長年ハンディ背負った京都の運賃競争

2015年6月1日・第333号

シェア2割を保持する京都の大手・ヤサカグループ7社が1年余り前に申請していた深夜早朝割増料金廃止の取り下げ願いを5月22日、届け出た。

かつてMKが1980年代、運賃改定後に利用者が減少したことを理由に改定前運賃に戻す申請を行ったことを発端とする国との行政訴訟が和解し、値下げ運賃を実施したのが22年前。

この時から、「規制緩和の実験場」と揶揄されてきた京都業界だが、現在MK以外の12社が深夜早朝割増廃止に至っている遠因はここにあった。以降、MKの運賃は他の事業者とおよそ1割程度の格差を保ってきたが、昨年17年ぶりの運賃改定が実施された関係で、その格差は2割に拡大した。

これが、MKが深夜早朝割増を廃止しなくても、深夜は他社よりも多少安いユエンだ。もちろん、MKは公定幅下限を下回る「違法状態」で営業を続けている。

合法運賃のヤサカグループは申請取り下げの理由について「運転者の声を尊重したこと、4月の営収が昨年を上回ったこと、深夜に営業する運転者はさほど多くないこと」などを挙げた。一方、MKは昨年9月以降、前年実績を上回り続けている。客観的に見れば、両社の夜間顧客の住分けが再構築され、もはや互いに他社に流出しなくなったからのようでもある。

しかし他方、MKに対抗するため割増運賃廃止を続けなければならない事業者は現存する。シェア15%の会社が運賃ジャックをした影響がどれほど大きいか。規制緩和の実験場、その後の実態だ。

<山田>

※6月1日付・旬刊「トラポルト」第333号、旬刊「トラポルト九州」第38号「正論・対論」より/写真:2015年1月8日、大阪地裁記者クラブで公定幅下限割れ運賃仮処分を認めた大阪高裁判決を受け記者会見に臨む青木信明・MK社長