五輪開催備え 日常的テロ対策が必要に

2015年7月1日・第336号

東京発・新大阪行き・下り新幹線「のぞみ」号が神奈川県小田原付近で、乗客の焼身自殺により緊急停止。停電の中、煙を吸いこんだ他の乗客がまきぞえで亡くなったのは衝撃的だった。

まさにこの瞬間、数分間隔で走る新幹線の「安全神話」が水泡に帰したと言っても過言ではない。報道によると、新幹線は地下鉄同様、耐火基準が厳しく、火災時の対策は万全だったという。確かに各車両に2本ずつ消火器が備え付けられ、万が一の初期消火をかなり意識していたのは分かる。

電気系統への引火の可能性から、緊急停止したときには、すべての電気機器が自動ストップする仕組みなのだそうだが、今回はそれが裏目に出て、密閉された車内から煙を車外に排出するシステムになっていなかったことが、煙を吸い込み死亡した一因とされる。JRには、まさに「想定外」だった。

しかし外国人観光客が1500万人を超えようとする今、「もしもこの事件がテロリストによるものだったら」という仮定と対策なしに、今後も新幹線を走り続けさせていいものだろうか。

答えは「ノ―」であろう。少なくとも今回の事件で、「新幹線は換気に弱い」ことを内外に露呈してしまった。また、いつマネする愚か者が出てくるとも限らない。

同様にタクシーの外国人対応も、いつまでも「おもてなし」「話せよ」だけではいかがなものか。そろそろ危険対策に乗り出すべきだ。「訪日外国人が増えた」と喜ぶだけの時間は、今回の事件を契機に終わったと言えるだろう。

<山田>

※7月1日付・旬刊「トラポルト」第336号、旬刊「トラポルト九州」第41号「正論・対論」より/写真:6月30日午前11時30分ごろ、乗客の焼身自殺で緊急停止。レスキュー隊など救急隊員が作業する事件現場。