肌で感じて理解すべき「世界標準」

2015年1月1日・第319/320合併号

暮れも押し迫る昨年12月29日、大阪市内のホテルで、関協理事長に就任した古知愛一郎氏(北港梅田グループ代表)の在阪記者懇談会があった。

古知氏は川鍋一朗・東タ協会長の呼びかけで昨年11月に実現したロンドンタクシー視察に行ってきた一人でもある。古知氏はロンドンでの感想を「カルチャーショックだった」と率直に語った。同行した他の東京の事業者も異口同音、同じ感想をもったという。

何がショックだったのかと聞くと、「人が中心となりタクシー事業が運営されている。ロンドンはタクシー先進国だということが、身を以て理解できた」との答えが返ってきた。

記者はロンドンタクシーと聞くと、個人事業でたいへん難しい地理試験等をパスした人がなれるということぐらいしか知らないが、実際には制度そのものが毎年変わっており、運賃はプライスキャップ制になっているということだった。日本のような増車ラッシュはなく、約2万5千人のドライバーは事実上6kmを限度とした走行と健康状態など何らかの理由による毎年500人の新陳代謝があり、結果として需給調整が「神の見えざる手」で守られているとか。長距離利用には別に規制のないプライベートハイヤーが用意されているという。

古知氏が例え話で示したのは、ロンドンタクシーのドライバーは日本のすし職人に似ているというもので、「高級すし店に行き、いきなりタコやうなぎと言ったら『帰れ』と言われるだろう。それと同じで目的の所在地を言ったら客は道順を指示できない。もし指示したら『降りてくれ』と言われるが、それは乗車拒否にならない」。

事実上の規制がある分野とない分野の住分け。川鍋会長はこのような「世界標準」があることを肌で感じてほしかったのではないだろうか。その意味で、今回のロンドン視察は成功と言えそうだ。

<山田>

※1月1日付・旬刊「トラポルト」第319/320合併号、旬刊「トラポルト九州」第24/25合併号(2015新年特別編集号)「正論・対論」より/写真:2014年12月29日、大阪市の「リーガロイヤルホテル」で在阪記者と懇談する古知愛一郎氏