橋下・大阪市長、タクシー特区の本気度は?

2014年9月1日・第307号

橋下・大阪市長が国家戦略特区の提案項目にタクシー規制緩和を盛り込んだ。全国有数のサービスに定評のある事業者を招へいし、増加する外国人観光客の第一印象を高めたいと鼻息は荒い。

  橋下市長は8月29日の記者会見で、再びタクシー特区について雄弁に語った。橋下氏は、タクシーのサービスは規制緩和前も後も変わらないが、運賃は安くなり長距離が利用しやすくなったと、自らの利用経験を踏まえて評価した。

そのうえで、運転者の質や事業者責任による労働環境に一定の基準を設け、それに合致した事業者を何らかの形で優遇したい考えのようだ。

ところが、会見の最初では、規制緩和で安い運賃が出現したことを挙げ評価したが、雄弁に語るうちに「質の高いサービスをクリアするために髙い運賃が出てくるかもしれない」と、髙い運賃も条件付きで容認し始めた。辻褄の合わない会見に呆れたのは記者だけだろうか。

参入規制を撤廃した特区にしたいとする一番の理由は、橋下市長の「頭の中には2、3あるが、その社名は言えない」会社を誘致し、それらの会社だけに増車を認めることにある、とも取れそうだ。ともかく、タクシー優勝劣敗のビジネスモデルを大阪で実現させたいらしい。

現実には、サービスと質の良い参入しそうな会社はすでに大阪に進出している。それら以外の会社の進出は、少なくとも国内をみる限りは考えにくい。それに加え、特区の概要を読む限り、「優良な会社に、ぜひとも来てほしい」熱意が読み取れる具体的なアドバンテージ政策は見当たらない。橋下市長は、どこまで本気なのか?

<山田>

※9月1日付・旬刊「トラポルト」第307号「正論・対論」より/写真:9月1日付『MK新聞』 一面に掲載された大見出し「タクシー特区を提案した橋下市長に/MKグループは敬意を表します」トップ記事で扱われた8月19日の橋下市長記者会見写真