなら、大阪市民にとって百害あって一利なしだ。

<山田>