「控訴せず」に国交省の苦悩が見てとれる
2014年8月1日・第304号
規制改革会議で国交省の瓦林・旅客課長(当時)が、7月中に特定地域指定に関するパブリックコメントを公募するとしていたが、間もなく8月になろうとしている。一体、どうなっているのか? という声が聞こえてきそうだ。
関係者の話では、当初この夏にもと言われていたのが秋になり、冗談ではなく、冬を越すのではないかとも言われている。秋には内閣改造で体制が一新するかもしれないという不確定要素を含めての観測だろう。
その兆候は、規制改革会議だけでなく、行政訴訟判決への国の対応にも垣間見ることができた。その一つが、大阪のなみはやグループが監査累積点数に基づき、事業許可取り消し処分となる80点を超えたカウント方法に対し、不服として事業許可取り消しの無効を求めて大阪地裁に提訴した行政訴訟だ。
3年余り行われたこの裁判は6月26日に国・近畿運輸局が全面敗訴となる判決が下されることとなり、田中裁判長は「裁量権の逸脱があった」と厳しく断じ、原告の主張を全面的に認めた。
しかし、国・近運局は控訴期限の7月10日深夜を過ぎても控訴手続きをせず、判決が確定した。かつてのように国に対し、控訴を熱望することは労組にも事業者にもなかった。
これまでは国が新たな証拠を見い出そうと控訴した裁判もあったが、今回は「控訴せず」の理由を昨年の監査基準・方針改定に求めている。その説明はしどろもどろにも聞こえる。ここに国交省の苦悩が見て取れそうだ。
<山田>
※8月1日付・旬刊「トラポルト」第304号「正論・対論」より/写真:7月23日の全個協第2回定時総会終了後の懇親会で「ひと・まち・しごと創生本部」準備室を立ち上げると発表する田端浩・国土交通省自動車局長