AIオンデマンドで拗れ始めた大阪市・メトロとタクシー業界

2020年11月21日・第504/209号

前号に続き、今回も来年3月から1年間予定されている大阪市と大阪メトロのAIオンデマンド交通社会実験について書かなければならない。

そもそも、この件で大阪メトロと大阪市が相次いで大阪タクシー協会を訪問したのは、大阪市が実施する社会実験の公募が始まっている8月初旬からだったと記憶している。

自治体が自家用車両で乗合事業を行うには、地域公共交通会議を開き、地域の関係者から合意を得なければならない。大阪市は7月頃までに近運局に相談したところ、局は競合関係になる恐れのある、地域のタクシー事業者に理解が得られるよう説明すべきとして、大阪タクシー協会に行くように勧めたという。

市が要求したのはAIで運行効率を上げるデマンド交通。応募のための蓋を開ければ、事前にIT企業等とのすり合わせを行い、初めて土俵に上がれる仕組みになっていた。

今回の市のプロポーザルで社会実験事業を受託したのは、大阪メトロ。市と資本関係も人的交流もある両者は、1年以上前から情報を共有するなど、少なくとも当該地域を営業区域とするタクシー事業者よりも優位な立場にあったであろうことは想像に難くない。

だが、9カ所のタクシー営業所がある生野区と平野区を実験区域に選び、最大39両、朝から深夜まで1人でもワゴン車を運行する予定ということから、乗合というよりも、採算を度外視したタクシー運行だと言われても仕方がない。

末満・近運局自交部長は定例会見で「ほぼタクシーに似ている事業なのでどうか」と本紙の質問に答える形で疑義を呈した。今までの流れからも、ただちに理解を得るのは難しいことは明らかだろう。

<山田>