《人気コラム》
植田耕二氏著「ハイタク記者半世紀回想録18」

「新聞の本質的機能は批判精神と野党精神!」

2011年10月31日付 第183号掲載

話が横道にそれたが本論に戻り記者回想録を続けることにする。いまから約40年前、トラモンドの前身『交通界速報』創刊5周年を迎えて、と題する筆者の書いた社説が『月刊交通界』に掲載されている。

ここにそれを引用したい。「本紙はこの5月をもって創刊五周年を迎えることになった。めぐるましく変貌する社会情勢と交通業界のなかにあって、いつもその使命を果たしてきたかどうか、ということになれば、自己の無力を反省せざるを得ない実態だ」。

(中略)「とにかく、それはそれとしてこの五ヵ年を通じ当社の基盤をつくることができた。これも一重に読者の支持と協力のたまものであり、この機会に、われわれの心からなる謝意を表したい。

短いといえば短いこの五ヵ年、ガムシャラに情勢ともおいかけっこをしてきたわけであるが、その間、いろいろな経験とさまざま教訓を学び取ってきた。いま新たなスタートラインに立って、これらの経験と教訓を振り返り、今後の本紙発展の足がかりとしていきたい」(中略)「われわれが創刊にあたって新聞づくりの基本理念というか、心構えと考えていたものは、およそ次のようなものであった。

①数多くある既存交通関係紙のなかで、オリジナルなものにしたい。②新聞の本質的な機能は批判精神であり、野党精神である。その自覚を意識的に保っていきたい。③経営の基盤を広く読者に求めたい」。

(中略)「この3点を柱として個性ある新聞をつくり、その紙面を通じ、日々発展する交通業界に、なんらかの寄与をつづけたいと念願したのである。当りまえのことといわれれば当りまえのことであり、初歩的といわれれば初歩的である。しかし、そこから出発したのであった。

そのため、記事内容が稚拙なものであっても、足でかかれたものは尊重し、マスコミに失われたものを、ミニコミとしての機能のなかで拾い上げていく。そのなかで記者個人の眼を大切にしていきたいと考えた」。

(中略)「先の3点を保持するためには、なによりも経営の基盤を健全化する必要がある。いままでの業界紙の多くが広告収入に依存しているため、その方面からくる圧力に弱く、新聞本来の機能を果たし得ない面が多かった。オリジナルなものであり、批判精神を失わない新聞の本来の機能を高めるためにも、広範な読者の支持を得て、購読料を基礎とした経営の健全化をはかっていきたい」。

筆者は、この基本理念にしたがって、北は北海道から南は九州まで各地に支局を設置し、筆者自ら社員の先頭に立って広範な読者の獲得に取り組んだのである。(以下次号に続く)