《人気コラム》
植田耕二氏著「ハイタク記者半世紀回想録19」
「従順ならざる唯一の業界紙」
前回のコラムで、今から40数年前に『交通界速報』創刊5周年を迎え作成した新聞づくりの基本理念3ヵ条を紹介した。
引用した創刊5周年を迎えて、と題する社説の後段に「われわれとしても、さきに出発時に考えたような初歩的な新聞づくりの心構えだけでは、多面的多様な諸課題をかかえ込んでいる交通業界の情勢に適応することは不可能で、より高い次元に自らを立たしめねばならないときにきているのである。そのため記者全体の質的レベルを向上させ、あらためて、われわれの使命、役割はなにかということを問わなければならないのである。
この5周年は、ひとつのくぎり目として、これを機に再出発のテーゼともいうべきものをつくりあげる必要に迫られている。組織内部では、すでにそのための討論をかさねており、近くわれわれの『新聞編集綱領』ともいうべきものをまとめあげる段階にきている」として、本紙を支えていただいた多くの読者に「率直なご意見を」求めているのである。
こうした手続きの後、週刊の『日本交通新聞』を創刊する準備過程に入った中で、いわゆる『新聞編集綱領』をつくりあげていった。その『新聞編集綱領』を下記に掲載する。
1、交通産業の発展をめざし創造的革新に寄与するため正確な現状分析と新鮮な問題提起を行なう。
1、交通産業を国民経済の中に正しく位置づけるため、交通産業内外の対話・交流を促進させる。
1、交通産業の指針となる報道を行うため、常に鋭い批判精神と豊かな創造性を保持する。
以上の3項目からなるトラモンド社の前身、株)交通界の『新聞編集綱領』である。この綱領の精神で休刊を宣するまで、いかほど実践・実行できたかは、はなはだ疑問である。
不勉強な筆者の欠陥を補強するため交通産業に詳しい経済学者(マルクス経済学者や近代経済学者を問わず)などにご寄稿を願い、正確な現状分析と率直な問題提起を行ってもらった。
また、交通産業内外の対話・交流を促進するため、利用者代表のご寄稿を願うとともに、日常的に交通産業に従事する経営者や管理職、乗務員の人たちに、その声に答えてもらった。
最後の条項にある、常に鋭い批判精神と豊かな創造性を保持する云々は、果たしてどうだったか? 自己評価より他者の評価がより大切であろう。グーグルでもヤフーでも結構。植田耕二で検索してもらえば「従順ならざる唯一の業界紙・引っかかりメモ」としてトラモンド休刊の挨拶がトップで出ている。
書いた人は筆者不知の人。読者の方々も是非読んでもらいたいものだ。(以下次号に続く)