大阪メトロの提案はタクシーの「クリームスキミング」か?

2020年11月11日・第503/208号

大阪市交通局の民営化で誕生した大阪メトロの配下にある大阪シティバスがタクシー分野に「逆参入」する準備を進めている。

大阪メトロは民営化にあたり、地下鉄利用者が駅から自宅や目的地までの「ラスト・ワンマイル」に対する利便性を高めるため、この数年、モビリティ・サービスの研究に取組み、EV自動運転も選択肢の一つにしていた。

大阪メトロと大阪市は8月、相次いで大阪タクシー協会に社会実験の概要を説明して「オンデマンド交通」への協力を呼びかけた。松井市長が言う「事業として成立するか検証」するためにも、実はタクシーを疎外する必要があり、こうした布石を打ったのでは、という穿った見方もある。

はたして、8月初旬から1カ月弱のプロポーザル期間では準備期間が短かすぎ、平等性を欠いたことなどで、タクシー業界から応募はなかったもようた。最終的に大阪メトログループが立案した生野区と平野区でのワゴン車39両によるAIオンデマンド交通社会実験案が採用された。そのうち、ワゴン車6両と運行本数が少ない生野区は大阪メトロの担当者を招き、説明会を開催する。

しかし、大阪市が求めた提案の着眼点の3点目には「クリームスキミング的な運用をすることなく既存の公共交通ネットワークと連携・調和されたもの」――と掲げられており、これに反する提案なら応募は受理されないはずだった。

これからの論議では、既存タクシー事業者との競合関係となるクリームスキミング(いいとこどり)があるか否かに焦点を絞るべきだろう。AIオンデマンド交通という性格から、共有できるプラットフォームがないかぎり、タクシー業界が要求する「連携・情報の共有化」が画餅に帰すことは、火を見るよりも明らかだ。

<山田>