橋下市長の大阪タクシー特区は鳴りを潜めたが…
2014年10月21日・第312号
橋下徹・大阪市長が提案していた大阪市域におけるタクシー特区が先送りになった。タクシー業界関係者はホッとした、というのが本音だろう。
そもそも、今回のタクシー特区構想は、ハナから本気度を疑わざるをえなかった。というのも、記者会見における橋下市長の言動が、特に辛辣な質問もしていないのに、自らみるみる変化していったからである。
最初は、「制緩和で遠距離利用が安くなったのは評価できる点」などと言っていたが、最後の方になると「労働環境が整い、接客サービスの良い運転者がいる会社なら、それに対すする費用もかかる。結果的に公定幅の枠に入るなど高い運賃もありだ」となっていく。
このような変化を見ていると、どれが市長の本音なのか見極めに苦しむ。サービス水準が一定のレベルに達している会社には増車などのインセンティブを与えるというが、市長が言うように、府外から意中の企業を誘致するには、税制を優遇したり、土地建物が他よりも安く利用できるなど、「来てほしい」と、目に見えたアドバンテージ施策がなければ誰も食指を伸ばさない。
日本の優秀な企業や人材が、なぜ海外、特に米国に出ていくかということを考えれば、火を見るよりも明らかだ。
記者は、そのような「本気度の希薄さ」も含めて、市長のタクシー特区構想には疑問をもっていた。果たして、何のために急遽記者会見を開き、あのようなことを言い始めたのだろうか。
むしろ、気になるのは準特定地域指定の解除。2割減車を達成し、日車営収が平成13年を上回っているとされる大阪南部の泉州交通圏。いまや鉄砲玉はどこから飛んでくるか分からない。三野・大タ協会長が言われるように四方八方に目を配り、結束を忘れず引き続き注視することが必要だろう。
<山田>
※10月21日付・旬刊「トラポルト」第312号「正論・対論」より/写真:10月17日に行われた(一社)大阪タクシー協会・第33回理事会冒頭あいさつで、タクシー特区が先送りされ、「今後も危機感をもって注視する必要がある」と訴える三野会長