LCCとMKの「格安」に共通点はあるか
2014年5月26日・第297号
LCC(格安航空会社)のひとつ、ピーチ・アビエーションは、4月に突如、5月から半年間、2千余便の定期便を欠航すると発表した。一体、何が起きたのか。
ピーチ社は関空に本社を置き、ANAホールディングスが38%出資する国内有数のLCC。関空~新千歳間5000円前後の低価格運賃を武器に、平均搭乗率が損益分岐点とされる70%を超えて経営も軌道に乗っていた、と思われていた。
ところで、国際民間航空機関(ICAO)の予測では、2030年にアジア・太平洋地域で必要になるパイロットは約23万人で、2010年の4・5倍になるとしている。
世界で飛んでいる航空機のほとんどがボーイングかエアバス製なので、パイロットの運航技術は世界共通。需要増を背景に、待遇の低いLCCパイロットの引き抜き合戦が世界規模で行われているからなのだそうだ。
米国発のLCCが世界に拡大し、対抗するために、やむなく国策として始まったとも言える日本のLCCだが、ローコストを支えるため、つまり「実車率」と「稼働率」を挙げるため、裏ではあらゆる「規制緩和」が断行されていると言われている。
経験抱負なパイロットが流出し、穴埋めに即成パイロットを当てられたのでは、国交省が推進する「安全確保」は疎かになり、大事故につながらないとも限らない。タクシーではMKの仮処分申請が通り、公定幅への運賃変更命令は遠のいた。「格安は国民のため」という風潮には大きく異議を唱えたい。
<山田>
※5月26日付・週刊「トラポルト」第297号「正論・対論」より/写真:ピーチ・アビエーションの航空機