稼働しないタクシー(埋蔵財産)をどうするかの論議

2015年5月4日・第331号

「外国人観光客が2千万人を超えようとしている今、京都のような国際観光都市でタクシーが24時間対応するには絶対的に運転者が不足している」と問題提起したのはМKの青木信明社長だった。

数値上は520両の供給過剰状態にありながら、国交省が示した特定地域指定基準から外れた京都で4月24日、第2回準特定地域協議会が開かれた。協議会会長である西村弘・関西大学社会安全学部教授が会議をまわし始めて最初の発言だ。

青木氏が社長を務めるМKグループ本部のある京都では、創業者で信明氏の父でもある定雄氏が経営や運転者教育の陣頭指揮を取っていた当時から昼夜2交代勤務を伝統としてきた。「運転者のなり手はいくらでもいる」と言われた時代だ。

しかしその後、京都でも徐々に運転者が減少。他社が稼働率を上げるため2車3人制や1車持ちにシフトしていくのを尻目に1車2人制を堅持してきたが、最近はそのМKでさえも運転者不足に相当悩んでいると仄聞する。

その青木氏は、1車持ちが多くなると「運転者は稼げる時間帯に稼働するのでタクシー難民のようなものが必ず出てくる」と繁華街などでタクシーが滞留する問題の根本原因を言い当て、「当社もそうだが、車両を10%、20%減らしても実はうまく運転者をシフトすれば事足りる」と吐露。だが、そうせざるをえない現状に対し、「京都では50歳以下の運転者が12%しかいないのは(産業)存亡の危機」との認識を示し、運転者を増やすことに「業界始め関係者全体で考える必要がある」と語気を強めた。

大阪の地域協議会で「継続審議」を主張した大阪MKの青木義明社長は信明氏の弟さん。義明氏はワンコインタクシー協会と共に特定指定に反対。最後に継続審議を求め、それが通った格好だが信明氏の発言を聞く限り、活性化論議では同協会代表理事の町野勝康氏の主張と一線を画することになるかもしれない。

これから大都市圏で始まる地域協議会では特定・準特定にかかわらず、何でも稼働ベースで計ろうとする国交省の数字には現れない、「稼働しないタクシー=埋蔵財産」をどうするかという永遠の命題でもある、核心に迫る論議になると言えそうだ。

<山田>

※5月4日付・旬刊「トラポルト」第331号、旬刊「トラポルト九州」第36号「正論・対論」より/写真:2015年4月24日、京都市伏見区の「京都自動車会館」で開かれた第2回京都市域交通圏タクシー準特定地域協議会の模様(手前に向いて着座している人の右から3人目が青木氏)