例年とは違って聞こえた寺田旅客課長の講演

2015年1月21日・第321号

富田会長は年初の第27回常任理事会で所信表明を行い、年末示されたパブコメに関連し「全国指定地域の車両総数は30%台に抑えられ、旧特措法時代に積み残した課題である不公平感の全国的な解消は、困難なものとなってしまった」と残念がった。

しかし、大局的に考えると、この富田発言は矛盾している。常任理事会で富田会長の所信表明に先んじて講演を行った寺田旅客課長は、質疑応答で三浦副会長が「報道では東京は特定地域から外れるなど、いくつかが挙げられているが、東京はどうなのか」と質問すると、「パブコメの段階なので回答は控えたい」と答えた。

現段階ではパブコメを募集している段階なので、今言うと影響が出るからなのか、文字通りパブコメの内容次第で予め想定している基準そのものが変わることもありうることに配慮したからかは定かではない。だが、富田会長がその直後に行った所信表明で「30%に抑えられた」と発言したのは、舞台裏が透けて見えるようで興味深い。多分、そうなのだろう。

よく霞が関は守旧派と規制緩和派がいつもせめぎ合っていると言われる。パブコメとて特定地域をもっと増やせ、という勢力の声ばかりではないかもしれない。

寺田課長は講演で、国の政策に合致した活性化に取り組む事業者については、マスコミのタクシー批判報道にひるむことなる正当に評価したい意向を示した。「潮目の変化」はすでに公取委だけでなく、ここまで来ていることを理解する必要がありそうだ。

<山田>

※1月21日付・旬刊「トラポルト」第321号、旬刊「トラポルト九州」第26号「正論・対論」より/写真:2015年1月15日、東京・千代田区の「経団連会館」で行われた全タク連第27回常任理事会で講演する寺田吉道・国土交通省自動車局旅客課長