高齢者対策の一歩先を考えよう

2013年9月9日・第267号

65歳以上の高齢運転者を対象にした高齢運転者安全運転研修が、大阪タクシーセンターで始まった。

これは昨年、大阪府タクシー合同地域協議会の委員である安部誠治・関西大学社会安全学部教授が、安全確保のため運転者年齢に一定の線引きをすべき、と主張したことが、そもそものきっかけだ。

その後、事業者や労組代表者など関係者による幹事会を幾度となく開催。一時はワンコインタクシー協会の町野勝康・代表理事対自動車交通部長という構図が生まれるほど喧々囂々の論議を経て合意に至った。

しかし、人の命を預かり、日夜雨の日も風の日も、真夏の熱中症になりかかりながらも運転しなければならないプロドライバーには年齢の制限を、例えば68歳や70歳で引くべきと 考える多くの一般的な人からは、この結果はどう映るのだろうか。

一方では、本紙一面で報道しているように、高齢運転者の労働意欲の足を引っ張る現在の年金制度の再考を促す取り組みをしようとしている。経営者は減少する労働力を少しでも上向かせようと必至なのだ。

本紙最終面で報道しているように、8月末現在、大阪市域の運転者数は前月比で160人減ったが、65歳以上はいまだ4割を占めており、「高齢者であっても健康で働く意欲のある人には稼いでほしい」という方向に向かわざるを得ない。この現実をどう是正するのか。険しく厳しいけれども、立ち向かわねば業界の将来はない。

<山田>

※9月9日付・週刊「トラポルト」第267号「正論・対論」より/写真:9月2日の最初の研修で関係者と報道陣に一部公開された、大阪タクシーセンターが行う高齢運転者安全運転研修の2時限目、シミュレーターに座る大タ協の井田・常務理事