自動運転と安心安全は両立するか

2015年10月1日・第344号

ライドシェアだけでなく、ロボットタクシー実用化に向けた実証実験のマスコミ報道など、最近は何かと見出しが躍る。人が利用する「乗物」だが、果たして利用者は無人で走るタクシーに安心安全を感じるだろうか。

10月1日付一般紙は「政府は来年初めから、運転手が乗らずに目的地まで乗客を運ぶ自動運転タクシー」を東京五輪までに実用化させるため、実証実験として神奈川県藤沢で50人の住民モニターを乗せ、自宅から約3㎞先のスーパーまで走らせる、と報道した。

もっとも、この実証実験には安全のため2人の乗務員が乗るというから、人が軌道のない道を無人で走る乗物に乗り、不測の事態に陥った時、どのような精神状態に陥るかを調べようということではない。だから、そのような調査は実用化される直前か、実用化後にしかできないのかもしれない。

少し前、路線バスの運転士が運行中に脳溢血となり、乗り合わせた乗客が冷静にブレーキを引き、事なきを得たというニュースがあった。これは30~60歳の男性の運転免許取得率が8割を超える現代だからこそ、咄嗟の措置に動けたと考えるべきではないのか。

けれども、自動運転タクシーが実用されたらどうなるのか。子供や高齢者が乗った時、運悪く誤走したらどう修正していいか分からず、大惨事になる可能性も残る。

技術の進歩に水差すつもりは毛頭ないが、旅客機の場合、自動操縦時でも「何かあったときのため」機長は監視を続ける。自動運転と安心安全は両立するのか。ここは人の目線で考える必要があるだろう。

<山田>

※10月1日付・旬刊「トラポルト」第344号、旬刊「トラポルト九州」第49号「正論・対論」より/写真:DeNAの子会社・ロボットタクシーのホームページでアップしている画像・レーザーセンサーのデ―タ解析画面。同社は、異なるセンサーからのデータを融合認識し、刻一刻と変化する実世界環境で確実に機能する頑強な自車周辺の環境認識技術の確立に向け、実験を進めるとしている